名前も知らないまま 自由律俳句
風で吹き飛ばされるナイロン袋が得た自由
龍の様にカーブするトレーラートラック
さっきも言ったようにと言われ、更に集中出来ず
スギ薬局の紙クーポンにミシン目をください
一面曇り空の日、こんなに電線があった
ボタンの内側に差し込まれた細長い値札
トマトジュースの赤い髭
呼ばれて口の中の飴を急いで噛み砕く
デッキブラシで磨かれた空、翌朝晴れ
老犬のお散歩の人を見なくなる
◇◇◇
犬の飼い主さんのお話・・・
いつもご夫婦で黒いフラットコーテッドレトリバーの老犬を連れて散歩していらっしゃる方がいた。奥さんは、そのワンちゃんの尻尾とお揃いのポニーテールを揺らしながら、遠くからでも笑顔で歩いて来られる。
最近見掛けないなぁと思うと、「久しぶりだね~」とひょっこり現れたりする。「元気だったんだ」と安心する。
でも、ここんとこ何ヵ月も出会うことが無くなってしまった。うちの犬が8才だから、出会ってもう8年経つ。
今の柴犬を飼い始めたばかりの頃、少し緊張して公園に行っていた。そんな時、大きなレトリバー君と笑顔の飼い主さんが先に居て、手を振ってくれるとほっとした。
そのワンちゃんも徐々に老犬になっていったのだけど、その8年前からの様子を覚えていない。
自分の犬でさえなのたけど、よそのワンちゃんの老化にはもっと鈍感になっているところがある。
きっともう会えないと思う。
こういうことはよくある。老犬の飼い主さんで、ふと気付くと見掛けなくなる方。
名前も知らないし、家も知らない。
知っているのはワンちゃんの名前だけ。
飼い主さん宅では家族であるそのワンちゃんにお別れし、辛い思いされていて、たぶん今も、これからも。 それも何もかもわからないまま。
でも、あまりにもすっと消えて会えなくなってしまうので、私も寂しい。
◇
◇
さ、久しぶりの晴れ、散歩行って来よっと…………。
(^-^)ノ(^ω^U)
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