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【小説】#1:殊能将之『ハサミ男』

タイトル:ハサミ男
著者:殊能将之
読了日:2022/11/23


あらすじ

美少女だけを殺害する連続殺人鬼、その遺体には必ずハサミが残されていることから犯人は「ハサミ男」と呼ばれる。
次なるターゲットを殺害すべく入念な準備をしていると、なんとそのターゲットの遺体を発見してしまう。
そして、現場にはハサミが残されていた。
自分の犯行を真似て次なるターゲットを殺害した真犯人を突き止めるべく独自に調査を進める。
そして待っていたのは衝撃の結末。
最も評価されているミステリ作品の一つです。


感想

ミステリを読もうと思い当たって「さて、何を読もう?」と考え色々と調べて真っ先におすすめに出てきた作品。
率直な感想は「なるほど、わからん」でした。
どんでん返しというのでしょうか、作中で急展開が訪れるのですが、そこで一旦頭がこんがらがります。
これまで東野圭吾作品を数冊しか読んだことのないミステリ初心者の僕にはこの叙述トリックを見抜けるほどの読解力・推理力が足りませんでしたね。笑
当然ではありますがこの「は?どゆこと?」に対する説明はありません。
しかし、淡々と物語が進むにつれ、少しずつ腑に落ちるというか、納得することができました。
そして、その納得感が得られた時に「読み直したいな」と感じました。つまり何が言いたいかというと、その理解が得られる前と後でこの作品の見え方・読め方が一変するということです。
とはいえ、思い返してみると所々にヒントが散りばめられているし、あからさまな部分もあります。
ですが、読みながらこれらの伏線気づくことはなかなか難しいのではないでしょうか。
これから読もうとお考えの方はぜひ要所要所に気を配りながら読み進めることをお勧めします。読む前から殊能さんによるトリックは始まっていますよ!
どうでもいいことではありますが、この作品は500ページ弱ととても長いのですが意外とすんなり読めました。
やはりミステリということもあり、続きや謎が気になってしまいずっと読んでしまうんですよね。
それくらい没頭できる作品っていうことです!笑


余談

ネタバレがあるので嫌な方はここからは見ないでください!







感想部分でヒントが散りばめられていると言いましたが、どんなものがあったかパラパラっとだけ見返してみました。
まず一番気になるのは終始一人称が「わたし」であることですかね。
男性でも「わたし」を使う方はいらっしゃいますがおそらくマイノリティでしょう。
あと特徴的なのはタイトルでしょうか。「ハサミ男」と聞いて女性を思い浮かべる人はいないでしょうからね。
あとは被害者が性的暴行を受けていないことも、犯人が実は女性であることのヒントになるでしょうか。
他の些細なこととしては作中で何度か触れられる体型の話や服装のことですかね。
ちなみに、作中に出てくる犯罪心理分析官、通称マルサイですが、日本では2000年に北海道警察署で初めて専門班が設置されたそうですね。
元々はイギリスのNCOF(国立警察活動支援部)やアメリカのFBI(連邦捜査局)、ドイツの国際警察で設けられていたみたいです。
プロファイルを少し調べてみると、心理学や統計学を利用するみたいですね。
自分は心理学は学部一年の頃に人間行動基礎論という講義でほんの少し学んだだけなので、無知に等しいです...。
その講義で印象に残っていることとすれば、マズローの5段階欲求は現代においてはあまり有用ではないということくらいです。
それに、猟奇的な連続殺人を犯すような人間が、「人間」というものすごく大域的なものを対象とした例の欲求の階層構造に当てはまるとはゆめゆめ思わないでしょう。
そういった「ノーマル」から道を踏み外した「アブノーマル」だから殺人鬼になるのでしょうから。
統計学はどちらかというと専門ではあるのですが、統計学といっても、「ポアソン分布」とか「周辺連続確率分布関数」のような数式ゴリゴリのやつばっかで実際に犯罪捜査でどのような統計が使われているかは興味ありますね。
近年においてはビッグデータが重要視され、マシーンラーニングやパターン認識も用いられるようになるのではないでしょうか。犯罪者についてデータが貯まるのはありがた迷惑ですが...

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