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♡3 愛の苦しみ

既にこのスートに苦しめられている。記号の通り愛や恋やのテーマがメインになるんだろうと覚悟したけど、愛にまみれすぎて3回目にて挫けそうになっている。(もうヒビ入ってる)

会いたくて会いたくて震えたことも「あなたのこと私は今でも思ってるから」と雲ひとつない夜空に浮かぶ一番星を眺め一筋の涙を光らせた事もない私がこんなに愛について語っていいのか申し訳なくなるよ。

たまにはハードボイルドな愛について語ってもいいですかね。ここで味変しないと私自身が愛に呑まれて自我を落としちゃいそう。

今回のテーマは愛の苦しみ。……苦しむほどの愛ってなんだろう。
単純に、恋するあの人を思い焦がれて
「今何してるかな‥‥」
「LINEの返事返ってこない」
「インスタとTwitter浮上してるのに無視されてる…!?」
「推しが卒業発表したどうしようもう生きてけない(熱愛報道出た)」
といった王道恋愛ソングに沿ったような歯がゆく甘酸っぱいものが連想されるのでしょうが(それが普通です)でも大体一方的。

それも恋愛の醍醐味だし、アプローチの一種だってわかる。でもアブノーマルがステータスになってしまった人間としては、もう少し捻くれたものを嗜みたいのです。

というわけで、今回は「命が果てる瞬間も一緒」という愛の苦しみを選んだ一組のカップルの話でもしましょう。


「アメリカの狂犬たち」と彼らは呼ばれた。女の名はボニー・パーカー、男の名はクライド・バロウ。彼らは世界恐慌と禁酒法により世間が鬱屈としていた1930年代前半に名を轟かせた伝説の犯罪者カップルだ。
活動地は主にアメリカ南西部で行われ、犯した罪は強盗、殺人。

ここまで読んで何人かはピンとくるかもしれない。歌の比喩に使われたり、映画の題材になるくらい後世にも名が伝わっているのだから。

なぜ超弩級の犯罪者達が風俗的な象徴として、世代を超えて知られる存在になったのか。
それは彼らが抑えきれなかった魔力とそれを嘲るかのように渦巻いた世界の氾濫が共鳴したからにすぎない。それはもう絶望が目を背けてしまうほど。

まず今回の主役である狂犬たちの紹介を軽くしよう。

1人めの狂犬、ボニー・パーカーは父親の死がきっかけで祖母の家があるダラス近郊にあるセメントシティという治安の悪い地域にて育つ。
優秀だが暴れると手がつけられなくなる二面性があり、16歳の時に高校の同級生と結婚するも、相手が銀行強盗容疑で刑務所に入れられ離婚を考える。しかし婚姻関係は生涯続いた。
ボニーはクライドに「危険な香り」を感じて一目惚れした。

葉巻を吸いポーズを決めるボニー。
もう目線からキマってる。


もう1人の狂犬、クライド・バロウは貧しい農家の子だった。兄弟も多く、姉が親変わりに育てるも親戚に預けられることもしばしば。その反動か、日常的に動物虐待をしたりと粗暴だった。
学校もサボるのが常で、ある程度の年齢になった頃、当然のように兄が所属していたギャングの仲間入りをした。

愛車のフォードV8と武器とクライド
最高の加速力だったため警察車両を振り切るのにもってこいだったらしい。
フォード社の社長に感謝の手紙を送ったとか送ってないとか。

ボニーとクライドは見事に凹凸がはまった関係だ。
彼らの犯行手口を読んでも、クライドが店に入り金銭を奪い、ボニーが外で待機してフォードV8で逃げるという犯行手口は、互いの信頼と連携が合致しないと成り立たない。

彼らは組織として、チームとしての愛を火力に奔走するロケット団やドロンボー一味とは違う。この2人は、人生そのものと本能で愛し合った。希望から絶望、それこそ骨の真髄、髄液の最後の一滴まで相手に託す勢いだ。

結論から言うと、彼らの最期は悲惨だった。
1934年5月23日、ルイジアナ州ビャンヴィル郡アーケディアの寂れた道路をフォードV8で走行中、彼らの情報を掴み待ち伏せていた警官6名から短機関銃で150発以上の連射を受けた。彼らは車体を貫通した80発余りの銃弾を浴び死亡。

もし蜂の巣の銃撃戦から命からがらに逃げ出しすことに成功したとしても、彼らの最後の会話は「俺の事はいい、お前だけでも生き延びてくれ!!」じゃなく「俺ァもうだめだ。お前も地獄へ来い」って瀕死の状態で互いのこめかみに銃口を突きつけ合いそうだな。守る守られるじゃなくて背中と命を託す関係。

その応えは「言われなくてもそうする」だったら最高にクール。
彼らの生き様のまとめとか見てももう、愛するのも憎むのもお前(あなた)だけ感がビンビンに漂ってくる。

世界的に閉鎖された時代に、多方面からこさえた情報と、くすねたフォードV8、機関銃、そして持ち前の頭脳と果敢さと獰猛さをエネルギーにして自国史に巨大な傷を刻み、呪いとも言える愛を使い果たした狂犬たちの存在を忘れることはないだろう。

1週間くらい前に新宿のボニーとクライドについての記事を読んだ。近いうちにその話も聞きに行こうっと。

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