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「静謐で美しい景色が見えてくる~羊と鋼の森~」

『羊と鋼の森』 宮下奈都 著 (文藝春秋)

私はピアノが出てくる物語が好きだ。
もちろん鑑賞するのも大好きである。
かと言って、詳しいわけじゃないし批評もできない。
ただただ、ピアノの音やそれが奏でる曲が好きなだけ。
 
ピアノが表現するものを解読したりすることもできるわけではないが、そのピアノがでてくる空間を描いた物語は絶対美しいものだと信じているところがある。
 

第13回(2016年)本屋大賞2016の1位となったこの作品。
誰もが“いい”と評価するこの物語が気になっていたが、ラジオで書評が流れるのを聞いていた夫が我慢できなくなって本屋へ直行、購入したというもの。
2018年のことである。
 
夫に遅れて読み出したが、とても美しい物語だなと感じた。
 
ピアノの音の表現が、本当に凛とした森を想像させるもので、かなり巧みだなと思う。
 
これまでピアニストを主人公にした漫画や小説は山程にあった。
「四月は君の嘘」(新川直司 作 講談社)でも評価されたように漫画は絵でピアノの音を表現しなければいけないのだが、漫画の中で音が聴こえてくるような表現であると言われた。
 
この小説でもそれは同じで、小説はその文章でピアノの音を表現しなければならない。
それが本当に想像できるからすごいのだ。
その音が実際には聴こえなくとも、“見えてくるのだ”。
 
それが読んだ人全てに聴こえ、見えたからこそ、様々な賞を受賞するに至ったのだと思う。
 
映画化もされ、観させてもらったが、小説の世界感・雰囲気は美しく再現されていた。
 
読んだ人それぞれで感じたピアノの音を、想像の中から引き出して具現化してくれた。
きれいな音と幻想的な風景が印象的だった。
 
 

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