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編集を志さなかった人に

(異業種で入塾するかを迷っている人の為に)


昔、本屋で『数学を志す人に』岡潔(著)という本を見かけ、あまりのタイトルに立ち読みを始めた事があった。自分がこの歳になって数学者になりたい、と思うことはない。日本全国でも数学を志す人はごく僅かだろう。このタイトルで売り出そうとした編集者の思いや、この本の中にある自分に全く縁のない世界を見てみたい、と軽い気持ちで手にとったけれど、しまいにはレジへと運んでいた。

この塾での自分は完全に異端者だった。ここまで一番遠くから来ていたのも自分だった。それでも自分の知らない世界に触れられるのは気持ちが良かった。そのうえ、この塾の講師は一流なのだ。とはいえ、異業種から参加する、更にはプレゼンもするとなると敷居は高い。大抵の生徒は、広告代理店、出版関係者、文系の学生などである。他の人のプレゼン資料を見てもらえば更に壁を感じられるだろう。パワーポイントの使い方も知らない僕は、当初文字だけの汚いプレゼン資料を提出し、何度もボツを食らうこととなったけれど、ある日プレゼンする機会を与えられた。理由は他の人と切り口が被っていない事だった。業種が異なれば考え方も違う。プレゼン発表にもバランスがあり、同様の物が続くよりは、たとえ拙くとも毛色の違う方が望ましい。お門違いのつむじ曲がりには向いている。元より業種も違うのに参加しようと思うくらいなのだから。

忙しさが参加を見送る一番大きな言い訳に成るだろうけれど、何かをした時は常に忙しかったはずだ。忙しくなくても、どうせたいした事はしないのだから参加して忙しくなる事を奨める。自分ではやれない事も、締め切りがあればなんとかなる。仕事はサボってでも行くくらいの要領がなければ、何事も上手くはいかない。そうやって一年乗り越えると、不思議と自分なりの編集というものがわかるようになっている。ここには子供騙しの迎合はないし、悪ければ悪いと言われるけれど、どれも至極真っ当なものだった。

苦労は買ってでもしろ、という。忙しくてどうしようもないけれど充実している、そんな時の高揚感が味わえるはず。本、雑誌、映画、音楽、広告、ファッション、写真、思想、報道、デザイン。全ての分野の一流の講師陣の下、好きな人には堪らない時間がある。ここまで書いても殆どの人はどうせ参加しないだろうけれど、どこかにいるかもしれないたった一人の為にここに記しておきたい。


やってみようよ。


第4期生 木田



(以下、参考資料としてプレゼンのスライド資料と簡単な説明)

みんなが上手にできた資料のみを公開しているようだけれど、僕にそんなものはないので思い入れのある幾つかを。出来の悪いものも敢えて載せるので、こんなものでも大丈夫なんだ、と思ってもらえれば。

年表の企画

直感的に全体の流れが把握できる物を。との指示が付いていたが、実力不足で全くそんなものができなかった。それでもなんとか提出したプレゼン資料。発表できたのは明らかに自分だけしかこういった切り口で資料を作らなかったからだと思う。ちなみに講評は「自分の知らないものもあって面白かったけど、課題の求めるところと違うよね。」だった。確かに。


年賀状の企画

思いつきは冴えてたな、と思えたプレゼン。形にする中で呆けていってしまったけれど。


文春の企画

課題は好きだった文春への個人的な思い入れを前面に出したプレゼン。クスッと笑ってもらえた、との事だったのでそれで満足です。


朝日新聞の企画

「朝日新聞のリソース(コンテンツ・世界各国日本全国の取材網・宅配システムなど)を利用し、マネタイズできる新しいメディア(もしくはメディアビジネス)を企画してください。」といった注意のある課題だったけれど、それらを無視して作ってしまったプレゼン、ややあざとさに過ぎたか。


とらやの企画

羊羹に関する課題だったが、考え出すとどんどんお茶について考えている自分がいた。とっちらかったままの資料を提出したら、意外に喜んでもらえた物です。


パワーポイントの資料が下手くそでも、課題の内容と多少はズレていても、面白い事、人と違う事が大事かな。異端であれ。あと企画に愛があると尚よし。

以上、同期生や講師の方に励まされるところも多く、充実した一年が過ごせました。ありがとうございました。

 木田

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