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僕が60歳を前にドナー登録を考えるようになった理由

 60代の生き方を考える中で、ドナー登録をしておくのも悪くない選択だと思うようになりました。

 人生の折り返しも中盤に差し掛かり、今まで以上に毎日を大切にしなければならないと思うようになったからです。

 この先どこまで健康でいられるのかは自分次第なのでしょうが、しかし運命は“神のみぞ知る”です。審判の日は昨日よりも今日着実に近づいています。

 そう思うと、何気ない一日がとても愛おしくなります。 

 ちっぽけな存在ですが命を大切にしたい、そしてもし思ったよりも早く審判が降ったとしたら、できることはなんだろう?なんてことも考えることがあります。

 もし、そうなった時はまだまだ働ける自分の一部が誰かのお役にたつのも悪くはないのではないでしょうか。

おとなとして、ドナー登録について知っておくべきこと

 私は、水疱性角膜症という目の病気です。角膜の細胞がどんどん減って、角膜が白く濁る病気です。

 今はいつも真冬の風呂場の湯気が充満した浴室の中にいるようで、本を読んだり、人の顔を判断することはできません。

 解決策はただ一つ、誰かから角膜を提供してもらい、移植をすることしかないのです。

理由があって、手術を受ける決断ができないのですが、視力が全くなくなったらその時は判断しましょうということになっています。

 ところで、肝心の角膜はそう簡単に手に入らないのではないかと危惧をしていたところ、担当医からは、いつでも輸入で購入でき、手術は可能なのだという回答に少し驚きました。

 角膜を買うという響きって、なにか違和感がありますよね。

 東南アジアあたりから非合法に入手するのかな?本当にそれで良いのかな?なんて妄想にふけります!

角膜のお話はこちら

 しかし、この考え方はかなり日本的な考えのようです。

 世界を見渡せば、積極的にドナー登録をする人が多く、思った以上に臓器移植手術が行われています。

ドナーになるとはどういうことか

 臓器移植を行う場合、ドナーのタイプは3種類あります。

①    脳死状態でドナーとなる場合、②心肺停止後にドナーになる場合、③生きながらドナーとなる場合です。

①    脳死状態でドナーとなる場合の臓器

心臓・肺・肝臓・小腸・などが対象となります。
これらの臓器は、非常に高度な代謝活動を行っている臓器であり、酸素供給が途絶えると、すぐに損傷を受け始めます。

心肺が止まると、これらの臓器への血流と酸素供給が止まるため、細胞レベルでのダメージがすぐに始まります。このため、脳死状態となったドナーから移植されるのが一般的です。

②    心肺停止後にドナーとなる場合

腎臓、膵臓、眼球などは、他の臓器よりも低い代謝率を持つため、心肺停止後もある程度の時間内であれば移植が可能です。

具体的な許容時間は様々な要素に依存するため一概に述べることはできませんが、保存技術の発達により比較的長目の前数時間は移植状態を保つことが可能です。

③    生体移植

肝臓や、骨髄、末梢血幹細胞などは生きた上程で提供可能です、ドナーとして、提供をした後一般生活に戻ることができます。

ドナーになる方法

 ドナーになるためには、免許証・健康保険証・マイナンバーカード・ドナーカード・インターネット(臓器移植ネット)上で意思表示ができます。

「心肺停止又は脳死いづれか」と「心肺停の場合のみ」のどちらかが選択できます、また提供したくない臓器を指定しておくことも可能です。

 本人の意志があったとしても、ご家族の反対があれば移植は行われませんので意思決定は事前に身近なご家族へ伝えておく必要があります。

 骨髄・末梢血幹細胞は骨髄バンクへの登録が必要となり、適合者がある場合提供の要請があります。

 肝臓の生体移植は、日本移植学会では、民法上の親族の範囲である、6親等以内の血族、3親等以内の姻族(配偶者ならびに配偶者の3親等以内)の範囲内で選択することを倫理指針として原則としています。

臓器移植に関する我が国の考え方

 臓器移植の考え方は国や地域、宗教観によってさまざまで温度差があります。

 日本における臓器移植は、他の先進国に比べてあまり活発ではありません。この状況にはいくつかの要因が影響していると考えられます。

倫理面
我が国では、脳死を「死」であると受け入れ難いと感じる傾向が強く、脳死者の臓器提供の低さが影響していると思われます。

宗教・文化的な要素
日本人は、多くの宗教や文化において、死後の身体はそのままの形で残すべきという考え方が一般的です。また、祖先崇拝が根付いているため、身体を「守る」ことから臓器提供には抵抗感が強い傾向があります。

法的な手続き
法的整備は新しく、1997年に初めて脳死を認める臓器移植法が制定されました。その適用は限定されています。その後、法改正が行われた2010年以降も、まだ多くの制限が存在し、手続きが複雑であるという問題もあります。

医療制度
臓器移植を行うための専門の医療機関や医師が不足しているとも言われています。

 また、医療者自身が臓器移植に対する知識や意識が低い場合があり、これが積極的な臓器移植の推進に繋がっていない可能性もあります。

社会的な認識・啓発活動の不
 日本では、上記内容から、十分な啓発活動や教育プログラムが行われていないことも、臓器提供が広まらない一因です。

 メディアや教育機関での問題の必要性や安全性、法的な側面についての発信が弱く、理解が広まっていない可能性があります。

臓器移植の国内の実績と世界の考え方

 世界の臓器提供数を人口100万人あたりの臓器提供者数として世界の国々と比較すると、アメリカは44.5、スペインは46.3、イギリス21.9、フランス24.7、ドイツ10.3、韓国7.9これに対して日本は僅か0.88と圧倒的に少ないのがわかります。(日本臓器移植ネットワークHPより)

 もう少し詳しく、わかりやすい数字だと、日本の1年間の臓器提供者は100人前後、対してアメリカでは14,000人もいるのです。

オプトアウト制度とオプトイン制度

 オプトアウト制度とは、ドナーとならない意志表示を重視した制度です。自身はドナーとならないと宣言することでドナー対象から外れることはできますが、その意志表明がなければ、ドナーとなる意志があるとみなす制度です。

 上記の国で言えば、スペイン・フランス・イギリスがオプトアウト制度をとっております。

 他にも、ベルギー、オーストリア、ポルトガル、ノルウェー、フィンランド、スウェーデン、イタリア、オランダ、などがこの制度を採用しており、これらの国ではドナーとなる人の比率は多く、活発に移植が行われています。

 一方で、オプトイン制度は。ドナーとなる意志表示を尊重する制度で、意思表示をしない限りドナー対象となりません。

 一般的には、オプトイン制度ではドナー数は少なくなるケースが多いのですが、アメリカが突出しているのは国内における啓蒙活動と教育が活発であり、社会的な認識が高く臓器のドナーシップが浸透しているからと言えます。

 これにより、アメリカの医療システムは、臓器移植のプロセスや手続きに関して、非常に高度に発展しており、ドナーの意思が正しく尊重されるような体制が整っています。

 これらの課題や文化的な背景が、アメリカでの臓器ドナーとしての登録率や意識の高い現状に役立っていると考えられます。

ドナーとなる結論をいそがなくても、考える機会を作る

 自分自身が角膜の提供を受ける可能性があるために、関心を持った臓器移植の実態ですが国内と世界の温度差がこれほどあるとは思いませんでした。

 生き方やアイデンティティに関わる問題ですから、必ずしもドナー宣言は必要ないでしょう。むしろ色々なことを知った上で、ドナーにはならないという宣言をするのも道です。

 しかし、こういった命の問題を知らずに判断をしないのではなく、知った上で判断をする、還暦を過ぎたおとなの責任感ではないのかな、なんて思うのです。


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