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オフィスは「集まる場所」から「魅せる場所」に変わっていく。

本連載 “Challenger’s IDEA” は、各業界でチャレンジされている方をゲストとしてお迎えし、今後のブランドの在り方をディスカッションしながら、「チャレンジを続ける人たちの思想をシェアするスペース」です。

今回は株式会社ワンキャリア経営企画室のPR Director 寺口さんと、今の組織内のコミュニケーション、企業のオフィスの役割についてディスカッションしました。

株式会社ワンキャリア 経営企画室 PR Director 寺口 浩大
株式会社スペースマーケット 取締役 兼 執行役員CFO兼CHRO 佐々木 正将

「コミュニケーションで世の中を動かす」

佐々木:本日はよろしくお願いします!では始めに、寺口さんの自己紹介からお願いします。

寺口:改めて、寺口浩大、32歳です。1988年生まれ、兵庫県の伊丹市出身で、地元の小学校に通い、中高は奈良の西大和というところに行きました。

そこではバンドばかりやっていたんですけれど、とあるスーツ着てる格好いい大人を初めて見つけて、その人に一言、

「これしかやりたくないと決まっているやつ以外は、マジで大学へ行って選択肢を持っとけ」

と言われ説得力がありすぎて。高2ぐらいから猛勉強して、物理はほぼ空欄だったんですが、理系で京大に受かりました。マジで運が良くて。(笑)

佐々木:端からすごい!!

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寺口:全員にびっくりされました。そこから大学はテニサーとマージャンと飲み会の4年間でした。それから大学には飽きちゃって、院には行かず早めに就職しました。

実はじいちゃんが博報堂で、「コミュニケーションで世の中を動かす」というのがすごく面白そうだなと考えていました。僕は子供の時から教室の中でムードメーカー的な立場でいる事が多く「社会のムードメーカーになりたい」と言って面接を受けました。ただそこには縁がなく、結果メガバンクに就職しました。

メガバンクで最初は不良債権の回収を2年間やって、その後は粉飾決算の調査、工場現場に視察に行ったり、それをレポーティングしたり、デフォルトの確率を調査したり、あとよく言えばM&Aに関する業務など、同時にリクルーターもやっていました。銀行には4年半いて、その後に辞めました。

「スタイル」を表現する手段として「結果」を取りに行く。

佐々木:ちなみに新卒のメガバンクにいた時の髪型とひげはどんな感じだったんですか?自分が初めて会ったのは3年前ですよね。その時は寺口さん髪が長かったです。

寺口:初めは剃ってました。朝しっかり剃っても日中生えてきてしまうので、ちゃんと剃ってこいと周りに言われながら。(笑)それからはずっと長いです。むっちゃ、こだわりがあるというよりは自然に。貧乏性なんで、一回伸びちゃったし切ったらもったいないなと。(笑)

佐々木:でも、自分はそのくらいの歳のとき、逆にそういう風体でした。ひげを生やして、髪は長めでパーマしていた。

寺口:髪の毛は楽しくやりたいなとは思っています。多分、自分は人よりもスタイルに対してこだわりを持っていると思っています。少なくとも「髪型や服なんて何でもいいじゃん」というタイプではなさそうだなと。

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この話も後につながるんですけど、結果とプロセスだったら、僕にとってはプロセスというかスタイルのほうが大事だし、客観評価と自己評価だったら自己評価のほうが大事なので、自分が好きなスタイルを追求していくというのが、唯一、僕がずっと好きなことなんです。

その「スタイル」を表現する上で、必要な「結果」は取りにいくという感じですね。スタイルを表現する上で必要な他者評価も手段としては取りにいく。

この自己評価×スタイル×プロセスができあがると面白いんですよ。一方で結果に興味がなさすぎるので大変なんですよね。結果出すのが手段でスタイル表現が目的なんですよ。ビジネスでいうと多くの場合その逆じゃないですか。なので、最初20代の時はそこに苦労しました。今は少しずつだけど結果が出せるようになってきたし、結果が出せたらスタイルの選択肢も増えてくるから、割と今はすごく自由なんですが、結果がないときはすごく不自由でしたね。結果もねえのにスタイルの話をするなというのが普通だと思うので。ビジネスの世界は厳しいですよね。美学にフォーカスを当てていたら、美学を追究できない。髪型一つ取ってもそうだし、服一つ取ってもそうだし、言動を一つ取っても、そうですね。

3つの人格に矛盾のない社員で成り立つ組織はカッコ良い。

寺口:経歴の話に戻ると、メガバンクの後広告の会社に数カ月在籍し、その後2年ぐらいHRのコンサルをやる会社にいました。人材育成の支援をやってる当時130人ぐらいの会社で、研修の講師とかをやっていました。

そこでも「そもそも人が働くのって楽しいんだっけ?」という問いがずっと僕の中にあって。企業と個人ってどういう関係なんだろうとか、そこがすごく知りたくて。というのも、銀行にいたときに、個人としては皆すごくいい人なんだけど、オフィスに行った瞬間にみんな雰囲気が変わるなと思ったんです。

おそらく人には人格が3つあって、それぞれ一致している状態が良いと思っていて。その3つとは「法人の人格」「個人の人格」「組織人の人格」というもので、例えばこの組織人と法人の人格が近いのは経営者ですよね。でも世の中の従業員の多くは組織人と個人の人格が近くて、法人の人格とは離れている。ここの法人の人格に近い人を集めながら、個人に主導権がある状態で成り立っている組織って、すごく格好いいよなと思って。

要は居酒屋での悪口が出ないということですね。「実はさ」みたいなのって、法人と個人の人格が遠い状態。それぞれの人格の距離が近く、矛盾していない人で構成された会社は格好いい。ワンキャリアはそういう集合体にしていけたらすごく楽しいなと思っています。


佐々木:まさにですよね。自分も今は5社目なのですが、前いた会社ではプライベートでの人柄や個人の人格はいい人なのに、組織人になるとちょっとあれ?みたいな人っていたなと思って。

それがスペースマーケットにジョインして良い意味で驚いたんです。みんな個人の個性や考え方がある意味だだ漏れなんですよね。自分らしく働くとか、自分らしく意見をするとか、そういったことがしやすい会社なのかなと思っています。

寺口:それは、めっちゃすてきですよね。多くの企業では働く人たちの公私のギャップがでかすぎるとすごく思いますね。僕はそのギャップができるだけない、使い分けなくていいコミュニティーで活動をしていたいと思い続けて、やっと4社目で出会えたかもしれないです。

いま、個々人の対話はどう変わったか。

佐々木:話は少し変わりますが、それこそ人格が表れるコミュニケーションの手法はここ最近大きく変わってきていますよね。このZoomも、もともとはWeb会議システムという類いだったんですが、今年3月ごろからは完全にコミュニケーションツール化していると思います。

寺口:そうですよね。この変化や違和感を言語化することは重要で、僕がこの前、人から言われて初めて気付いたんですけれど、「家にいてリモートワークを始めてから、物理的に誰かと一緒の方向を向きましたか?」と聞かれて。確かに向いてないなと。
オンラインだと一緒の方向を向いていることを、どう認知するかがとても難しいんですよね。現にオンラインで開催する全社定例や大人数のミーティングって無意識にめっちゃ緊張するじゃないですか。なぜかというと、大勢がこっちを見ている状況はオフラインで考えても衝撃体験なんですよね。

いま個人的には、一緒の方向を向いている感覚をどうデザインするか?にすごく興味が湧いています。

オンラインだと相手がみんな常に画面越しにこっちを向いている。だから客体化しちゃうんですよね。自分と相手がはっきりしちゃう。商談とかだと丸テーブルに少し角度を付けて座ったらうまくいく、みたいな話があるじゃないですか。ああいうことができないんですよね。常に真っ向勝負をしないといけない。

なので、2Dの対話の世界では議論には向いているかもしれないけれど、対話には向いていないかもしれないですね。そういうのは、僕も答えは出ていないですけれど、最近、ぼやあっと考えています。

企業と個人の対話は「論より証拠」を。

寺口:対話というテーマでさらに最近考えている事があって。以前に「令和の就活ヘアをもっと自由に」というキャッチコピーでパンテーンのブランドキャンペーンに協力させてもらった事があるんです。

佐々木:うちも登録させてもらいましたけれども、就職活動だとしても髪型やひげは何でもいいという様なメッセージを打ち出してましたよね。でも改めてああやって声掛けいただいて、民主化という観点だとその通りだなと。まだまだ世の中変えないといけないですね。

寺口:そうなんです。例えば「うちは髪型、服装、自由で来てください」とテキストで書くよりも、うちの社員は例えばこんな感じの髪型の人がいますという1枚の写真のほうが訴求力がある。論より証拠だと思うんです。私服で来てくださいといっても信じてもらえないわけじゃないですか。

本当に企業のメッセージってあまり個人に信頼されてない。だから、これから論より証拠で、説明するよりも動画などを活用した「表現」のほうが信用されると思っているんです。なので最近採用の動画で生放送にこだわっているのはそこなんですよね。論より証拠を、どこまで出せるか。例えば、うちの会社は、女性がむちゃくちゃ活躍していますと、おじさんが3人出てきて言われても「ん??笑」ってなるけれど、若い女性の方がすごく楽しそうに仕事のことを話していたら一発で伝わりますよね。

なのでちゃんと生放送動画に堂々と出る企業は、オープンなコミュニケーションができるという証拠だし、就職活動中の学生から信用を得たいのであれば、動画のコミュニケーションを増やしていかないといけない。全部、どう説明するかよりも、結果としてどう表現されているか。そっちに頭を変えないと、説明と表現を全部分けないといけないと思っています。

佐々木:論より証拠でいくと、うちは今、中途採用の選考の過程で1日インターンをやっていています。社員の中に混ざって同じデスクに座ってもらい、雰囲気を実際に見てください、という感じで。これはスペマーケットをこちらからどう伝えたいかに加え、全くフラットな状態を見てくださいという姿勢も大事にしています。うちの場合は新卒採用はなく中途でも若手採用は少なくて。候補者は大体30才前後が多いので、ある程度自分に合う、合わないの自己判断ができるという前提に、そのまま会社として脚色せずに見せる事を意識して、各部にインターンをお願いしているんです。

寺口:それは、めちゃくちゃいいと思います。編集しないことが最高の演出になるなと思うんです。バラエティーの上では編集が演出になるのですけれど、採用においては編集しないこと。編集は現場も求めていないし、求職者も求めていない。ミスマッチの種を作ることになります。編集するのはマッチングの観点だけでいうと百害あって一利なしなんですよ。

佐々木:「採用の先にある仲間を増やす」という観点だと絶対にそうならないはずなんだけれど、「採ること」が目的になっていると演出しちゃうんですよね。

寺口:おっしゃるとおりですね。なので新しいKPIが必要なのかもしれないですよね。オンボーディングのどこまで責任を持つのか、何年目まで責任を持つのか、エンゲージメントの基準値は幾つなのか。体験の指標をちゃんと入れないと。

人が共有したくなる場をどうデザインするか。

寺口:先日ONE CAREER SUPER LIVEという20,000名以上に申し込み頂いた採用イベントを開催したのですが、やっぱりそこでも体験の指標は意識しました。僕らは二つの指標をみていて、コンテンツに対しての満足度と、これを体験した結果、今後、どういうものがオンラインになってほしいかというものを取っていたんです。結果87%が満足と答えてくれて、面接やOG/OB訪問も半数がオンラインを希望していました。

あとは、いい体験は基本的にシェアされるじゃないですか。人がシェアするときのトリガーは、期待値との差分だと思っていて、思ったよりむっちゃ良かった!だったらポジティブシェア、思ったよりむっちゃ悪かった、だったらネガティブシェアとなりますよね。

今回、イベントの趣旨としては就職活動の横のつながりが分断されてしまっている中で、Twitterで同じ時間を共有した仲間と繋がってもらうため、各プログラムをルームという名前にしたんです。スタジオだけど部屋、ルームという形にして、訪れているような体験をしてほしかった。同じ時間で同じ部屋を共有した仲間同士で、「#ワンキャリアライブ」と、ルームA~D,Xがあったんですけれど、#roomAと付けたら、今、ワンキャリアライブを見ていて、ルームAを見ている人たちとつながれる。時間と場所をハッシュタグにしました。同じ時間、同じ場所で過ごしている人たちは、やっぱりつながりたいはずなんですよ。

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あとルームと言うからには、ちゃんと部屋のクリエイティブにそれぞれテーマを持たせたんです。5部屋あったんですけれど、5部屋ともワンキャリアのオフィスを設計してくれたうちのデザイナーがコンセプトから絵を描いて。今回は「発見」というメインコンセプトがあったので、それをどういう形で表現するか、デザイナーとクリエイティブのところはしっかり議論してつくりました。

その中で、もしかしたらこの後オフィスや場所の価値が「機能的な価値」から、「感情的な価値」に、目的がシフトしていくんだろうなと、デザイナーとも話していたのですが、SUPER LIVEでもめちゃくちゃ実感しました。

オフィスは集まる場所から魅せる場所へ。

佐々木:まさに今スペースマーケットも自社オフィスをどうするか検討中なんですよ。うちは外部のレンタルスペースを使うサービスを展開しているじゃないですか。そういった中、何を本社オフィスに置くか、求めるかは、議論中なんですよね。

寺口:オフィスを持っていることとか、オフィスに集まることとか、対面で合うことに理由が必要になりましたよね。

逆に作業場所としてのオフィスの価値は下がると思っています。オフィスのほうが良いことはオフィスでやることになるんだろうと思いますね。今、僕が何となく考えているのは、オフィスが集まる場所から魅せる場所に変わっていくのだろうなと。むしろ新しいオフィスを見ているときに、どこを背景にライブ配信ができるかなとか、何パターン絵が撮れるかなとか、そういうふうに考えてオフィスを見ているんです。

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このオフィスでは「光を当てる」というコンセプトを基に木に光を集めているデザインになってるんです。「光を当てる」ということが組織の口癖なので、それをみんなでちゃんと認識するために、社内でよく使われる言葉とか、僕らが大事に思っていることをクリエイティブで表現して、社内で認識を合わせるという役割があると思います。

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佐々木:うちも今年か来年か分からないですけれど、いつか移転する事になると思いますが、リモートワークやレンタルスペース利用を進めつつも新しいオフィス設計をやろうとなると設計する側としてはオフィスに来てほしいという気持ちが湧くんですよね。

寺口:行きたいオフィスをどう作るかという思考になるから、面白いかもしれないですね。どうやったら来てもらえるんだっけという。人々はオフィスもそうだし、そもそも集まるという行為とその場所に対して意味を求める事が増えてくるので、「御社のオフィスにはどういう意味があるんですか」という会話が、もしかしたら増えてくるかもしれません。何かをやるにしても「何で今回この場所を選んだんですか」とか理由を問われるんだろうな。


佐々木:スペースマーケットの目指す社会やサービスとしても、人の目的に合う場所の価値はちゃんと伝えていきたいと思います。これまでみたいに簡単に人が集まるような時代ではなくなってくると思うので、そこは場所を提供する会社としてすごく重要な役割を担っているなと、勝手に思っています。

寺口:本当に、そうだと思います。むしろチャンスというか、面白い変化だなと思います。だから、せっかく集まるんだったらこうしようよと。オフラインで集めるためには、オフラインでしか楽しめない面白さを提供できないといけないから、イベントをやる人たちの企画力は、もっと上がっていく。その内容だったらオンライン配信で良いんじゃない?みたいに、見方が厳しくなるんじゃないですかね。移動したくないんだけど、みたいな。

佐々木:確かにそうですね。スペースマーケットはもともとイベント企画の事業もやっていましたが、最近オンラインライブ配信番組のプロデュースも事業として行っているので、その観点での知見も増えると思っています。

寺口:良いですね。今度弊社にも遊びにきてください。それとは別にまたイベントやる際は相談させて頂きます!

佐々木:ぜひぜひ!本日はありがとうございました!

寺口:ありがとうございました!