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【育児徒然】タベナイヨ!


 シングルマザー。
2歳半の息子がいる。


息子は、ごはんをじっと座って食べることは難しい。
思った形、歯ざわり、色、味わいでなければ、気が変わってしまう。
ボク、タベナイヨ!
ほしく、ないよー!

 そういう感覚に出会って、私は驚いた。
なるほどー、気が変わるのか。思った通りがいい、この感覚だとそうなるのか。

 私も40年生きてきて、食べ方、食べる価値、理由、染み付いております。
出されたものを
満遍なく
散らかさず
座って
全部食べてから
席を立つ
かなあ。それは、私自身の経験だ。

 さて息子は、
お皿はひっくり返してみたくなる
水の入ったコップは主菜の上にジャーしたくなる
ひとくちごとに席を離れてフォークと芋を手にフラフラ
歯に触った、舌触りが嫌、味が嫌、色が嫌、なものは吐き出す
食材でテーブルに絵を描く、塗りつける
フォークは投げる
そんな感じ。


 食べなさいよーというのは、そもそもなんなんだろうとは思うが、
まあ、ただただ、困るからもうちょっとご協力願いたいというところはある。
 

 そうは言っても2歳半で、食べることが起こるのは、何となく理解している。


 今朝。


メニューは、お魚、お芋とひじきの煮付け、おみそ汁、きゅうりの和え物、ごはん。

一瞥した息子は、

コンコンごはん、ちてよう。

たまごかけごはんを所望。

おっけーじゃあコンコンはお願いしますぜ、と言って、たまごを取り出し渡す。

背伸びをして、机でコンコン!
ひびが入ったたまごを私に渡し、わくわくして、ほかほかのごはんの上に「パカッ」してくれるのを待っている。

ご期待どおりに。私も若干胸を張って。


パカッ。


大好きな、たまごがトロンとごはんにのって、いそいそと椅子に座り、こつこつ食べ始める。


(なんとなく、お芋食べてほしいなあ。。)


 息子が、心からたまごかけごはんを楽しんでいるのを、かわいいなあと思いながら待つ。
せっかく楽しいところを、あれ食べろ、これ食べろ、って言われても嫌だろうしね。

 きれいに食べ終わったところで、やっぱりお芋を食べてほしかったから、聞いてみる。

「きれいに食べたんだねー。お芋もすこしいただく?」

「いやない」

目をつぶって、見えないふりをする。手で空を押して、自分からお芋のエナジー(と私)を遠ざけようとする。

「えーそうかあ。母ちゃんはお芋を食べてほしいんだ!あまーいと思うよ。」

「いやないよぼくタベナイヨダッテー」(イヤだの時は文末にダッテがつきがち)

食べないかなー、としばし問答していたら、
イヤダ!が力となり、コップを掴んでポンと投げ飛ばした息子氏。


あっ!


コラ!コップは、投げるものじゃないよ。お水を飲むものだよ。


息子氏、いろいろなものを投げては「痛い!」「やめてよう」とあちこちで言われてきているので、どうも投げるのはまずい、という感覚がある様子。

息子氏から一気に発される混乱。ネガティブな感覚。イヤだのきもち。

どうしていいかわからないって感覚。

そういう感覚って痛いんだなあ、と息子から発せられるものをのほほんと感じていると、静かに近寄ってきて、ぎゅっと抱きついてきたので、背中をとんとんしながら、おっけーぜんぜん大丈夫だよを伝える。

すーっと息子の感情が凪になって、ごはんを食べるってことの大変さ、という感覚が伝わってくる。

そうだよな、としみじみ思う。


おっぱいなら、わかるけど
食べるという行為は、君にとっては、そうだよな。未知。


 しばし時間が経って、フォークにお芋の小さいのが刺さっていたので

「お芋がいるよ、どうする?」

と尋ねたら、

「食べゆ」

と言って、ていねいにぱくりと食べた。


もうひとつ食べる? うん。   ぱくり。

そして、ちいさい両手をそっと合わせて、

「ごちゃちゃましたー」

と、私の膝からおりて行った。


君のことを感じさせてくれて、

交わしてくれて、

ありがとう。


と思って、私のごはんを食べ始めた。

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