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お気に入りのコーヒー豆を見つけるには

わたしは、カフェで十数年働いています。入社した当初は学生で、コーヒーをブラックで飲めませんでした。そんなわたしですが、十数年のうちに社内資格を取り、お客様にコーヒーのご案内ができるようになりました。

わたしはコーヒーという飲み物が好きですが、それ以上にコーヒーが生産地からわたしたちの手元に届くまでのストーリーがとても好きです。

どんな環境で木が育ち、どんな実がなり、どうやって収穫して加工して焙煎して、品質チェックをして、パッケージングして、わたしたちの元に届くのか。生産地の方はどんな暮らしをしているのか、コーヒーが紡ぐストーリーを知ってから、それをお客様にお伝えしてさらにコーヒーを楽しんでいただきたいと思うようになりました。

美味しいコーヒーはたくさんありますし、それぞれ好みもあると思うので、今回は生産地にフォーカスして、みなさんがコーヒーを選ぶ際のヒントになったらいいなと思います。

生産地は大きく分けて3つ

・ラテンアメリカ

・アフリカ

・アジア太平洋

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(何だこのざっくりした世界地図はふざけんな)と、お思いのみなさん、すみません。まぁこんな感じでですね、(どんな感じだ)赤道を挟んで北回帰線と南回帰線の間のことをコーヒーベルトと言います。大体この辺りでコーヒーの栽培がされています。カカオの生産地とかも近いですね。

このコーヒーベルト以外だと栽培できないのかというとそうでもなくて、日本でも石垣島や徳之島では育てている方がいます。コーヒーノキの栽培は、年間を通して平均気温が20度前後で降雨量が多く、水はけの良い土壌が適しています。近年では、気候の変化が大きく、徐々に栽培できる地域が限られてきていると言われています。

では、3つの生産地の特徴を見ていきましょう。

・ラテンアメリカ

主要な生産国はブラジル、コロンビア、グァテマラ、コスタリカなど。

世界のコーヒー生産量1位(2018年の統計)のブラジルを筆頭に、有名どころが多いのがラテンアメリカです。

ブラジルは、ミナスジェライス州のセラード地域というところで主に栽培が行われています。大規模から小規模まで多数の農園があり、品質向上に向けた取り組みを行っている農園もたくさんあります。コーヒーの風味は酸味が抑えめでコクと酸味のバランスの取れた味わいが特徴です。わたしはナッツ入りのチョコレートとか、ちょっと香ばしい風味のもの(おせんべいとか)と合わせるのが好きです。

グァテマラは、国土の約70%が火山に囲まれた山岳地帯で、火山灰の土壌は栄養価が高くコーヒーの栽培に適しています。また、昼夜の寒暖差も大きいため、コーヒーの実がゆっくりじっくり時間をかけて育つので、しっかりと引き締まったコーヒーの実が収穫できます。コーヒーの風味はリンゴやオレンジのような酸味と花束を手渡された時のような香り、滑らかな舌触りとコクが特徴です。上品な印象のグァテマラのコーヒーとは、ミルクの入ったチョコレートやフルーツケーキと合わせるのがおすすめです。


・アフリカ

主要な生産国はケニア、エチオピア、タンザニアなど。

コーヒー発祥の地と言われる(諸説あります)エチオピア。山羊飼いのカルディ少年が有名でしょうか。

ケニアは年に2回雨季があり、降雨量が多く、赤道に近い山岳地域ではグァテマラと同じく昼夜の寒暖差が大きいためコーヒー栽培に適した地域です。小規模な生産者さんが多いですが、国や協同組合が協力して高品質のコーヒーを栽培する努力を続けている国でもあります。コーヒーの風味はとってもジューシーな酸味が特徴です。酸味と聞くとちょっと苦手だなーと思う方もいるかと思いますが、口の中をさっぱりさせてくれる清涼感というとイメージがつきやすでしょうか。わたしはケニアのコーヒーには、真夏の畑で採れたてのトマトを丸かじりしたようなイメージがあります。みずみずしくて酸っぱさと甘味が広がっていくような印象です。コーヒーと合わせるというと甘いものやお菓子が定番ですが、ケニアのコーヒーは食事系もいけます。トマトソースのラザニアとかおすすめです。これからの季節はアイスで飲むのもさっぱりして良いですね。

エチオピアは、エチオピア高原という高地を中心として標高が高い地域です。(首都アディスアベバの標高は2,400m)降雨量も多いため、地層が削られて深い谷や崖が多い地形で、外国からの防衛に適していて植民地化されなかった要因の一つと言われています。一方で、交通インフラの整備が難しく、コーヒー豆の出荷がしづらいというデメリットもあります。海を挟んだ向かいの国、イエメンにあるモカ港という港からコーヒーを出荷していたので、この辺りのコーヒーを総称してモカコーヒーと呼んだりします。近年話題のゲイシャ種という希少品種のコーヒーもエチオピア原産のコーヒーと言われています。また、カリオモンと呼ばれるコーヒーセレモニーという文化が根付いており、昔からコーヒーが人々に愛されてきた地域です。コーヒーの風味はケニアと近いですが、酸味がもう少し穏やかな印象です。コーヒーの実がついたまま天日干しする加工法を採用している農園もあり、実の甘味が豆まで広がって柑橘系のフルーツのような香りが特徴です。オレンジピール入りのダークチョコレートや苺のムースと合わせるとエチオピアの穏やかな酸味との相性が良いと思います。

またへたくそな絵で申し訳ありませんが、カリオモンのやり方を載せておきます。

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・アジア太平洋

主要な生産国はインドネシア(スマトラ島、スラウェシ島)、ベトナム、インドなど。

最近生産量が増えてきているアジア。ベトナムは世界のコーヒー生産量第2位(2018年の統計)です。

インドネシアは世界最多の島嶼を抱える国です。火山が多く、活火山が120以上あります。熱帯性気候でコーヒーの栽培にも適しています。中でもスラウェシ島に暮らすトラジャ族が栽培するコーヒーは有名で、商品名にトラジャとついていることもあるので、手に取ったことがある方もいるのではないでしょうか。トンコナンという船の形をした家屋に住み、独特の死生観を持つ民族で、お葬式が盛大らしいです。インドネシアは小規模生産者さんが多いので、手動の果肉除去機などを使って収穫したコーヒーの実を加工していきます。手動なのできれいに実を取り除くというよりは少し残ったままゴザのような敷物の上で乾燥させていくため、残っている実の風味が豆にもついていたりします。コーヒーの風味はどっしりとしたコクとハーブのような青々とした香り、軽めの酸味が特徴です。乾いた大地にザーッと雨が降った時のような、草花が雨に濡れて香ってくるような印象です。スパイスなどと相性が良いので、シナモンやクローブなどと合わせても美味しいです。また、チーズやメープルシロップ、バターなどが入ったお菓子や食事と合わせるのもおすすめです。


今回は生産地にフォーカスしてコーヒーを紹介してみました。ワインでよく言われますが、「テロワール」その土地の味、土地の個性によって、コーヒーの風味も変わってきます。お米や野菜も同じ種類、品種のものでも育てる土地が違えば風味が変わってくるように、気候や土や水の違い、土地の様々な要素がコーヒーの風味に影響してきます。

「わたしはチョコレートが好きだし、華やかな香りも好きだから、今日はグァテマラにしてみよう」とか、風味の好みや合わせる食べ物から選んでみるのも楽しいですし、「カリオモンておもしろいな」というところからエチオピアのコーヒーを選んでみるのもまた、新たな発見があるかもしれません。

みなさんのコーヒーライフに少しばかり彩りを与えられたらうれしいです。


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