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何度読んでも泣いてしまう小説

江國香織さんの短編集「つめたいよるに」の中に、「デューク」という小説がある。子犬の時から一緒に育った愛犬を亡くしてしまったオンナノコの話。初めて読んだのは、確か20年以上前のことだと思う。

デュークの死を受け止めきれず、悲しくて涙が止まらない中、仕方なくバイト先に向かう途中で、オンナノコはハンサムなオトコノコと出逢う。結局バイトは休むことにして一緒に時間を過ごすうち、少しづつ元気を取り戻していく彼女。そしてオトコノコはデュークそっくりのキスをして「僕も、とっても愛していたよ」という言葉を残し去っていく。たったそれだけの物語。

短い小説なのに、今も時々読み返したくなるし、そのたびに鼻の奥がツンとして涙がでそうになる。特に気持ちが弱くなっている時は、本当に泣いてしまう。2月に子犬を迎えて3か月が過ぎて、日々成長していく姿をみていたら、また読みたくなってしまった。

元気いっぱい好奇心MAXの我が家のパピーは始終あらゆるいたずらをするし、言うことを聞かなかったりトイレを失敗したり。今やすっかりワンコ中心の生活だ。毎朝5時起きで眠い。けれど、不思議とココロは穏やかだ。

シゴトでうまくいかないことがあった日も、帰宅すれば喜びを全身で表現して迎えてくれる。失敗を思い出してぼんやりしていると、じっと見つめてくれていることに気付く。ずるずるいつまでも悩むことが減り、うまく気持ちの切り替えができるようになったみたいだ。

ずっと昔。犬を飼い始めた会社の先輩が言っていた。
「本当にかわいいんだよ。でも犬は人間より早く年を取るから、こいつはオレより先に逝っちゃうんだなあと思うと、寂しくて寂しくて。」

子犬を迎えたばかりなのに気が早すぎるんじゃないの、とその時は思ったけれど、先輩の気持ちが今は分かる。我が家の子犬はまだ生後5か月なのに、シニア犬になったら気を付けること、なんてネット記事を真剣に読んでしまうのだから。

小説の中で、少年が残したコトバ。
「僕も、とっても愛していたよ。これまで、ずっと楽しかったよ。」

この文章を打ちながら、やっぱり泣きそうになっているワタシ。今から、ワンコ友達にたくさん会える公園に、お散歩にでかけます。


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