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【取り戻すための音楽回想録】vol.1

昔聴いていた音楽を今聴いてみて、忘れていた思い出を取り戻す
「取り戻すための音楽回想録」第一回。

早速ですが音楽を頼りに、僕なりの1989年を取り戻したいと思います。

スペシャが立ち上がった1989年は昭和天皇が崩御し「平成」がスタートした年であり、僕の中学校生活がスタートした年だ。昭和天皇といえば僕にとっては、儀式の度にテレビに流れる「皆さんの〜、元気な姿に〜接し、喜ばしく〜思います。」というお決まりのスローなセリフ。とても印象的で、よく親に向かってそのモノマネをしていた。子供らしくない人選のモノマネだが、なぜか妙に昭和天皇を魅力的に感じていた。

それはさておき、本州の最北端・青森県の下北半島にあるむつ市という街で生まれ育った僕は、小学校時代に好きなものといえば漫画と仮面ライダー・戦隊モノ。ミニバスクラブには所属していたものの、運動神経がいいわけでもなく、内面はオタク・文系真っしぐら予備軍だった。
藤子不二雄の「まんが道」と週刊少年ジャンプに影響されながら、クラスの友達と漫画雑誌のようなものを作ったり、そのくせ漫画家に憧れているのに小学校の卒業文集にあった将来の夢の欄には「漫画の編集者」とちょっとウソを書くような、自意識過剰で真正直ではない子供だったと思う。

「炎のキン肉マン」串田アキラ

1989年春、地元で一番規模の大きい生徒数1000人くらいの中学に通い始めた頃の僕は、丸坊主(当日のむつ市はどの中学も男子生徒全員丸坊主)に黒縁メガネ、ヤセ型、身長はクラスの真ん中くらい。

あらためて、その頃に聴いていた音楽は何だったのか、
記憶を辿ってみると…あった。

スキンヘッドにサングラス、直立不動で独特な歌唱法のボーカルのあのバンド。

爆風スランプだ。

大ヒット曲となった「Runner」で大ブレイクし、その後も「大きな玉ねぎの下で」「リゾ・ラバ」など大ヒットを世に送り出した。

早速「爆風スランプ」をサブスクで検索して聴く。

「Runner」爆風スランプ

そうだ。確か、同級生“やっこ”から爆風のアルバムを借りてテープにダビングさせてもらったんだ。“やっこ”はとても小柄だったけど負けず嫌いで、何かにつけては悔しそうに泣いていた。

早速、ほぼ消え去っていた“やっこ”についての記憶が蘇えってきた。

“やっこ”は保育園から小学校6年のクラスでも一緒の友達だったのに、そこまで親しくはない間柄で、うちのすぐ近くに引っ越してきた事と、おばあちゃん同士が同じ集落の出身だったことが中学1年でわかり、仲良くなったんだった。

思えばその頃はよく“やっこ”のおじいちゃん、おばあちゃんの家に遊びに行っていた。

おじいちゃんの運転する小さな軽自動車は狭くてタバコ臭かった。田舎の中の市街地から、田舎の中のより田舎へ。着くとすぐに、そこらじゅうにあった畑の傍でミミズを調達して、木々に囲まれた近くの川まで山の中へ入っていき、イワナやヤマメを釣ったりした。

釣り針へのミミズの付け方から、魚のいそうなポイントまで、釣りに関しては何でも“やっこ”が教えてくれた。

それまでも父親に連れられ岸壁に釣りに行ったことはあったが、そこでは小さな“チカ”しか釣ったことがなく(それはそれで天ぷらが美味しかったが)、初めてイワナを釣った時の強い手応えには感動した。

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そういえば、肘を捻挫して通っていた整骨院で「釣りキチ三平」を読んでいたのも、ちょうどその頃だ。今にして思うと凄いタイトル。また無性に読み返したくなってきた。

やっこには、やっこを一回り大きくした感じの一個上のお兄ちゃんがいた。確か勉強のできる真面目なお兄ちゃんだった。確か元々はお兄ちゃんが爆風スランプを聴いていたんだった。

「Runner」大ヒットの後、さらにヒットした「リゾラバ」と「大きな玉ねぎの下で」が収録されたアルバム『I.B.W - It's A Beautiful World』を借りたような気がする。ダビングしたテープはまだ実家に残っていたので画像を送ってもらった。手書き文字は完全に僕の筆跡。実家の柔らかそうな床もジワる。

カセットテープ

確かそれをきっかけに、『HIGH LAUNDER』『よい』と遡った。考えたこともなかったが、同じアーティストのアルバムを遡って聴いたのは、これが初めてだったのではないか。

『I.B.W - It's A Beautiful World』爆風スランプ

そう考えると、ますます爆風スランプに思い入れが出てきた。

顔面のビジュアルがいいわけでもない、世間に媚びてない佇まい。美メロのヒット曲があるかと思えばメッセージが強い曲も、くだらない曲もアルバムには必ず入っていた。

そもそもスキンヘッドにサングラスで直立不動て。芸名サンプラザ中野て。パッパラーて。バーベキューて。

僕が現在、音楽とお笑いにまつわる映像を作っている、その源流がここにあるような気もしてきた。

僕にはスチャダラパーより、ユニコーンより先に爆風スランプがあったんだ。

「今夜はブギー・バック(smooth rap)」スチャダラパー featuring 小沢健二

果たして本当に源流なのかどうかはともかく、時が経つにつれて“やっこ”は柄の悪い友達と連むようになり、学校のジャージがダボダボになっていった。

そして次第に別の友達と遊ぶことも増え、疎遠になっていってしまったのだった。

爆風スランプをよく聴いていた1989年

僕はやっこと釣りに行っていた



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