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「普通の女の子が素敵な女性へと成長していく煌めきがあふれています~『スコーレNO.4』~」【YA⑩】

『スコーレNO.4』 宮下 奈都 著 (光文社文庫)
                          2015.10.22読了
小さな街のあまり派手ではない骨董屋の長女で12歳の麻子は、美貌やこだわるものには頑として譲らないしっかりした主張をもつひとつ下の妹・七葉に対してコンプレックスを持っていました。
しかしそれ以外は、考えることもよくわかりあえる仲の良い姉妹でした。
そんな麻子の中学・高校・大学・就職をそれぞれの学校(スコーレ)になぞらえながら、大人の女性へと成長していく姿を、揺れ動く心の中をとおして描いていきます。
 
中学での麻子の初恋はとても切ない幕切れとなってしまいましたが、簡単に実らないところに現実味があって逆に共感できました。
それに、いろいろ自分だけで考えすぎて余計な取り越し苦労をしたりするところも、幼かったあの日の自分と重ねあわせることができて、思わず中学生時代にトリップしそうになったりもします。
 
高校生になると、麻子はちょっと年のはなれた素敵な従兄にもほのかな恋心を抱きます。
しかしながらやはりどこか遠慮がちな自分と、手に入れるものは行動あるのみでいく妹との違いにまざまざと打ちのめされていくのです。
浮かれそうな自分を、なにかと冷めた目で俯瞰で見る傾向にある麻子。
しかし、中学・高校のクールで切ないことの多い時期に潜む、後から活きてくる伏線が多数はられていて、後に大きく羽ばたく麻子の成長する姿に納得させられます。
 
就職先では、社会に出始めた時の不安や葛藤や悩みが、とても身近に丁寧に描かれていて、若い人たちへの応援にもなりそうな内容でもあります。
 
そして遅まきながら花開く麻子の姿を、読者は見届けることができて、満足感に満たされるのです。
 
YAの読み物として、よく定番ものとして名前があがる本書。
読んでみて、確かにデリケートで悩み多き中学生や高校生の子どもたちが読んだら、共感できるお話だと思います。ぜひとも多くの人に読んで欲しいなと思いました。


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