見出し画像

多機能性がパーマカルチャー 緑肥


<多機能性がパーマカルチャー 緑肥>

「自然農を理解しているかどうかは通路を見れば分かる!」
主に緑肥はイネ科とマメ科の植物を利用するわけだが、通路にはイネ科植物の方が適している。では、マメ科植物は使わないのか?というと、やはり使う。

畝の中央に野菜を植えて、その間にコンパニオンプランツとして枝豆やインゲンなどの青い豆で食べるものを植えることで面白いことが起きる。

マメ科植物は根っこでチッソ固定菌と共生して、茎葉の主成分であるチッソ(化合物)をたくさん蓄えてくれる。イネ科植物はC4植物といって他の植物よりも効率的に光合成を行い、エネルギー源である炭素(化合物または糖)を蓄える。こうしてお互いが得意な分野で溜め込んだ栄養素を、なんと菌根菌が物々交換を行ってくれるのだ。つまり、マメ科が溜め込んだチッソをイネ科に渡し大きな茎葉を伸ばし、さらに光合成を進める。イネ科が溜め込んだ炭素(糖)をマメ科に渡し、その糖を窒素固定菌に渡して、効率的にチッソを獲得する。

こうして単独で植えるよりも、近くに植えるとお互いの成長率を高め合う。その物々交換をする菌根菌は90%以上の植物の根に棲みつき、共生関係を結ぶことが分かっている。つまり、畝の中央に植えたメインの野菜とも共生しているというわけだ。

自然農とは「生物多様性農法」だと常々言っているのだが、生物多様性はただあるだけでは意味がない。つながってこそ多様性の真価が発揮する。その繋がりの役目を果たすのが「菌根菌ネットワークを利用した物々交換システム」である。こうして菌根菌は目に見えないところで通路と畝をつなぎ、共存共栄をしっかりと支えてくれる。

「間を大切にするのが日本文化」と書いたが、これは決して精神性の話だけではない。私たちの足元で実際に起きている生物多様性の奇跡である。自然農は植物が持っている個性を、自然の摂理を利用しているだけなのだ。

「このマメ科の混植は緑肥ではないのでは?」と思うかもしれないが
緑肥というのは基本的に間作の技術であり、漉き込むことが多い。しかし、私は緑肥をコンパニオンプランツとしても利用する。

これはパーマカルチャーの原則の一つ「多機能性」である。

イネ科は緑肥としての役割の他に、通路の土を耕し排水性を良くする。
茎葉は草マルチとしても、益虫の住処としても、分解されれば追肥の役目も果たす。マメ科は緑肥としての役割の他に、益虫のアリを呼び込み、食料にもなり、通路と畝の野菜を結びつける。

イネ科は人間が踏みつけるたびに、土中の根を増やす。マメ科は人間がマメや野菜を食べる間に、チッソを固定し続ける。

化成肥料は遠い国で大地を掘りこし、多大なエネルギーを使って作り、運ばれてくる。緑肥はそれを自分の畑だけでやってしまう技術なのだ。
小さな循環システムをデザインすれば、持続可能性は一気に高まる。

こうして人間は特に何か特別なことをする必要がなくなる。することと言えば、彼らを理解し尊重して種を蒔き、信じることだ。種を播いてしまえば、あとは太陽と空気と雨がすべてを賄ってくれる。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?