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〈読書メモ〉これはただの夏/燃え殻

〈あらすじ〉

その瞬間、手にしたかったものが、目の前を駆け抜けていったような気がした。

「普通がいちばん」「普通の大人になりなさい」と親に言われながら、周囲にあわせることや子どもが苦手で、なんとなく独身のまま、テレビ制作会社の仕事に忙殺されながら生きてきてしまった「ボク」。取引先の披露宴で知り合った女性と語り合い、唯一、まともにつきあえるテレビ局のディレクターにステージ4の末期癌が見つかる。 そして、マンションのエントランスで別冊マーガレットを独り読んでいた小学生の明菜と会話を交わすうち、ひょんなことから面倒をみることに。ボクだけでなく、ボクのまわりの人たちもまた何者かになれず、何者かになることを強要されていたのかもしれない……。

〈感想〉

夏休みを無条件にもらえてた頃は退屈だった。長期間休みがあってもお金は増えないし行きたい所は親の同伴か車がないと叶わなかった。大学生になったら/大人になったら好きなところへ好きな人と行ってやると呟いていた。

大人になった。電車通勤をしているため毎日学生を目にする。いつも一杯の電車がガランとしていると学生たちは長期休みに入った事に気がつく。彼等はどこへ行くのだろう、誰と会ってどんな話で盛り上がるのだろう。些細なことで一喜一憂できるあの時代を羨んでいた。

この本は夏の楽しさを置きわすれたひとりの男と、夏の輝きを名残惜しく思う風俗嬢、夏と人生を達観視する10歳の少女の青春の1ページが書かれている。

男と少女は同じマンションに暮らすご近所さんで、ひょんなとこから話す仲になりモスバーガーへ一緒に行くようになり、次第に風俗嬢の女も含めて3人で夏を過ごした。ご飯を食べ、市民プールで泳ぎ、遊び疲れたらコンビニでアイスを買い頬張る。親戚でも友達でもない1人と1人と1人が出合い、線香花火のように儚く、だけど何にも代えられないかけがえのない一瞬をそれぞれの記憶に刻んでいた。

あーあ、私も今年こそは夜中にコンビニ行ってアイス買って公園で頬張ろうかな。大人の青春をしてやろうっと。

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