見出し画像

僕たちがSpes(スペース)を創ろうと思ったワケ ─ 資金調達の裏側/卸売をするメーカー企業など、国内200万社以上の受発注・在庫管理の課題を解決したい。

2022年1月に、元々経営していた株式会社アイディール社で開発を進めてきたSaaS事業を分社化しSpes社を設立すると共に、2月にオープンベータ版としてローンチし、気がつけばあっという間に4ヶ月近くが経過していました。

国内取引だけでも。海外との取引にも。企業の受発注、入出庫、在庫管理を行える多機能クラウドソフト「Spes(スペース)」

この4ヶ月、ありがたいことにほぼ何も告知していないし、まだまだ足りない機能だらけなんだけど、身近な会社さんを中心に、面識のない会社も含めて気がつけば30社を超える企業がテストユーザーとしてPoCフェーズを一緒に歩んでいただけています。

今回プレ・シードラウンドの資金調達も終え、ようやく「とりあえずは本番です」とは言えるくらいの状態になってきたので、改めて何故僕たちがこんなプロダクトを創ったのか、その背景とか想いとか、今後どうしていこうとか、せっかくなので資金調達の裏側だとか、それを元にして「これから資金調達を考えている若手起業家」たちに伝えたいことなど、ここでまとめて発表しておきたいなと思って人生で始めてのnoteへの投稿をすることにしました。
少しでも皆さんの参考になれば嬉しいなと思ってます。

※合計7,354文字。10分くらいのお時間ください。


初期のPMF検証をぶっ飛ばせるような背景

Spes(スペース)は簡単に言うと受発注・入出庫・在庫管理などをクラウド環境で実現できるソフトウェアです。

冒頭で述べた通り、SaaS事業を独立分社化する形で世に放たれました。

その大元に当たる会社(株式会社アイディール)は日本の美容化粧品・健康食品・美容機器・アパレルなどの製品を海外にプロモーションして、BtoBを中心に卸売りするという、いわゆる貿易事業を行っていました(会社も現存しています)

貿易事業そのものは2013年頃から始めており、開始当初は多くの中小企業がそうであるように、エクセルを用いて受注管理や在庫管理を行っていたのですが、それはこんな感じの流れでした。

  1. 営業スタッフが受注を取ったら請求書をエクセルで発行。

  2. 次に、受注管理用のエクセル管理表を立ち上げて内容を入力。

  3. また別の在庫管理用のエクセル管理表を立ち上げて、在庫数を入力する…

※今ならスプレッドシートかもしれませんが、これは2014~2015年頃のお話…


いずれにしても、正直こんな管理方法取ってたら…

  • 受注管理表に入力漏れして、実際の入金額との差が出てくる。

  • 在庫管理表に入力漏れして、現在の在庫数がよく分からない。

  • あれ、これって発注しないと送れなくない?

  • そういえばあの受注って商品送ったっけ?

みたいなことが多発するワケです。この辺りは容易にご想像いただけると思います。


そしてある日、いい加減このままだとどうしようもないと一念発起して社内管理用のソフトウェアを開発することにしました。
「営業担当が見積もり書を出して、その案件が決まったら、そのまま請求書も出せて在庫も自動的に引かれて、なんなら必要に応じて発注勝手に行われて、発送指示が出せるようなもの」を作らないといけないんだなーと考えていたのを思い出します。

これが2015年の冬。そこから半年ほどかけてローンチ。
当時は他社に使ってもらうようなことは一切考えずに開発を始めました。

ちなみに当時自分たちにフィットした受発注・入出庫・在庫管理がオールインワンで使えて、しかも海外対応していて、中小企業が導入できるコスト感のソフトウェアを探して結局見つからなかったので、身近な会社に良い方法を聞いてみてもどこもエクセルで管理している所ばかりで、ある意味では仕方なく社内の管理システムとして「Spesの種」は産声を上げることになったワケです。

社内の管理システムに過ぎなかったSpes(当時はそんな名前も付いていませんでしたが)の事業化については2019年頃から本格的に検討が始まったのですが、結局は自分たちが率先して(というか仕方なしに)PoCを行い、気付けば初期のPMF検証が自動的に行われてきました。

この頃から積み上がった仮説が、今まさに「皆さんもこういう所に悩んでいませんか?」というアクションに繋がっています。


どんな事業モデルにするかを検討してきた背景

このように自らのペインが元に産まれてきたプロダクトだったため、卸売をしているような中小企業は同じ悩みを抱えている、ということは分かっていたのですが、次に悩んだのは「どんな事業モデルにしたら良いんだろう」ということでした。

セオリーで言えば、サブスクリプション(月額課金)。
どんなSaaSの書籍を読んでも、SaaSたるもの固定なのか従量なのかはさておき、とにかく定期(月額)で費用を貰え、そして退会が起こらないように利用率や満足度を高めていけ。とあります。

ただ、僕の体験の中から、とあるプラットフォームでECサイトをやった時の苦い思い出がフツフツと湧いてきました。


遡ること10年(近く)前…

新規事業を模索してコンテンツやメディアやECなど、色々なことにチャレンジしていた頃「女性向けファッションEC(セレクトショップ型)をやりたい」というスタッフ主導の元、某ECプラットフォームに出店したのですが、まだ収益も出ていないタイミングにも関わらず、基本パッケージの中だけでは商品データベースの容量が足らず、売上なんてまったく作れないのに、追加コストだけがどんどん上がっていくという状況が起こりました。

結果として赤字が続き、経営への圧迫が大きく、たったの1年半で撤退するという苦い経験になりました(まぁ、その手の失敗は他にもたくさんあるんですけどね!笑。でもまだまだ打席に立ち続けます!)

現在では無料で始められるECプラットフォームも増えましたので、戦略も幅広く検討できる時代になっていると思いますが、少なくともその頃は、サブスクリプション型のオンラインサービスは中小企業にとって、本当に厳しい条件のものが結構あるなぁということを思うようになりました。


それと、実際に社内で契約しているクラウドソフト多すぎ問題もありませんか?

メッセンジャーはあれとこれ。タイムカードやワークフロー、スケジューラーや営業管理ツール。それに受発注管理ソフトや在庫管理ソフト。
こういう時代なので、どれか1ツールというケースはむしろかなり少ないのではないかと思います。

これって、ぶっちゃけ現場の従業員の子たちからしたら評判良くないですよね。これ以上増やさないでくれ、と。

このような背景が組み合わさって、Spesの事業モデルの根幹としては「多機能オールインワン型であること」「無料であること」で世の中を変えられるのではないかと想像するようになりました。

実際に日本国内で(簡単な想像の範囲で)在庫管理を必要としている企業数は製造業+卸売業+小売企業を合わせて200万社あります。

しかし在庫管理ソフト(WMS)の市場規模は、デロイト トーマツ ミック経済研究所の調査ではTMS(物流管理ソフト)と合わせても2019年はたったの200億円弱だと試算されています。

これって要するにニーズはあるはずなのに、お金を出している市場規模がむちゃくちゃ小さいんですよね。

そんなにみんなお金を出さないなら(エクセルや手書き)、自分たちの在庫管理ソフトを無料で提供してあげたら喜ばれないかな。最終的にはこれが根源にある発想になりました。


企業の目的はPLの最大化

これは恐らく疑いようのない事実であると思います。
SpesがBtoBサービスである以上、やはり利用企業のPLの最大化に寄与できるものでありたいなと思っています。


「P」を伸ばす

ために、「多機能オールインワン型であること」で大幅に業務改善を行うことができて、企業に営業活動を行う時間を作ってあげられること。

「L」を減らす

ために、前出の「無料であること」に繋がってきます。

では、肝心のマネタイズは?という所で言うと、「P」を伸ばすために手間や時間(=コスト)を削減することで売上を伸ばすという発想なので、元々企業側が「面倒だと思うこと」「自社で出来ないこと」を巻き取ることで、そこを収益にしていこうと考えました。


例えばモノを扱っている企業では日々受発注が行われていますが、中小企業界隈ではメールだったり、FAXだったり、メッセンジャーだったり、場合によっては担当者に電話がかかってきて「あれ、10個入れといて~」みたいな感じでそもそも会社によってバラバラの受発注スタイルで日常業務が行われていることがほとんどです。

これを誰かが必ず社内の在庫管理表もしくはシステムに入力しているのですが、それ専属のスタッフを置いているケースもあります。

こういった細かいペインを束にして、それぞれを楽にしてあげられる(解決できる)ようなサービスを収益源にしていく予定になっています。


どういうお客様に使ってもらいたいか

どうしても「在庫の一元管理」と言うと、業界的には複数ECプラットフォームの受注や在庫をまとめる。というイメージが強かったりします。

もちろんそれはそれでSpesでも出来ることなのですが、実はこの「受注管理システムの領域」は結構レッドオーシャンだったりします。

後発のSpesは当然この領域で戦うつもりはなく、どちらかというと「卸売を基本」としていて「新たにECを始める」とか、たまに「海外との取引」をしているというような中小企業様を一番にイメージしています。

※例えば実店舗(小売店、サロンなど)への卸売をしているメーカー企業様とか。

それはまさにSpesを産むきっかけになった会社が

(「卸売」+「EC」)「海外」

という商売をしていたからに他ならないです。

なので、実はSpesには海外への対応機能が色々とあったりします。
無償サービスとして裾野を広げてあげたいということや、プロダクトの強みになっている機能面は、全て1つのストーリーで繋がっているワケです。


でも…、無料って本当はもっと可能性あるなと思ってる部分もありますね。

例えばあまりコストを掛けたくない分野として、社内の資材管理だったり、通常ルーチンに乗らない在庫(例えば、仕入れ在庫が中心の中にある、預かり在庫、など)だけを管理するとか…

この辺りは皆様のアイデア次第じゃないかな、と思ったりもしています。


資金調達の背景

前出の「複数ECプラットフォームの受注/在庫統合」に対して、どこのソフトを選ぶかというと、どれだけ多くのECプラットフォームと自動連携(API連携)しているか。という点に尽きると思います。

これは当然古くから各社とサービス連携してきたソフトにはかなわないし、そもそも前述の通りSpesが見ている所って少し違うので、まずは自分たちが使って欲しいと思うお客様に向けてよりフィットしていくように機能やサービスを作り上げていくことが大事だと思っています。

とは言え、いつまでも(本来は自動化できる所)まで手間がかかっていたらダメなので、当然パラレルで開発を走らせておく必要があるワケですよね。
となると自前のお財布だけだとやっぱり厳しい。ということになってきて、そのスピードを上げるために資金調達をしていくことになりました。

ちょっとリアルな話をさせて貰うと、大元の貿易会社の方で人件費も合わせると分社化時点まででSpesの開発には大体6,000万円ほど投下しており、いける所まで何とかしたい気持ちもありましたが、貿易事業は2019年から起こった新型コロナの影響を相当に受け、どうしても最終形と呼べるまで何億かかかるプロダクトにこれ以上予算を割ききれないという状況になったことも1つの要因ではありました。


結論から言うと、冒頭でリンクを貼ったプレ・シードの資金調達については、軽いお声掛けや継続協議中の先も含めてしまうと、約50社(名)にアプローチもしくはプレゼンして、5社(名)から投資をしていただきました。
この確率をどう見るか…笑

NGだった理由をちょっとだけ(生々しい!笑)

  • WMS(クラウド在庫管理ソフト)は時流じゃない。

  • 開発は内製体制を持っていないとダメ。

  • マネタイズの解像度が低く、イメージが沸かない。

  • なぜ無料なのか分からない。

  • ニーズがあるのか不明。

  • CSコストと、有償化率がうまくバランスする確信が持てなかった。

  • ファンドとして期待するリターンが見込めるか見極められなかった。

  • 今、新たなファンド組み直してる真っ最中やね~ん。

などなど…。
ほんの一部ですが、どうですか?笑
ここはこっそり皆様のご意見を聞いてみたい所です。笑

確かに、実際の導入実績を元に、後になってから色々なことがより見えるようになったことも多々ありますので、プレゼンの時期によってはその辺りをうまくご説明しきれてないケースもあります。

ただ、やはり事業会社系(CVCなど)は中小企業がどこも同じような課題を持っていることに「リアリティのある想像」を持って話が進められる一方で、VCさんはあくまで◎◎%の企業が平均◎◎時間の損失を出していて、この導入の結果、平均◎◎円の効果があった。そして市場規模がこれだけあるので◎◎%の導入率で将来これだけの収益になっていく、という論理性がむちゃくちゃ求められることがよく分かりました。

自分たちが感じてきたペインが元になっているプロダクトの場合って、どちらかというと「この課題感って当たり前だよね」という感覚値が元になっていることが多いと思うのですが、これはその業界をリアルに感じられていないVCさんと感覚共有出来ることは、まずありません。

Spesの場合はすでに多少のプロモーションや導入実例やPMF検証などによって数字で語れる部分が出てきていますが、これからプロダクトで起業したい若手たちはこの辺りはすごく意識しておくと良いと思います。


これから資金調達を考えている若手に伝えたいこと

例外はありますが、資本政策もセオリーを大事にしないといけないということは覚えておいて欲しいことです。

Spesの場合は、今回のラウンドはエンジェル~シードの間くらいの感じだったと思うのですが、その割にプロダクトとしては物凄くしっかりしたものが出来ていたと思います(何しろ6,000万円かけましたからね!)
それでもこのラウンドのセオリー以上のバリュエーションを提示するのはとても難しいということです。

オンラインサービスとしてのプロダクトはシードでバリュエーションは1~3億円。Spesほど開発費を投下していても、しっかりしたものがあってもそこは大きくは変わらない(ことが多い)
それを意識しておくと、どこまで作り込んで持ち込むか、という指標にもなると思います。

大昔に友人(同世代だけど経営者としては大先輩)に、「資本政策はスポーツみたいに経験則だから早くから何度もやっているやつの方がうまい(だからコバ、俺がやってやるよ、という文脈の話)」と言われて当時は「??」だったのですが(笑)、今なら本当によく分かります。


なので、若手起業家を目指すヒト達へのメモとして…

  • 原体験は本当に大事。自分の想いを語れるように。

  • 兼務でも良いので「内製」だと言える開発環境作り。

  • 最終形のプロダクトになるまでにいくら必要なのかを試算する(改修の連続性は必要だし実際にプロダクトにゴールはないかもしれないけれど、あなたが思うプロダクトの最終形っていくらかけて、いつ出来るの?)

  • 収益モデルの解像度を上げるために「なんとなくこういう方向で稼ぎます」ということではなく、その蓋然性をきちんと数値で語れるまで導入候補の相手にヒアリングしてまとめておく(値決めについても論理を元に)

  • 資本政策は経験者に必ず見てもらうこと。


それからA社からは「ここがダメ」と言われても、B社からは「そこが良い」と真反対のことを言われることも本当にたくさんあります。
結局上のメモについては打率を高めるために大事なことに過ぎなくて、それより大事なことは「たくさん動く」ことだと思います。

自分たち的には「分かってないなぁ~」と思う理由で断れるとちょっとムカつく所もありますけどね(笑)
でもそれはまだプロダクトや数字で圧倒的に語ることが出来ていない自分たちの責任でもあります。

1つや2つ「NO」と言われたからと言って、自分が信じたプロダクトを諦めずにたくさん動いてみて欲しいなと思います。

もちろん背景にはCFOの中川がいてくれたことがめちゃくちゃ大きかったこともありますが、僕ですら、第一歩目なのにあんな数の方々と話してきましたよ。笑

諦めずに頑張っていきましょう!


最後に

大きくは2つあって、

1つは、今回の資金調達の背景などについて自分が感じたことを書きましたが、当然会社によっては「いや、ウチは(自分は)こうやって判断しているよ」とか、実際に資金調達が決まる時は「シンプルにこの社長を応援したい」とか、とにかく実態は例外だらけなのも事実です。

きっとそれぞれの正解があるかなと思いますので、Spes社は、小林はそうだったんだなと暖かく見守ってください。


それともう1つは、宣伝です。笑

もしかしたらこのnoteを読んだ方の中にはD2Cなど「モノ」を扱うビジネスを始める(始めている)方もいるかもしれません。

きっとECの管理画面かスプレッドシートで在庫管理してますよね。笑

この辺りを始めるのは、困ってからやるよりも最初から始めておいた方が絶対に良いです。しかもSpesは無料で使えるしね。起業間近だからこそ使って貰いたい。

とは言え、もしかしたら「こっちの方が良いよ」というのもあるかもしれないので、在庫管理周りについて、個人的にもフラットにガンガン相談に乗ります。

会社の方でもいいですし、TwitterのDMでも、お気軽にご連絡ください。




ということで、最後までお読みいただき本当にありがとうございます。

国内取引だけでも。海外との取引にも。企業の受発注、入出庫、在庫管理を丸ごと解決する完全無償クラウド型在庫管理ソフト「Spes(スペース)」を今後もよろしくお願いします!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?