10 べっぴんさん
✴︎お母さん
月子ちゃんはうちの母の親友の娘さんだ。
母親同士が仲が良いので、何回か一緒に遊んだり、お泊りした記憶はある。
私が高校へ上がる頃、彼女は東京へ引っ越すことになり
それ以来、母から近況を聞いてはいたが
本人とは多分15年以上会っていなかった。
「月子ちゃん?? え〜? どうしたの?」
「結ちゃん、ご無沙汰してます。17年ぶりね。ちょっと泊めてくれない?」
「17年ぶりに訪ねてきたと思ったら、うちを宿代わりに?
な〜んて、うそうそ。どうぞ、上がって。」
そう言って私は月子ちゃんと大きなスーツケースを我が家に招き入れた。
彼女は幼い頃から聡明で美人だったが、
今はその美しさに拍車がかかっている。
濡れ烏のような黒髪を胸のあたりまで伸ばしていて、
薄ピンク色したほっぺたは、相変わらず赤ちゃんのようだし
日本人っぽくない深緑色をした大きな瞳は
まばたきする度にバッサバッサと音が聞こえてきそうな
長いまつげに縁取られていた。
「なんか、恐ろしいほど綺麗。30歳を超えてるようには見えないね。」
「あら、嬉しい。ありがとう。結ちゃんは相変わらず元気だね。」
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