sumika「ファンファーレ/春夏秋冬Release Tour @ZeepTokyo」感想

なんで今になってこの『ファンファーレ/春夏秋冬』Release Tourという遥か前の感想文をnoteにあげたかというと、理由が二点ほどありまして。


一つ目が少し前にフォロワーさんと「人様には見せられないけどライブの備忘録は書いてる」という会話になって、そういえば音楽文(ライブの感想や音源に対しての考察を文章にして投稿できたロッキン運営のウェブサイト。今はサービス終了してる)に私投稿してたな…それってどこかに保存してあったっけ…?と思い付いたのがきっかけです。

たしかべぼべで一つ、sumikaでこれ含めて二つほど投稿した記憶があるんですけど探しても残ってたのがこれしかなく…もったいないことしたなぁ…


二つ目が前述に繋がるんですけど、読み返してたらその時のことを鮮明に思い出してきて、やっぱり自分が書いた文章は自分にとって一番分かりやすくて読んでて楽しかったんですよ。

それがまたデータどっかいったみたいなことになったら悲しいので、どこかに残しておいてもいいなと思ったからです。


今、『Ten to Ten』『Ten to Ten to 10』『sumika映画』の殴り書き書きかけの感想文が眠っていて、折角だから今回のをあげてもいいな~と思ったのであげました。

そして今回のを皮切りにちゃんと三つとも書き直していつかあげられたらいいなと思ってます…志は低いですけど。


ちなみにこれは当時音楽文に投稿したのとはちょっと変えていて、気持ちコンパクトになってると思います、たしか。

あとこれを書いてたのは学生の私なので今より格段にレポート力と語彙力と表現力があります。すごいな過去の自分(自画自賛)


まぁこんなことあったな~という軽い気持ちで読んで頂けると嬉しいです。

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私は今回の『ファンファーレ/春夏秋冬』Release Tourはありがたい事に仙台・名古屋初日に行かせて頂いた。そして幸運な事に外れまくって諦めていた東京公演初日に私の友人が誘ってくれて行ける事になった。しかも1番前のブロックで。

今から書き記すのはその日の事についてだ。記憶が曖昧で彼らの言葉に若干の違いがあるかもしれないが、そこは多めに見て欲しい。


グッズを身に纏い、今か今かと待ちわびたライブはほぼ定刻通りに始まった。会場を流れるBGMがひときわ大きくなり、突如照明が全て消えた。一気に会場は拍手に包まれるが彼らお決まりのSEは流れない。不思議に思っていると暗闇から颯爽とメンバーが現れ、マイクの前に立った片岡健太が奏で出した。



 夜を越えて 闇を抜けて 迎えにゆこう

 光る朝も 雨も虹も 今から全て迎えにゆくよ



『ファンファーレ』、このツアーのタイトルの1つでもあり、劇場版アニメ『君の膵臓をたべたい』の為に一年かけて作ったsumikaの大切な曲だ。

片岡健太の力強い歌声と気持ち良いカッティングの音色から始まり、センターに当たっていたスポットライトがステージ全体を照らす光へと変わると疾走感溢れる音がZeep Tokyo中に走った。

それはまさに「初期衝動」そのもので鳥肌が立ち、始まりから泣きそうになってしまった。


曲名通りの弾けるようなメロディの『ソーダ』、「これが江戸の音楽」と私達と煽り共に楽しむ『1.2.3..4.5.6』、「体を自由に揺らして!」とハンドマイクになった片岡健太がステージを縦横無尽に歩き回り、私達と一緒に腕を振る姿が楽しげだった『KOKYU』

盛り上がりの定番『ふっかつのじゅもん』にまさかの選曲に驚きながら拳を突き上げた『チェスターコパーポット』と序盤から攻めに攻めた流れは楽しさに身を委ねるしかなかった。



「仙台、札幌…蝦夷、名古屋ときてホームタウン東京、江戸…いやお前神奈川県民だろって顔された方いますよね。家からは一番近いから…もう言ってもいいかな。ただいま!!!」



と大きく腕を広げる姿にお帰りー!と声が掛かる。逆にただいまと言えば「お帰りなさい」と返してくれる。


「ホームタウン東京、一番信頼してます」と声を張り上げ小川貴之の色鮮やかな鍵盤が響き渡りサビの手拍子が綺麗に揃った『フィクション』、「一番信頼してる東京だから、4年振りの曲をやってもいいですか?」とサポートベース井嶋啓介の跳ねる重低音から始まった『MY NAME IS』はまたもやハンドマイクになった片岡健太が自らも飛び跳ねながら歌い、私達が飛び跳ねると無邪気な笑顔を見せていた。


「あわよくば、僕を、好きになっちゃえば、いいのに」そう囁き黒田隼之介の淡いギターの音色から始まる『いいのに』

さっきとは打って変わって穏やかでどこか甘い雰囲気を纏った片岡健太がお立ち台に座り最前の子の瞳を見つめて歌う姿は曲の良さを更に際立たせていた。


MCではお客さんに問いかけつつ、メンバー紹介をしていくという礼儀正しくもお茶目で仲の良さが伝わってくる彼らそのものでほっこりしながら聞いていた。一通り話がまとまり次の曲と言った時、ポジションセンターの彼がこんな事を言い出した。



「次の曲なんですけど、2曲で意見が分かれて。メンバーも2対2、スタッフもほぼ半分に分かれてしまったんです。
僕達殴り合いとかするタイプじゃないし民主主義なので、今から曲名言うので皆さんに決めてもらいたいと思ってます!」



予想外の提案にフロアが揺れ動く中、提示された曲は『グライダースライダー』『sara』。曲名を発表され更にフロアはざわつき、聴きたい方に拍手をして音量の大きい方を採用する、そう言われてる最中でも私の頭の中はぐらぐら揺れていた。どちらも大好きな曲で1分あったかどうか定かではない中で決めるのは困難を極めたが、何とか決めて力いっぱい手を叩いた。


「会議しまーす」とメンバーとスタッフ陣で話し合ってる時でも、あの曲が聴きたいけどもう片方でも…とまだぐらぐらしていた。

「なんか良いねこういうの、民主主義最高」と楽しそうに呟きながらギターを構え、会場は緊張感を含んだ静寂に包まれる。スッと息を吸った彼の口から紡がれた言葉、



さらば青い心の少年よ 黒に染まる心すら愛おしい

こんな僕が出来上がってしまったな

どうすればどうすれば どうすればいいか解らずに1人歩いている



『sara』、約2年振りとその後教えてくれたこの曲に歓声が上がる。恐らく『グライダースライダー』でも会場は盛り上がっただろうし嬉しかったと思うが、自分が選んだ曲が聴けるというのは感動もひとしおで胸が苦しくなったし、感傷的に歌う表情には更に苦しくなった。



「大切な人ぐらいは大切にしたい。大切だからこそ傷付いてマイナスな事も言って。どうでもいい人は適当に優しくすればいいけど、大切な人ぐらいは。そういう思いで作った曲を今から歌います。前半戦飛ばしてきたからここからは少し落ち着いて聴いて下さい」



そう話し先程とは違った柔らかい静寂が訪れる。暗闇に2つの光が灯り鍵盤の繊細な旋律と一層深みを増した歌声が響き渡る『溶けた体温、蕩けた魔法』

アレンジされた曲に会場は凛とした雰囲気を纏い、その余韻で片岡健太に当てられた光だけになり奏でられたのは『春夏秋冬』
このツアーのもう1つのタイトルでもあり『君の膵臓をたべたい』のエンディングの為に何度も何度も書き直し彼らの思い入れが強い曲だ。切ないのに、だんだんと温かみを含む空気に包まれていくその光景は堪らず涙が溢れていた。


魅了された拍手が会場全体に満たされると、楽器隊によるセッションが始まった。荒井智之によるどっしりとしたドラムと井嶋啓介の唸るようなベース、そこに小川貴之の妖しい鍵盤が誘ってくる。

次の展開を期待させるメロディから聴こえてきたのは、『MAGIC』。その歌詞通り先程とは一変した明るく色彩豊かな曲に会場はたちまち熱気を持つ。そのまま『Lovers』へと進み、幸福感で溢れる曲達にメンバーもフロアも笑顔でいっぱいになった。



「もうすでに最高なんですけど、もっと最高にするために皆さんの力を借りてもいいですか!」



片岡健太の煽りでフロアは掲げたタオルで埋め尽くされる。「無い人は心のタオルを振り回せ!」と自身が持っていたタオルを放り投げ、掛け声と共にタオルが舞い出す『マイリッチサマーブルース』
「こんなにタオル出してたんだ…綺麗だなぁ」と曲中に呟いてしまう程会場は色彩豊かなタオルで埋め尽くされ、一体感を増す。

そのボルテージのまま『ペルソナ・プロムナード』へと雪崩れ込み盛り上がりが最高潮に達す。

ステージが暗転し片岡健太がマイクの前に立つ。まるで会場の熱気が落ち着くのを確認するかのように口をつぐんだ彼から紡がれた言葉にMCかと思った私は驚きで固まる。



 君の音を聴かせてよ それだけでいいんだよ はぐれた心を繋いでよ

 君の音を聴かせてよ 涙滲んだ水色の音は 聴きたくないから



『リグレット』、まさかの曲にフロアに動揺と歓喜の声が走る。個人的にはずっと、ずっと聴きたかった曲であり切ない歌声と寂しげながらも温かみがある音色に私は聞き惚れるしかなかった。

楽しい、片岡健太が口から溢した言葉は演奏中に何度も表情で伝わってきたが言葉にするほど、思わず呟いてしまうほど、本当に楽しいのだと感じた。



「僕の大切なメンバーやスタッフは大切にしたい、けどその両親や親友まで大切に出来る程僕は大層な人間じゃないから出来ない。世界が平和になるとかそんな大きな事は祈れない。
ただ、目の前のあなたを大切にすることしか出来ない。だから、この今を記憶して、あなたの大切な人に伝えてくれたら嬉しいと思います」

「伝えたいという五文字に乗せて、『伝言歌』という曲を」



本編ラストを締め括るは片岡健太が18歳の頃から歌い続けているというsumikaの代名詞とも言える曲、『伝言歌』

ステージの端まで走ってギターを掻き鳴らしマイクを傾け1人1人と向き合うように歌う姿は「ステージもフロアも関係ない。あなたの声が必要なんだ!」と話していた事を現しているようだった。



「一瞬で世界を変えられるなんて、幻想だって言われる。そんな事ないって教えて」



叫びに近い声、その瞬間会場が1つになる。「伝えたい」という五文字に乗せて、大きな声で歌う。その声に、その想いに、片岡健太はこう力強く言った。



「見たか」



誰に向かって放ったのかは分からない。しかしその時私は心で、体で感じていた、音楽で世界は一瞬で変われる事を。涙腺が緩みそうなのを必死に堪え、伝えきった。

興奮と熱気の中、本編が終わりメンバーが舞台袖に消え暗転しても拍手は鳴り止まない。会場の期待が上がっていくのを感じ取りながら気持ちを込めて拍手をしていれば、再びステージは明るく照らされる。

嬉しそうに笑いながら出てきたメンバーはアンコール1曲目『アイデンティティ』を奏で始めた。腕を振り上げ息を合わせて声を上げる一体感は今までのどれよりも気持ちが良かった。

「改めてアンコールありがとうございます」と深々と頭を下げ、片岡健太はさっきの続きというように話し出した。
その言葉が印象的で、この人は何故こんなにも優しい言葉を紡げるのか、何故こんなに人の心に刺さる事を言えるのかと聞きながら泣きそうになった。



「ここから出ていっても、扉を開けて待っています。泥だらけになっても、傷だらけになっても、僕らは貴あなたを大切にします。だから、安心して戦ってきて下さい。どんなに傷ついても、僕達はここにオレンジの光を灯してあなたの帰りを待っています。
だから、いってらっしゃい」



片岡健太が優しく手を上げるとオレンジの光と温かい音色が会場全体を包む。本当の最後を飾るのは『オレンジ』

柔らかい歌声に心は温かくなり、皆で声を合わせ手を振りながら涙が零れてしまいそうだった。



「出逢ってくれて、ありがとう。sumikaでした」



片岡健太のその言葉と共にメンバーは深々と頭を下げる。フロアは彼らに感謝を伝えるかのように熱量を含んだ大きく温かい拍手を送る。

あぁ、終わってしまったんだ、と寂しさを感じていると顔を上げたメンバー、特にポジションセンターの彼は清々しい表情の中にも涙を堪えているように見え気持ちは同じなんだと悟った。

サポートベース井嶋啓介を再度紹介、そしてステージギリギリまで立ちメンバー同士で手を繋ぎ大きく跳び跳ねるなど最後まで感謝と楽しさを全面に出し、ステージを去る本当の最後、またも深々とお辞儀をした片岡健太の姿でライブは終了した。

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