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銭湯と刺青(2):マル暴の刑事に教わった対処法

「入れ墨お断り」の看板を掲げていても、確信犯的に入場される方もおられます。そういった場合施設はどういった対応をするのでしょうか?


対応方法は施設によって違うと思いますが、僕が嘗て運営に携わっていた施設では、必ず本人にお声がけをしていました。

「申し訳ございません、当店では入れ墨、タトウーを入れておられる方のご入浴はお断りしておりますので、ご協力お願いします。」

色々と試行錯誤をして、このセールストークを統一して使うようにしていました。この言葉で、もめ事になることは、ほとんどありませんでした。


大切なことは、発見したら恐れずに必ず声をかけることです。

彼らは、施設のルールを解って入浴しています。その目的が、排除の方針に難癖つけて、脅すこと、でないかぎり、その言葉を聴いてくれます。

ただし、従うかどうか、即実行かどうか、は人によります。

でも、”ここは見逃しなしか”と認識してもらうことが目的です。声がけをしたり、しなかったりでは ”前は認めてたじゃねーか”という解釈を与えてしまいます。

声を掛けるのは、慣れです、マニュアル化して場数を踏めばアルバイトの学生でも、パートのおばちゃんでも、違和感なく行動できるようになります。


刺青お断りはお願いです


とは言え、マニュアル化して、スタッフ全員が声をかけるようになるまでには色々と失敗もありました。


1号店を立ち上げた当時は、僕も鼻息が荒く、注意をして摘み出す!くらいの強気の姿勢でいました。

 「返金するので、今すぐ出て行ってください」

 「ルールですので、警察に通報させて頂きますよ」
 
10分おきに、浴室に行って、威圧したり、内心はビビりまくっているのに、舐められたら癖になる、なんて思っていましたから、こんな態度をとっていたのです。

当然、トラブります

「社長を出せや」
「お前の家で話を聞くから住所教えろ」
「何時まで、おるんや迎えにきたるわ」
「人を差別するんか、何があかんのか説明せえや」
「おお、ほなら仲間呼ぶから、何があかんのか全員に説明せえ」

彼らは、プロです、投げかけられた言葉に答えると、揚げ足を取られます。

窮地に落ちいっていると、お客さんの通報で警官が駆けつけるということもありました。

施設の安心感を守ろうとして、片意地張って、これでは逆効果です。

四課の刑事さんのアドバイス

地域の防犯協会に入り、定期的に地元警察の、生活安全課にも顔を出していました。

入れ墨対策で相談をしていると、4課(暴力団担当)の刑事さんを紹介してもらいました。

”彼らは、漢(おとこ)や、面子を大切にする生き物や、それを傷つけられることを嫌がりよる。そこんとこは理解しといたらなあかんですな”

”全身に(入れ墨)入っとる奴は、全員筋もんですよ、漢の証みたいなもんですな。でないと、金も痛みも時間もかかるのに割が合わん。それを軽く見たら怒りよりますな”

この人の背中にも立派なものが入っているのではないかと思われる風貌で、耳の折れた、首と肩が一体となったようなずんぐり体型の刑事さんの言葉で学びました。

 「注意じゃなくて、お願いだな」

ここは堅気の人か集まる場所で、あなたの気合は怖いんですよ!という気持ちで接するべきだと。

”まあ、何かあったら私の名前を出してください。この辺んのモンは皆私の名前は知とりますさかい、牽制にはなるでしょう”


差し出された名刺を受けとり、警察署を後にしました。

それ以来、その刑事さんの名前も名刺も出すことなく、営業を続ける事ができました。

徹底した声がけで、業界系の入れ墨の方を見かけることははとんどなくなりました。

めでたし、めでたし・・・・・?(つづく 汗)





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