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荀子 巻第七王覇篇第十一 15 その1

国をおさむる者にして、百姓の力を得る者は富み、百姓の死を得る者はつよく、百姓の誉を得る者は栄ゆ。三徳(得)の者そなわらばすなわち天下もこれに帰し、三徳の者亡くば而ち天下もこれを去る。天下のこれに帰するを王と謂い、天下のこれを去るを亡と謂う。

(「荀子」岩波文庫 金谷治訳注)

ほまれ→誇りとするに足る事柄。また、よいという評判を得ること。名誉。
天下→①天が覆っている全世界。
拙訳です。
『国を治める者で、民衆の力を得られる者は富み、死を厭わない民衆を得る者は強く、民衆から良い評判を得る者は栄える。この三つを全て得られれば全世界が帰服してくる、三つの徳を得られなければ全世界が離反する。全世界が帰服する国を王国と言い、全世界が離反する国を亡国という。』

湯・武は其の道に循がい其の義を行いて天下の同じき利を興し天下の同じき害を除きて天下もこれに帰せしなり。故に徳音を厚くして以てこれを先(導)びき礼義を明かにして以てこれを道(導)き忠信を致して以てこれを愛し、賢をとうと(尚)び能を使いて以てこれを次[序]し、爵服賞慶以てこれを申重ひきかさね、其の事を時にし其のつとめを軽くして以てこれを調斉し、潢(洸)然として兼覆し養長すること赤子を保つが如くし、民を生(養)いて則ち寛を致し民を使いては即ち理をきわめ、政令制度の下の人百姓に接する所以のものを辨じて非理なる者豪(毫)末の如きものも有らば、孤独鰥寡と雖も必ずれを加えず。

(同)

徳音→①よいことば。立派なことば。善言。③天子の徳。
致す→①届くようにする。至らせる。
爵服→爵位とそれに相当する衣服。
慶賞→めでほめる。功績をたたえてて恩賞を賜ること。また、その恩賞。
申重→重ねる。再三。
潢然こうぜん→水の押しよせるさま。水の大いに至り光あるさま。
養長→養い育てる。
寛→①ひろい。心がひろい。ゆとりがある。
辨ずる→①物事をわきまえる。区別する。②物事を処理する。取り計らう。すませる。
毫末→ごくわずかなこと。下に打消しの語を伴って用いられる。
孤独→②みなしごと、年老いて子のない独り者
鰥寡かんか→妻を失った男と、夫を失った女。
加える→同じことをする人の集まりに含める。仲間に入れる。
拙訳です。
『殷王朝の湯王・周王朝の武王は、この方法に従って義を実行し、世界共通の利益を興し、世界共通の害を取り払い、全世界が帰服したのである。だから徳を手厚くして人々を導き、礼と義を明らかに示して人々を導き、忠と信を届けて人々を愛し、賢人を尊び能力ある人を使い序列をつけ、爵位とそれに相当する衣服の恩賞を再三与え、事業は時宜をもって任務を軽くし整えて、水の押しよせるようにして民衆を覆い、赤ん坊を保育するように養い育て、ゆとりを持って民を育成し理に適う方法で民を使役し、政令制度の下民に対応する方法を整備し、道理にあわない事がほんのわずかでもあれば、みなし子や身寄りのない老人、妻を失った男、夫を失った女であってもその非理の仲間にさせない。』

民衆の力、民衆の死をいとわぬ協力、民衆の評価、この3つを得られれば、三徳が揃えば、王国になれると言っています。
続きは次回とします。

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