怪盗ちぇりーぶろっさむ あらわる

突然あらわれた怪盗ちぇりーぶろっさむ
ノリノリご主人さまさくらの運命は……

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用事を済ませて家に帰るとテーブルの上に脅迫状? が置かれていた。
その内容はといえば……。

『ご主人さまのさくらは誘拐した。
 返して欲しければ仕掛けられた罠をなんとかして
 30分以内に2階の奥の部屋に迎えに来てください♪ 
          怪盗ちぇりーぶろっさむ』

なかなかに魅力的でツッコミどころ満載の脅迫状だ。

「……よし、助けに行くか」

コ◯ン・ドイル好きに挑戦するとはいい度胸だ……!
怪盗ちぇりーぶろっさむ!
しかし罠とは……?

その答えはすぐに見つかったのだった。

【罠① 手作りのクッキーとまだ温かいカフェオレ】

「ふふっ、やるな……見事な罠だ。
 このクッキーを口にしてカフェオレを飲んでしまえば
 またたくまに数十分経ってしまうだろう……。
 さくらの焼いたクッキーは美味いしな」

しかしこんな見え透いた罠に引っかかりはしない。
なぜなら、ま、ふたりで食べたほうが美味しいから。

しかし、こんなにわかりやすいと通り過ぎてよいのか……?
見落としているもの無いだろうか……?
と、クッキーを並べてあるお皿をようく見てみると
お皿の下からみたこともない鍵が出てきた。
危ないところだった。
しっかり観察しなければ見つからなかった。
この鍵はもしかしたらさくらを救う為の鍵になるかもしれない。
鍵だけに……。

【罠② 階段に残された写真】

「こ……これはっ!」

階段に残されていた写真に釘付けになる。

「これ、は……!? さくらが自分で?」

スマホで撮ったと思われる自撮り写真がプリントアウトされていた。
しかも、ちょっとだけ……エッチな感じの。
顔を真っ赤にしながら胸元をチラリと開いて上目遣いなショット。
恥じらうその感じが妙に愛らしい。

「ぐっ……。 他に……他には無いのかっ!?」

階段を注意深く、ゆっくりと登る。
途中見逃していないか降りたりしながら。
そして

「っ!」

階段の中ほどで新しい写真を見つけ飛びつく。

「危うく見逃す所だった……さてこっちの写真は何、がっ!?」

写真の中でさくらはベッドの上でぺたんと座っていた。
短いワンピースのすそを申し訳なさ程度にめくりあげ。
さくらのむちむちと健康的な太ももが気になってしょうがない。
この太ももにすりすりしたい……膝枕をして欲しい!
……。
…………。
危ないところだった。
思わず幸せな妄想に想いを馳せていた。
かなりの時間ロスをしてしまったか。
くっ、見事な罠だ。 怪盗ちぇりーぶろっさむ。

「しかし……これだけなのだろうか、見逃してはいなか?」

このまま奥の部屋絵向かえば、数分で着いてしまう。
怪盗ちぇりーぶろっさむのその程度なのか?
さくらの事をかんがえるなら早く向かった方がよいのだろう……しかし
まだもっとこう……。

だがそれ以上の写真は発見できなかった……。

「2枚だけかぁっ!
 ここまで来たら下着姿とかそれ以上の……もっと見たい!」

階段の中ほどで膝をつきうなだれるが直ぐに思い直す。

「少し取り乱したな」

手に入れた写真を大事にポケットにしまう。
そしてロスした時間を取り戻すべく階段を上がりながらひらめく。

「自撮りならさくらのスマホにデータがあるのではないだろうか?
 もしかしたら何度も撮り直しているかもしれない」

さくらを助けた後に頼んでみよう。
このことを忘れないように心に刻みこみ奥の部屋へと向かう。


【奥の部屋前】

「ふぅむ。 特に罠らしきものは無いみたいだな」

ドアの周りにもドアにも特に何も見当たらない。
試しにノックしてみたが何も返答はなかった。
と、ドアノブを回そうとすると鍵がかかっている。

「ああ……これ、この部屋の鍵か」

普段鍵をかける事が無いので忘れていた。
物置とクローゼットみたいな部屋にしており、主に使うのはさくらだ。

手に入れていた鍵を使いドアをゆっくりあける。
そこには……

「ご主人さま遅いのですーー!
 なぁんで! もっと! 早く来てくれないのですか!
 さくら寂しかったのですにゃぁぁぁ!」

手錠をしたさくらがいた。

「さくら……なんでそんな事に……」

近づいてさくらの前に座ると、
手錠をしたままもぞもぞと膝の上に乗ってきてプンスカする。

「どぉして! お迎えに来るのが! こんなに遅いのですか?
 さくらのコトほおっておいて何をしてたのですか?
 クッキーを食べていたんですか?
 それともさくらの写真に見惚れていたんですか?
 あ、でもそれはうれしいかも……にゃぁん♪
 にゃにゃっ!? まさかまさかさくらがいないのをいいことに
 どこかのドロボーねこさんとよろしくやっていたんですか?
 どぉなんですか? ご主人さま?
 隠したってにおいを嗅いじゃえば
 すぐにさくらにはわかるんですからね?
 どぉなんですか!? ご主人さま?」
「あ、あぁ、遅くなってごめん。
 クッキーは無事だよ、あとで一緒に食べよう。
 それから写真……。 ああ、うん、あれにかなり手こずったよ。
 怪盗ちぇりーぶろっさむ、油断ならないな」

そう告げるとむっと睨まれ

「写真より実物のさくらのほうがいいもん
 写真じゃなくて実物を見ればいいのに、ご主人さまのばか」

頬をふくらませながら怒られた。

「あと、さくら以外のねことはよろしくやってないからね」
「……そんなコト知ってます、信じてるのですよ」

コツンと頭をあずけてくるとチャリッと音がする。

「それよりもその手錠はなんだい?」
「えへへ……これ、お母さまからもらったのですよ。
 何かあったらこれを使いなさいって」
「え」

今度実家に帰った時に家族会議だ。

「それで、その鍵はどこにあるんだい?
 途中には隠されていなかったけど」

ピクッとさくらのみみが反応する。

「か、鍵はありますにゃよ?
 さくらが自分ではずすのでだいじょうぶにゃのですよにゃ?」
「いやいや、その状態じゃ痛くしちゃうから。 鍵を出しなさい」
「にゃぅ……。 あそこ……です」

「でもだめですにゃ~~」という言葉を置き去りにして
さっきまでさくらが座っていたところに落ちている四角い紙に近づく。
紙に鍵が貼り付けてある。
それを見た瞬間ピンときたが……平静を装い
ゆっくりと慎重にカギを剥がす。

コレが思っている物なら……大事にしなければならない。
鍵を手に持ち、紙はポケットにそっとしまった。
(落ち着け、後で見ればいい)

「この鍵だね、さくら。 そんな物騒な物はさっさととってしまおう」
「にゃふふ、外れなかったら大変なことになちゃいますね~♪
 はぅっ! もしかしてもしかして……動けないさくらをご主人さまが
 ……あややや、だめな……のではないの、ですよ~?」
「……」

無言で手錠のカギを外す。
おもちゃみたいな物かと思いきや、結構しっかりしている物だった。
本当に家族会議をしなくてはいけない。

手錠を外すとにへっと心から緩んだ笑顔で抱きついてくる。

「手錠をして動けないさくらよりも
 こうやって抱きついてくれるほうがいいな」

そう言うと、回している腕に更に力が入ってくる。

「えへへ、さくらもご主人さまにぎゅってするほうが好きなのですよ
「そうか」
「でもときどきはもっと束縛してもほしいのですよ……」
「え?」
「えへ、なんでもにゃいですよ~~♪」

――――――

「ところでご主人さま? 写真はさくらに渡してくださいね?」

「……ん? 写真って?」
「……ごしゅじんさま?」
「それよりさくら? 他に撮ったのはないのかな? もっとみたい」
「む~~。 写真のさくらより実物のさくらがいるのに……なのですか?」
「もちろん実物の方がいいけれど……
 いつでもさくらのコトを見ていたいかなって思ってさ」
「いつでも、ですか?
 もうっ! もうっ! しょうがにゃいですねぇ♪
 ご主人さまにだけに、なのですよ♪」

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