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庭や たにぞえ 社長 谷沿裕紀さん

今回は、建築デザインの中でも外構の部分で庭づくりをされている谷沿さんにお話をお聞きしました!ものづくりの精神に懸ける職人としての想い。それでいて、次世代の働き方を見越しての組織づくりや庭の建築における再定義など新たなことにも挑戦されている方でした!親しみやすい人柄でとてもインタビュー外では、人生相談もしてくださいました、ではどうぞ!

無駄なことばっかり喋っちゃいそう笑。

Q,全然、対話の中で聞き出していければいいので大丈夫ですよ笑!ではまず、具体的にどんな事業をされてるんですか?

主に民間の個人のお客さまの庭を1から考えて作ることをやってる。使う人がいて暮らしていける空間を作ることが仕事ですね。

賞を取られたお庭

Q,ブログで拝見させて頂いたのですが雑貨をやってたりもしますよね?

庭やたにぞえは、僕と母と二人で7年前に始めた。父も定年退職後入社し、同級生や叔父も入ってきて少しずつ大きくなっている。基本的には家族規模でできることをやろうというシンプルな気持ちからスタートしている。反骨精神が大きかったので、大きな会社では取り組めないことを時間をかけて
丁寧にやろうと思っていた。

その一環として、造園の部分の庭やたにぞえとtzmadeという雑貨屋を妻と母がやっている。僕たち造園屋の目線から雑貨という手で作れるものづくりをテーマにして雑貨部門をやっている。

フラワーリース体験

Q,自分達がやりたいと思うことをやっている?

やりたいと思う衝動というか、感動を形に変えていっている。僕たちがこれ面白いって思ったものを共有する感じ。仕事をしている以上、やっぱり僕たちはお金を稼がなきゃいけないんですよ。お金を稼ぐっていうのは作ったものに対して、お客様からそれに対する対価をもらうっていう作業。その為には、責任が伴うしやっぱり自分の感動したものを、提案して使ってもらいたいというのがある。それが僕たちのものづくりの原点ですね。

Q,ここに投資していったら金儲けできるんじゃないかとかそういうことじゃなくて本当に自分たちが感動したところを、そういうところが先に出ているっていう。

そうですね、ご指摘いただいたようにですね、全然儲かりません笑。お金のにおいが本当に感じられないんですよ。だけど、お金という形に出ないだけで心理的に満たされるという意味では同じ価値があるのかも知れませんね。

Q,他の方とお話する機会がありましたけど好きなことをやってもお金にならない。得意なことをやるとお金になるって言われていました。

そうね、でもなんかあれだよ。好きなことをやってもたしかにお金にはならないんだけど、好きなものをお客さんに共有できる努力はしなきゃいけないよね。もちろんクライアントさんの作りたいものを作ってあげるのだけども、その中でも僕たちはこういうものに感動しましたよって伝える努力は
していかないとな、とは常に思っています。

お客さんは、ほとんどのかたが建築や造園とかものづくりのプロではないから僕たちに依頼をしてくるのだけども、お客さんから言われたことすべて
その通りに作ったら絶対うまく行かないと思いますね。

お客さんが僕達を選んでくれたっていうことは、僕達が感動したりだとか
僕たちはこういうものづくりしているよって部分で選んでくれている。
やっぱり僕たちの感動だとか、ものづくりに対する想いみたいなものを共有する努力はしていかないといけないよね。これは責任の一つだと思っているかな。


Q,建築設計の話と、被りますね。お客さんの要望だけで全部作ってるわけじゃなくて自分の考えているところも出してっていうのが。そこで付加価値をつけているんですね。どうして最初に造園業やろうと思ったんですか?

今回こういうお話いただいて、用意しようかなと思ってね。さっき風呂にはいって考えていたんですけどね笑。あの本当にこういうこと言っちゃなんですけどね、僕はね、実は造園をやりたくて始めたわけじゃないんですね。
っていうのは家族で仕事をしたかった。

要するに「自分たちの手で、ご飯を食べていく」っていうことをしたかった。自分で作るものとか自分から出たもので食べていきたいと思った。
人に世話になってとか雇われてとかじゃなくて俺たちは俺たちで作っていく。道を作りたいっていうのが最初にあったんだよね。

それがたまたま父が休みの日にまあ知人のうちの庭をちょっときれいにしたりだとか。あと僕がまあちょっと旅みたいなことをしていた時期があって
そこで出逢った親方だとか、たまたまね。

で、まあ、そういう仕事をやっていくうち、あ、これはなんか素晴らしい
仕事だなと思って僕の中ですごく落ちたんですね。なんか自分の持っている技術とか能力とか自分のアイディアとかで喜んでもらえて、対価をもらえる。僕の家族でこれが出来たら面白いかもなってイメージができたんですよね。だから僕は、造園のことを勉強したいとかよりも、どちらかというと感動するとかそっちの方が先に来てました。

あとシンプルに僕の親方がね、かっこよかったんですよ。仕事がね。
作業着とかじゃなくて、古着とかきてね、レゲエをかけながらね。
もう亡くなっちゃったけど、お父さんとね、二人で仕事してる。
そういう生き方かっこいいなって、なんか僕のイメージが急にこうつながって、本当にそういう誰でもできる発想っていう。

庭じゃなくてもよかったんでしょうね。大工だったりとか、もし伝統工芸
みたいなものが近くにあったらそれでも良かったのかもしれないし、
何かとにかく自分たちで作ったものを共有してもらってそれが評価を受けてロイヤリティをもらえるっていうことを生み出して作ってみたかった。

Q、その、ものづくりの精神みたいなところに憧れた。

そう、わかりやすいのが除雪の仕事は絶対やらないということ。例えば仮に帯広市が100億円の予算を投じているとして、みんなに分配するでしょう。もし僕らが、新規参入したら、その中100億円の中で他の業者から横取りすることになる。僕は、100億円の予算を110億円にして10億円取りたいんだよね。クリエイティブなことをやりたい。

そういう仕事が必要な理由も分かります。それを否定するわけじゃない。
それがあるから僕たちは快適に生活を送ることができる。だけど僕がやるべきことではないかなと思う。

Q,大体一つの工事にどれくらいの期間が掛かられるんですか?

僕たちは、民間のお客様メインですので、100万円から500万円ぐらいまでの工事が多いんですね。そのぐらいの規模になると、長くても三週間、一ヶ月短くて一週間だとかですね。また話脱線しちゃうんですけど、実は北海道で、僕たちしかできないような石積みの技術を持っていて、それになるとね。ちょっと期間が長くなったりします。

Q,なんですかそれ?

石をうまく積んでいくっていうイギリスの技術なんですけど。Dry Stone Wallingというものですね。イギリスとかヨーロッパに行くと石積みの文化が非常に定着していて、建材としてしっかり確立してる。イギリスでは特に、そういう伝統技術に国で予算をつけて資格制度を設けて協会も作っていて、そこに僕は三回ほど行ってその技術資格を取得してきてる。

石だけで石を積むっていう本当に伝統的なやり方をやってるんですよ。
出来るだけ電気工具も使わないで、ハンマーと石のみだけで作ってるっていうのをやっています。

Q,それで崩れないんですか?!

崩れないです。石の素材感を見て 一つずつ掘り方を変えて、地震にも対応しなきゃいけないし、重力っていうものをしっかり捉えて作っていくもの。

実際に石積みで作られたゲート。崩れてません。

なんかいわゆる温故知新みたいな技術が本当に大好きで、そういうの追求したら僕はたまたま石積みになった。 それをこう自分の中でアップデートさせて僕の出来るこだわりとしてお客様に提案をして、僕たちのブランディングとして今ね落とし込んでいる最中ですね。

Q, 温故知新的なものが好きなのは何でですか?

僕、修業してたのが東北なんですね。その東北でいろいろまあ親方について仕事してると、人が築100年200年のうちにまだ住んでる。長男坊が大体そこの家に住むみたいな。北海道の僕たちはね超核家族なんですよ。
だから、親が建てた家に住むなんて言う発想は毛頭ないんですね。
僕も将来家を建てるっていうふうに皆育ってきました。

なので、そういう文化に出会った時にちょっと衝撃を受けたんですよね。
その築300年とかの家を本当に大事に守ってきていて、なぜそんなことが可能なのかって考えると、全部、建材が近くで揃うんですよね。

例えば、壁だったらその村の山の木と田んぼの土と草を混ぜたらその壁が塗れるとか。そして、そういうことをする職人さんが脈々と地域で受け継がれている。それももうどんどん減ってはきているんだけど、なんかそういうものに感銘を受けた。もともと日本の建築物って直せるようにできてるんですよね。そして、その直す過程で地域コミュニティでの繋がり生まれてって
いう。それがいいなぁと思う。 なので、庭でそういう小さな循環ができたらいいと思っている。

循環っていうのは、例えば200万で完成しました、引き渡します!
じゃなくて。庭は多分僕が作ってから30年後一番いい状態を変える。
それを想像して作るのが、使命だと思う。

そう考えるとやっぱ近くで生えているその土地の木を植えた方が良いし、
環境もその土地のものに揃えたほうがいい。
それも昔の人たちはそれを元々やってた。

Q, それって、昔の考え方のように見えて、今でいうSDGsにすごく則ってますよね!

それが、本当におっしゃる通りで最近そういう考え方が受け入れられる世の中になってきたなと思っています。先ほどのイギリスの石積みも、これいい技術かもねって思っていただける世の中になってきている。

これもオーガニック野菜の立ち位置みたいに、農薬が悪いわけではないんだけど安定供給できる野菜があってこその選択肢の一つのように、従来の建築構造物がある中で、そっちもあるよねっていう選択肢の一つまでにはなるかなと思っている。

僕たちはこういうものを選択肢の一つにして、そして
古い技術とか知恵を新しく現代に合わせていくっていうのをやると
非常に心地いいとか、気持ち良いとか、豊かなとか、そういうことが
くっついてくるものづくりができてくると思う。

Q,庭やたにぞえとしてこれから園芸をやっていく中での将来的なビジョンってありますか?

二つあります。一つは職人谷沿ひろきとして、今の規模で温故知新的に古いものを新しく作り、新しい価値観の創出みたいなものができればいいなと思っている。

もう一つは今の従業員だとか僕と一緒にものづくりがしたいって人が少しずつ増えてきたんですね。でそういうふうになったときに僕は親方になって、今までの自分は自分のモノづくりを追求する立場だった。そこから、みんなでつくるっていう立場に少しなってきていて、今その最中なんだけど。

そうなった時に次のステップとして何が必要かなと思って今から取り組んでいかなきゃと思ったんだけど。みんな職人さんとしてフリーランスの塊、
集合体みたいなものを作りたいんだよね。会社組織っていう今の既存の
トップダウンのような仕組みではなく。やっぱりクリエイティビティを
しっかりと持って仕事をしてもらいたいから。

スペシャリストの集団みたいなものを作っていきたい。
個人事業主とか一人親方の集団みたいなもの。

Q, 本当にクリエイティビティを大事にするって考えの元ですね。

そう、それぞれのね。僕みたいな職人についてきてもらうんじゃなくて、
それぞれが僕と同じ職人という立場。というか僕と同じって言い方もあれだけど笑。僕よりも上に行く人いるじゃん。僕よりもできる人だっているし。トップダウンじゃない関係性だよね。

あと今だと、簡単に日本全国どこにいても繋がることができる時代。
何か特化したものがあればそれを必要としているユーザーにつなげてあげることがしやすい時代。そういう部分で集団として作れたらってね。
あくまで、個々の職人さん、スペシャリスト。そういう人たちがいれば、
自然にいいモノづくりができてくるんじゃないかな。

あとは、もう一つの建築と造園の関係をひっくり返したい。
施設でも住宅でもまず、建てるってなったらどこに相談しますか?
設計会社とか、ハウスメーカー?あとは、不動産とかね。
造園屋って発想はないでしょ?

住んだ時に、車を置く位置だったり木を植える位置や見栄えだったりは、
建築屋さんよりはハウスメーカーや造園屋の方が特化している。
こういう形の家だったら、ここに木あったら絶対かっこいいよね。
車はここに止めた方がいいよね、水の勾配がこうだから。
ていうのはそれをやってきているし、それに特化している。

造園屋っていうのが、人が家を建てる時に一番最後にくる業者。
限られた中で考えないといけない。もうちょっと先に僕たちに相談しといてくれれば、あと1メートル土地開けてくれればこうできたよねってことが非常にたくさんある。

家を建てたり、建築設計物を建てるときに造園から入っていけるような、
あなたの建てたい暮らしたい構造は、ハウスメーカーはここがいいですよ、設計士さんは、この人がいいですよ。庭はこんな感じがいいよねとか、
全部組み立てて構図ができたらいいよねっていう。

ただ十勝だと大きいもの、例えば1000年の森だとかでは、意外とランドスケープから入るってたり、良い地域性がある。けど、普通のところではやっぱり造園とかって一番最後。造園がなくても家には住めるわけだからね。

全体的なプランニングをしていかないと、最後にお金無くなっちゃって造園は、5年後とかになる。そのまま、どんどん先延ばしになったり。造園が
あるのとないのとでは見た目が全然違うけどね。造園に対しての発想力は
やっぱり建築の設計士的には限られている。木を一本でもいいから興味ない人でも植えることを勧めている、木の変化を楽しめる。

季節感を木を通して感じる。結構そういうのって必要ないように見えて
必要、その重要性を自分達が体験して、お伝えしていかなくてはいけない。それが、使命であり責任だと思っている。

インタビュー風景


Q,十勝で働くことのよさって何ですか?

冬は休まないといけない。ただ、これはリセットできる期間があるという
意味では強みである。考えられる時間に当てることができる。その期間で
チャレンジがしやすい。

あと、訪ねてきた人には優しい風土があったりする。
寒さの中では、みんな協力せざるを得ないからかな。
特に、十勝は冬でも晴れの日が多いから心に余裕があるんじゃないかな。

あとは、ここの人は十勝のことが好きだから十勝で何かをやるってなったら応援してくれるとか。歴史がない分新しいことはしやすいのかも。
自分は、もう十勝のことが好きすぎて観光では盛り上がらなくていいと
思ってるくらいだね笑。やっぱり外に出るとよさ再認識するよね。

Q,長い時間インタビューありがとうございました!

庭や たにぞえさんと集合写真

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