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「本当にやりたいことが見つかった~『私のスポットライト』~」【YA62】

『私のスポットライト』 林 真理子 著 (ポプラ社)
                          2016.10.10読了
 

彩希はいたって普通の家庭で育つ、容姿も成績も学校での立ち位置も全て地味で中くらいの中学2年生です。
学校では目立つことは、決してしてはならないと思っています。
 
学校、特にクラスでは顔がかわいくて家庭もちょっとお金持ちなどの“一軍”と呼ばれるグループがいて、その子たちを出し抜いて何か目立つことをすれば、いじめの標的にされるからです。
 
だから彩希は中くらいのグループの中にいて、とりあえず目立たず、かといって暗くならずに普通に過ごしていたのでした。
 
しかしある日、彩希は自分の意図とは全く関係なく“一軍”の子たちの内部争いに巻き込まれ、学園祭のクラスの出し物、演劇の主役に抜擢されてしまいます。
それも昔のアメリカ映画を日本の中学生バージョンにアレンジしたもので、イジメを受けた女の子が最後に超能力を使ってイジメたクラスメイトをやっつけてしまうという内容です。(確かにどこかで聞いたことがありますね)
 
彩希は全くやりたいと思わなかったのですが、父親が実は学生時代に演劇をやっていたことを知ります。
そしてそれはもう楽しくてやった者にしかわからない、というようなことを言われたのを機に、やるなら一生懸命に打ち込んで責任をもってやるしかないと思うようなりました。
 
父親の特訓もあり、自信を持って臨んだ本番はうまくいき大成功で終ります。
思わぬスポットライトを浴び、そのやりがいと達成感を身をもって味わった彩希はその頂点だった学園祭が終わった後、喪失感のようなものに襲われます。
 
そんな中、「まだ何かできる。自分は本当は演劇をもっと勉強したいのだ」と強く思うようになります。
 
そして彩希はついには子ども劇団に入ることになります。
それは結局、彩希が目立つようになってしまうことを意味するのですが…。
 


きらびやかな世界にいる芸能人に対するあこがれとか特別感は誰にだってあります。
そしてこの世の中、容姿の優れている人間がチヤホヤされるのも現実です。
 
それにしても、彩希たちが最初の劇を成功させるための資金繰りを、とある企業にスポンサーになってもらえないか相談しに行くというくだりがあるのですが、そのスポンサー会社の対応はあまりに展開が安易すぎて、現実味がないように感じます。
それに他人が目立つことにいら立つ“一軍”たちの彩希への態度も、逆にちょっと弱いのではと思ってしまいました。やや肩透かしをくらった感が無きにしも非ず…。
なにせ芸能人になったら、目立って仕方がないのですから。


“普通の子”である彩希が目立つことに反発心を持つ“一軍”たちの反応は、LINEで悪口を言うのに終始するのですが、リアルだったらそれだけではすまないのでは?と、ついつい思ってしまう私は、このテの物語を読み過ぎたのかもしれませんね。
はじめはいわゆるドロドロになりがちな学園モノと思ったのですが、そこまでドロドロにはなりませんでした。(笑)
思春期の女の子が感じるもろもろのことが理解はできるのですが、正直言って話の展開が少しですが都合良く出来すぎているようにも感じてしまいました。(ごめんなさい。でも正直に書いておきたいと思います)
 
 
目標を持っている者や学校以外の社会にすでに目を向けている者、学校という狭い中だけでなく広い社会を見たことがある者が、どんなことを言われようが誰でも強くいられるというわけではないと思うのですが…。
 
おまけにこのYA本、なぜか同じ内容で一般書としても装丁を変えて出版されたようですね。
その意図はあまり私にはくみ取れませんが、大きなお世話なのでしょうかね…。

 


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