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<5月の生き物 ツバメ>


<5月の生き物 ツバメ>
ゴールデンウィークの日本の風景といえば、
田舎出身の都会人が家族揃って、生まれ故郷へ帰るために
荷物をたくさん抱えて、列をなして新幹線や車に乗りこむ姿だろうか。
JRバス(国鉄バス)のシンボルマークはツバメだ・

そして、一時的に人口が増えた里山では
これまた一家総出で田植えが行われるのが日本の風景でもある。

賑やかになった古民家の軒下には必ずツバメが巣を作り、
親ツバメが子ツバメにエサを運ぶたびに、
子ツバメがギャーギャーと騒ぎ立てる様子を飽きることなく眺めていた
少年時代の思い出を持つ人はまだ多いのではないだろうか。

ツバメは冬をフィリピンやマレーシア付近で過ごし、
日本に春一番が何度か吹き、桜が咲く頃にやってくる。

ツバメは田んぼや家周辺に落ちている藁くずや泥を集めて立派な建築物をこしらえる。
素材は人間にとってゴミどころか、そこにあることに気づかないようなものだ。
ツバメは家を作っているだけなのに、里山の美観に貢献している。
そのデザイン性は機能性にも優れる。
誰もが困る排泄物をみごとに巣の外へと排出する仕組みを備えている。

家にツバメが巣を作ることは昔から縁起が良いことと考えられている。
その理由はツバメは「鬼門に巣を作らないから」「子供をたくさん作るから」
そして、「害虫をたくさん食べてくれるから」。

親鳥たちは2匹で1日に6000匹もの虫を雛に贈り続ける。
その虫たちはハエや蚊など、人間の感染症の病原菌を媒介する虫たちだ。

5月頭の田植えから梅雨、台風シーズンまでの日本は
ジメジメした環境になり、害虫にとって繁殖しやすい環境になる。
その虫たちをせっせと捕まえてくれるのだ。

ツバメは1度に5~6匹、1シーズンに2回産卵することもある。
まるでそのためにたくさん卵を産み、隊員を増やしているかのようだ。

7月ごろに巣立ちを終えると、集団となって河川敷やため池、休耕田などの葦などが茂っているところで生活を続ける。
しかし、近年は河川敷の整備や休耕田の再開発などによって生活の場が失われている。
40年以上前と比べて、約半分まで個体数を減らしたというデータもある。
2000年以降、関東を中心に減少種としてレッドリストにも載るようになってしまった。

台風も来なくなり涼しくなった初秋には
約数千キロメートル離れたフィリピンやマレーシア付近に静かに旅立つ。
あの大人の手のひらにすっぽり乗ってしまうほどの大きさしかない生き物が
生まれて数ヶ月でその旅路に出ると思うと、胸が熱くなる。

しかし、ツバメの生存率は非常に低く、平均寿命は1年半ほどと言われている。
ツバメは毎年帰ってきているように思えるが、数はあまり変わらないという。

日本には現在6種類のツバメが繁殖している。
ツバメの巣を観察するとその違いは明らかで、
よく目にする子ツバメが顔を出すあの可愛らしいデザインはツバメ。
このツバメは日本全国にいる。

とっくりのようなひょろ長い出入り口のデザインはコシアカツバメ。
コシアカツバメは西日本に多い。

他に岩場に巣を作るイワツバメ。
北海道全域に住むショウドウツバメ。
琉球地域に住むリュウキュウツバメ。
そして、1967年に初めて静岡県で生息が確認されたヒメアマツバメ。
それぞれに羽が体の色が違い、鳴き方が違い、飛びかたが違う。

もしかしたら、今年は新しいツバメが日本にやってきているかも。
少し変わったツバメがいたら、観察してみてくださいね。

ツバメは巣を撤去したりしない、穏やかな性格の人が住む家に巣を作ると言われている。
面白いことに一般の住宅と同じくらいの比率で小さな商店に巣を作るという。
それは人の出入りが多いためだと考えられている。
なぜなら、天敵となる蛇やカラスなどから身を守るため。
そのために「商売繁盛の証」としてツバメの巣が歓迎されている。

そして、ツバメはその住民のためにパトロールしているのかもしれない。

近年、ゴールデンウィークに帰省する人も減った。
田植えが数人でもできるように機械の開発が進んだことと、
都会生まれ都会育ちの人が増えたことだろう。

それでもツバメは今年も来年も再来年もやってくる。

あなたの家にもツバメが巣を作ってくれるような工夫をしてみてはどうだろうか???

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