✴︎お母さん
月子ちゃんが突然現れてから一週間がたった。
同じ部屋でこんなに長く過ごしたのははじめてだったが、
幸い、うちのだんなさんは出張中で
気を使う相手もいなかったし、二人で自由に過ごしていた。
私は本屋さんとパン屋さんで掛け持ちのバイトをしているので、
結構朝から晩まで働いていた。
月子ちゃんは私がうちにいない間に、買い物や掃除、洗濯を
引き受けてくれていて、夜に帰宅したら
玄関の明かりが灯っているし、夕飯を作って待っていてくれた。
私の仕事がない日は一緒に映画を観に行ったり、飲みに行った。
その日は私の給料日だったので、わりと早い時間から
二人で焼き鳥屋さんでビールをグイグイ飲んだ。
酔いが回りすっかりいい気分の私に向かって
月子ちゃんがだしぬけにこう言った。
「結ちゃんはどうして、自分が子どもを授からないと思っているの?
もう、すぐそばまで、やってきているというのに。」
「すぐそば??何が来てるの?」
「あれ?私言ってなかったっけ?
小さい頃からいろいろと
不思議なものが見えたり聞こえたりするんだよ。」
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