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JAXA 月面農場から見る、宇宙と地球の「イノベーション」とは?

皆さん、こんにちは!

今回の記事では、8月11日に開催されるThink Space Habitat vol.6 はじめての宇宙建築 in TOKYO に先立ち、宇宙での農業について紹介していきたいと思います。
※ 8/11 開催のイベントお申し込みはこちら↓
https://docs.google.com/forms/d/1nHQ5eBWuMzTgPWO6p6vJFm9MtJYKgGHnrosxrRXkliY/edit


2017年、 グローバル・シンガーソングライター のピコ太郎がその持ちネタである独特なダンス「PPAP」にのせて紹介したことで話題になった言葉に「SDGs」があります。(https://youtu.be/H5l9RHeATl0)

SDGsとは持続可能な社会を目指すための開発目標であり、具体的に17のゴールが定められてます。そのうちのいくつかを見てみましょう
https://www.unic.or.jp/activities/economic_social_development/sustainable_development/2030agenda/
2.   飢饉をゼロに
6.   安全な水とトイレを世界中に
14. 海の豊かさを守ろう
16. 陸の豊かさも守ろう

このように農業に関連のあるゴールが目立ちます。

事実、農業分野ではスマートアグリカルチャーと呼ばれる、持続可能化を目指した技術の導入が行われています。
温度や湿度、二酸化炭素濃度などをセンサーによって管理するビニールハウスや、害虫、病気を検知するドローン、スマートフォンで管理する水耕栽培...
2019年、そのさらに先を行く農業の提案が公開されました。その名も「 JAXA 月面農場ワーキンググループ活動報告」(http://www.ihub-tansa.jaxa.jp/Lunarfarming.html)です。この冒頭部分を読むと、「イノベーション」という言葉が並びます。

ではJAXAが目指すイノベーションとは何なのか、近年の農業分野でのIoT技術は宇宙でいかなる進化を遂げるのか....今回はその内容を紐解いていこうと思います。

現在、JAXAは 大学や民間有識者の協力のもと栽培システム高効率食料生産技術物質循環システム全体システムの4つのグループに分かれ、宇宙農業の検討をしています。


《 栽培システム 》

LEDによる水耕栽培の植物工場が主に検討されています。
品種はレタス、イネ、ダイズ、サツマイモ、ジャガイモ、イチゴ、トマト、キュウリの7種であり、どれもすでに地球上では水耕栽培が可能であると実証されています。

写真は玉川大学のLED水耕栽培システム
これらの品種は栽培時期が5~25週間とばらばらであり、安定した食料供給が可能になります。


《 高効率食料生産 》

月面ではできるだけ省スペースでの効率的な生産が必要とされます。
例えばサツマイモは

この画像のように、成長に応じて幅が広くなるレーンで生産され、ロボットにより収穫されます。

また、レタスも成長に応じて画像のようならせん状のレーンをたどって生産されます。
この他受粉が必要なイチゴは超音波で花を揺らすことで受粉し、ロボットによって収穫される、という工程をたどります。
また、収穫時期の判断には画像認識が使われます。


《 物質循環システム 》
現在ISSでも、糞尿の分解・水資源の循環は導入されていますが、月面ではそれに新たに微生物による分解、さらには月面の砂(レゴリス)に含まれるカリウム、マグネシウムの活用も検討されています。
特にレゴリスについては、火星、月の土壌を再現した土でトマト、小麦を再現した実験を行った結果問題なく栽培できたようであるため、期待が持てそうです。
ただし、保水性に問題がありそうなことから、おむつ等で使われている給水ポリマーを混入させる実験もされています。

各土壌で栽培した実験の写真です。(LACTIFは給水ポリマー)
給水ポリマー+レゴリスでは、大きさは地球の土壌に劣りますが、ある程度の大きさにまで育つことがわかります。
ワーキンググループでは、これらと糞尿の堆肥化、植物のメタンガスを掛け合わせ、農業の物質循環システムを作ることを目指しています。
ただし、循環で問題になっているのはウイルス、細菌の混入です。これらの対策として宇宙線の活用も例に挙げられています。


《 全体システム 》
ワーキンググループではこれらの技術を使って6人分の食料を生産するのに、 体積1,601m3(267m3×6)、質量14,661kg(2,444kg×6)の宇宙農場が必要になる、という結論を出しました。また、電力として原子力発電の導入で、運用コストを削減できると考えています。



ここまで、一連のワーキンググループの取り組みについてざっと見てみました。
ここで報告書の冒頭部分を振り返ってみます。
「 宇宙から地上へのイノベーションの例としてLEDと多段式養液栽培がある。LEDはNASAが省電力に着目し、宇宙での利用を進めたことから地上での植物工場で有効な技術として広がった。多段式養液栽培についても限られた栽培面積でいかに収量を上げるかを宇宙用に追求した結果により、植物工場内での栽培様式として普及した」

JAXAが目指すイノベーションとは、宇宙農業のみならずその技術が地球での農業にもたらすものだったようです。月面というリソースの少ない環境での植物生産の方法は、今後の地球でも活用できるかもしれません。

宇宙という厳しい環境での農業を確立する事で、地球での飢餓をゼロにする。
それはSDGsのゴール達成への道の1つでもあります。

このワーキンググループでは6人分の食料供給が検討されていますが、この報告書に上がっていた技術は私たちを含めた数十億人という人々に影響を与えるものです。一見遠そうで案外身近な課題であるSDGsから「宇宙での農業」、さらにはそういった農業を行う「宇宙農業施設」について考えていくのも心踊る未来に繋がるのではないでしょうか。


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第6回目となるThink Space Habitatは 『宇宙農業施設の設計』をテーマに
8月11日 日曜日 13:00~16:00(12:45開場)
場所はX-NIHONBASHI(東京都中央区日本橋室町1丁目5番3号 福島ビル7階)にて行われます。


皆様のご参加を心よりお待ちしております!

↓Think Space Habitat vol.のイベント申し込みフォームはこちら↓
https://docs.google.com/forms/d/1nHQ5eBWuMzTgPWO6p6vJFm9MtJYKgGHnrosxrRXkliY/edit

《参考文献》
月面農場ワーキンググループ検討報告書 第1版


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