言語聴覚士は食べる機能を改善することが仕事。しかし…。

お疲れ様です。伊藤零一です。
言語聴覚士は高次脳機能障害に対するリハビリ、構音障害に対するリハビリ、摂食機能障害に対するリハビリ…と、様々なリハビリを行っております。
ただし、勘違いしないで欲しいのです。私達は、「機能」を改善するために尽力します。
ですが…。
食べたくなる「意欲」については改善することは難しいのです。

家族やドクターの前では「食べる」と言う患者様、しかし。

患者様は、食事を目の前にすると食べないんだよなぁ…(遠い目)
「食べると言っていたのに、なんで食べないのか」とドクターに聞かれます。
「私の前では、はっきり食べないと言ってましたよ」と伝えても、ドクターには伝わりません。ドクターの前で、患者様は食べると言う傾向にあるのです(何故かは分かりませんが…)。
大体、食べないと元気にならないよ。とか、どうして食べないの?とドクターに聞かれ…NOと言いにくいのは人の性かもしれませんが。

お陰様で、たまーに私がやる気がないから食べたくなくなるんじゃないか?と思われる事があります。たまーにですよ。たまーに。
私は無理強いはしません。無理強いして誤嚥したら何も意味がありませんから。
大体拒否をする患者様は、嚥下機能がギリギリだったりすることが多いので…。無理に口に入れて誤嚥して、誰が責任を取るのかって話ですよね。

新人さんにも、無理強いはさせないよう教えています(教えたつもり)。本当は食べて欲しいです。どうしても食べて欲しいのですが、大体良い方向にはいきません。歩行訓練に例えるなら、歩きたくないのに「ほら歩いて!」と無理矢理立たせて歩かせようとしているのと一緒です。
大体、転びますよね(;'∀')

食事に関しては、無理強いするのが普通だと思われている所があります。食べないと、栄養が取れなくて最悪亡くなる可能性もあるからです。

でも、私は言いたい。無理強いするくらいなら、他の栄養手段を考えようと。歩けない人に無理して歩かせるわけではなく、車いすを使ったりU字歩行器を使ったり…。代替手段を使うのが筋なのではないか。と考えて欲しいのです。

とは言っても難しい気持ちになるのは分かります。
口から食べられない=口を使わない栄養確保の手段は患者様自身に対して痛い思いを強いる(点滴、NGチューブ、胃瘻、TPNやPICC等)ものなので…。慎重になるのは当然の事。

ただ、分かって欲しいのです。

無理に食べさせる事が、決して良い事ではない事を。

新人さんや、新人STに伝えたい事。

小難しく書きますが、認知症の患者様で食べれそうだけど食べない。嚥下評価があまり出来ず、摂食可能かどうかの判断が出来ない人で、かつご家族様が「あとは高カロリーの栄養等を使わず、自然の流れで」という方針であった場合。
今目の前にいる患者様の状態が、一番栄養がある状態で、一番状態の良い時だと言うことを肝に銘じておいて下さい。そして、身体機能が徐々に落ちていく中で、我々STは食べさせる機能を改善しなければいけないのです。

…至難の業、いえ。
はっきり言いましょう。
9割以上の患者様が、そこから改善して食べるという事は無理です。

最近は栄養を入れないと選択される方が増えました。言語聴覚士には厳しい時代だな、と思います。
かと言って、じゃあ栄養入れたら絶対に食べられるようになるかと言われたら…それも難しいのです。そんな単純なものでもありませんので…。

自分達が手を尽くしても、救えない命があることを、知っておいて欲しいなと思います。

それを踏まえた上で、認知症の患者様で食べないと本人が言い続ける限り…無理強いしても、しなくても。いずれ弱っていってしまうんだなと覚悟して関わりましょう。
今一瞬食べたとしても、ずっと食べるかどうかは未知数。一度上手くいったからと言って、ずっと上手くいく人達ではありません。
でも、もしかしたら食べてくれるかもしれない…その一瞬、瞬間に患者様が喜んでくれる事を想いながら摂食リハビリをしてくれたなら、先輩STとしてこれほど嬉しいことはありません。

報われない事が多いのですが、その分報われた時に嬉しい気持ちはとても強いです。

皆さんも、患者様を喜ばせられる選択肢が取れるように。今後も関わっていけたらと思いますm(__)m

結論:認知症患者様のリハビリは辛いよ。

私と同じような状態のSTさんがどれだけ居るのかはわかりません。特殊かもしれませんし…慢性期病院のリハビリはまた勝手が違うのかもしれませんので。
苦労されているSTの皆さん、お疲れ様です(;^ω^)よう頑張ってますわ。

これからも、「食べたくない!リハビリやりたくない!」と言ってくる患者様のために、頑張っていきましょう!(;'∀')ハハハ

それでは、また。

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