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耕起と耕耘 不耕起は耕す


<耕起と耕耘 不耕起は耕す>

春の語源が「大地を墾る(はる)」や「木の芽が張る」「万物が発る」など言われているように、昔から春に田畑を耕すこと行われていたようだ。

「耕す」という言葉はもともと「田返す」と呼んでいて、田畑の土を掘り返す意味だった。農という字も上は田が変化して曲、下の字は耕すための貝殻(大蛤)の意味。甲骨文字では上の字が「林」や「森」を意味する字で、大蛤がついた木の道具で森林を開墾したことを意味している。

現在でも春先に行われる「耕起」は土の中に空気を入れて好気性微生物の活動を活発化させて、地温をあげる目的がある。また畑でも雑草を除草し、空気の通りを良くして排水性を高めることで作物が育つ環境と整えるために行う。すべてはその作物のためだった。耕起では20~30cm程度まで深く耕すため、中耕や深耕とも呼ぶ。

植物が利用する土中内のチッソは空気の少ない環境になると脱窒菌によって空気中に放出される。脱窒菌は酸素呼吸の代わりに硝酸態窒素を利用して呼吸する。空気が豊富なら彼らの出番はない。だから、農家はよく耕す。これもまた植物のためである。

不耕起栽培とはもともとは土壌を過度に耕すことをやめて、作物の残渣を漉き込むのではなく、マルチに使うことを意味している。耕すことで失われやすい炭素を腐食として残す。
ラッタン・ラル博士は「作物そのものの持つ雑草忌避物質アレロパシーや作物残渣の表土被覆による雑草防除を理想」としていた。まさに自然農の実践そのものである。

そに対して耕耘の「耘」という字は貝殻で「田(畑)の草をとる」ことを意味する。田畑を耕して除草することが目的であり、耕起とは微妙に違う。たいてい土の表面5~10cm程度を耕すことから浅耕とも呼ぶ。ときに季節や作物に応じて10~20cmほど耕す中耕をすることもある。

自然農を始める人が陥る誤解はここにある。「不耕起」とは「耕さない」ことではなく地温を上げることを目的とした「耕起」をしないことであり、草を取り除きタネを蒔いたり定植するために「耕耘」はする。

またはじめて畑にするところや慣行栽培から有機栽培、自然栽培、自然農に切り替えるときには耕すことが有効だ。なぜなら重機の重みや肥料(堆肥)、農薬の影響で土自体がキツく締めつけられていて空気が少なくなっていることが多いからだ。女性でも剣先スコップを片足で突き刺しても30cmほど深く刺さらない場合ははじめに耕した方が良い。

もし、トラクターなどが入るのなら雑草を細かく刈って一緒に耕して土中内に漉き込む。これは土中に有機物を増やすことと空気を混ぜて微生物の活性化を促すことが目的である。ただし耕し過ぎてしまうと団粒構想の土は破壊されていってしまうので、土作りをしていく過程で耕耘も最低限に抑える必要がある。耕起に関しては必要な場合は最初に一度だけで、土作りができれば基本的にすることはない。

不耕起栽培が注目を浴びたのは画一化された大企業主導の農業技術のアンチテーゼからだった。かといって、ワンパターンになってしまっては名前だけが一人歩きして、自分の畑の状態に応じて使い分けることができなくなってしまう。大切なことは自分の畑の状態を見極めて、耕すかどうかを決めることだ。川口由一は「耕すな」とは言っていない。自然農の「不耕起」という原則は耕起を最小限に抑え、肥料や農薬による環境負荷を最小限にすることを意味している。

<耕すことのメリット>
生きている雑草を減らす。
空気が入って微生物が活性化し、地温がアップする
土が軟らかくなり、作業がしやすくなる
通気性と浸水性が改善され根が張りやすくなる
有機物や肥料が均一になる

<耕すことのデメリット>
重機の場合、耕盤層が形成される
過度の耕起で団粒構造の土が破壊される
風食や水食が受けやすくなる

~今後のスケジュール~

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