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「虎に翼」の「はて?」

「虎に翼」をNHKプラスでまとめ見をした。

脚本が面白いんだけど、脚本家の苦労が見えすぎる感じもした。

まず、とにかく「予定調和」をしたくない。これは、常々私も思うところで非常に共感するのだが、それを徹底しようとすると、物語としては空中分解する危険と隣り合わせだ。

主人公のトラが始終発する「はて?」という言葉は、間違いなく脚本家の脳内のつぶやきだ。「はて? これからどう続けよう?」予定調和にはしない。ご都合主義のハッピーエンドの展開も嫌だ。世の中そんなに甘くないし、うまくも行かないし、解決もしない。でも、それではただのカオスで物語が成立しない。それで「はて?」だ。

脚本を書く身としては、わかりすぎるぐらいよくわかる。わかって辛くなったりする。

ドラマの中で、トラが迷って、「こうしたらどうなる?」という仮定の寸劇が登場したりする。これはちょっと卑怯だ。これって、脚本家の実際の迷いをドラマの中に再現してしまっているのだ。メタ表現と言えば聞こえもいいが、要するに楽屋落ちである。「こんな展開も考えたし、落ち着きもいいんだろうけど、あえてそういうのはやりたくなかったし、避けたのですよ」という言い訳だ。

迷って、困ったあげくに「私、こんな風に困ってるんです」と、苦し紛れにそのまま書いちゃった。

うーん、アイデアと言えばアイデアだけど、どうなんだろ? やっぱり、創作者は完成形だけを提示すべきではないか? 途中経過や、未完成のアイデアやスケッチ、苦悩を見せるのはやっぱり反則なのじゃないか?

そんな風にも思った次第。

【追記】

この作品への脚本家の意気込みはよくわかって、現代ではあまり知られていない昭和初期の女性の置かれた状況、問題、不条理を全て登場人物を使って表現しようとしている。貧富の格差、貧しい東北農家の身売りされる少女から華族の令嬢まで登場する。それに嫁、姑の話などなど。「主人公は庶民ではなくて富裕層の人間だ」という批判に対しても「それはちゃんとわかってますから」という鉄壁の守りをする。そういう行き届いた(行き届き過ぎた)配慮のせいで、問題満載で、盛り込みすぎの感は否めない。

これからの展開を考えると、もっともっと盛り込まれて行くような予感がする。

例えば、女性の地位を確保するために国防婦人会に身を投じる同級生が出て来そうだ(同級生より、友人か母親かな?)。留学生が登場しているからには、植民地政策の問題が出て来そうだし、ひょっとしたら、密かに独立運動の闘士になったりするのかもしれない。貧農出身のよねが二・二六の昭和維新に共鳴するなんて展開は結構あるんじゃないか?

あと、平塚らいちょうや与謝野晶子なんかも出て来るのだろうか?

となると、何か歴史解説ドラマみたいになりそうで、その辺の行方がちょっと気がかりだ。

というか、初の女性裁判官の誕生を描くだけでは、大して面白いドラマになりそうもなかったわけだから、その辺を描くのが実はこのドラマ企画の本当の狙いだったのかもしれないが。

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