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シン握りで握りずしはシン化するのだ。

 「料理通信」という伝説の雑誌をご存じだろうか。

 世界各地の食のトレンドを発信しつつも、同時に国内のお店におけるトレンドやその調理法、はたまた伝統やチャレンジをきらびやかに伝え、お店を持っているもしくは持ちたいという料理人から、とにかく食べることが三度の飯より好きという矛盾を抱えたグルメにまで幅広く愛された雑誌である。

 あと、星占いが予想の斜め上をいく雑誌としても一部で人気を博していた。

(自分の記事で恐縮ですが一度ご覧あれ)

  伝説の、と書いているのは、この料理通信、雑誌として刊行は現在お休みしている(あえてお休みと書く)のである。雑誌業界の休刊はこの数年でいろんなところで聞いたけれど「まさかお前まで・・・!」となったのは言うまでもない。
  けれどもそんな多くの涙に応えるように、料理通信は今、舞台をWeb上に移し、日々世界と日本の料理について、熱く激しく美しく情報発信しているのだった。刊行頻度という縛りから解き放たれた分、こっちの方が「通信」としての力は上がっているのかもしれない。

で。
その料理通信が先日新年プレゼントキャンペーンを行った。

 ただでさえ日頃から「こ、この料理は一体・・・!」「すげぇぜ、トレンドがまぶしすぎて見えない・・・!」というようなセンスのよさを発している料理通信である。
 当然ながらプレゼントの内容も「俺の住んでる料理の世界と違う…」と言うようなハイセンスなものばかりだった。友達に一人欲しいよね、こういう「どこでそう言うの知ったの?」っていうセンスの友達。

で。僕はその中からいくつかのプレゼントを候補に選び、アンケートに答えて送信。

その結果、なんと

開けたらおじいさんになってしまいそうないでたち

鮨が当たった。

 一人前約12000円のお寿司、一貫換算で約1000円というのもびっくりなのだけれど、この「シン握り」、鮨心さんが開発・販売している、冷凍のお寿司なのである。

 僕は今現在、実家だった福岡を離れ、関西のとある内陸県に住んでいる。
「波の音が俺の子守歌替わりさ…」というような海の男的生活は営んでなかったけれど、やっぱり福岡にいた時と、内陸に移動してからの違いの一つは「魚のおいしさの違いだなぁ」と思ったりする。

 もちろん内陸であっても頑張っているお店はすごい美味しい魚を食べさせてくれるし、そもそも僕は普通のスーパーの握りずしでも全然幸せになれる人間だ。

内陸のスーパーで売ってる握りずしってこんな感じ。北寄貝が美味しかったです。

 けれどこの冷凍寿司は、「スーパーの鮨で幸せになる」「頑張ってるお店に行って幸せになる」という既存の幸せ選択肢に、第三の幸せ選択肢を与えてくれる存在だったのである。

 ではさっそく箱を開けて食べてみる…と行きたいところなのだけれど、このままだと冷凍ご飯を食べているのと変わらない。

箱の中身はこんな感じ。この時点でかなりテンション上がりました

 箱の中にはお皿(プラだけどすごい立派)に並んだお寿司たち「そのまま食べれるみたいだろ…冷凍してるんだぜ、そいつ」と双子の誰かが言いそうなくらい綺麗な状態で冷凍されている。

 説明書を見ると、実はこの状態でぴっちりとフィルムが貼ってあるので、それをまずははがしてくれと書いてある。

確かにフィルムが覆ってますね

 美味く剥がせなかったらどうしよう…マグロが真っ二つになったらどうしよう!と思いつつフィルムをはがしていくのだけれど、案外簡単にはがれていく。凸凹としているお寿司だけれど、そこら辺も工夫して作ってくれているのかもしれない

こんな感じでするするとはがれていく

そして、フィルムが全部剥がれたら、それを今度はふわっと鮨全体にかけて、そのまま3時間ほど室内で自然解凍。

じらしてくる鮨たち

 すぐそこに美味い鮨があるのに食べれない…!というジレンマだけでビールが一本飲めそうだけれど、そこは心を鬼にして待つこと三時間。

本当にさっきまで冷凍されてました君たち?

うううう美味そうなすしだぁ!!!

職場のパソコンの壁紙にしたい

 古今東西の海鮮への賛辞に「宝石箱やぁ~~」的なフレーズがある。使い古された言葉ではあるけれど、確かにこれは宝石だ。ネックレスにしててもいいくらい。

 あれもこれも撮らなくちゃと思ったら写真のピントがどこに合わせたかわからなくなってしまった。きっと乃木坂グループのカメラマンとかこんな気持ちなんだろうなぁ。

 では、いよいよ実食。

ちなみにお品書きはこんな感じ。手書きのメニューってテンション上がりますよね
順番とかよくわからないので好きなのから行きました(赤貝)

 まず感じるのは爆発的なうま味なのですが、シャリがとにかくうまい。よくご飯は冷凍保存するのですが、例えば自分で冷凍した酢飯を自然解凍したからって、これほどふわっと、だけど味がしっかりとあるシャリに変身するとは思えない。

 そしてシャリに載っているそれぞれのネタの、自然なうまさ。解凍したからって水っぽくなることも、しわしわになることもなく、目の前で粋な職人さんが「はい!」と握ってくれたかのようなふんわりとした食感が味わえます。えー、すごいなこの技術・・・。本当にこれは、握りずしを更に一歩前に進めたシン握りだわ…

 一人前を妻とドラフト会議しつつぺろりと完食。一つのネタごとに感動が味わえる、本当に美味しい鮨でした…これを書いてる今思い出しても溜息出ちゃう。

 ちょっと前までの料理のムーブメントの一つって、「料理の中に科学を持ち込む」って感じだったと思うんです。あの伝説のエル・ブジに代表されるような、真空調理だったり、エスプーマだったり、アルギン酸だったり。料理と言う一つの大きな枠の中に、科学もいれちまえ!それで新しい料理作っちゃえ!みたいな。
 科学を使って、ゼロから新しい料理の「1」を見つける、そんな感じがここ最近の料理の一つのブームとして確かにあったと思うんです。。

 でもこのシン握りは、料理は料理で完成させて、そこに完成された科学を足す、1+1=2の料理なんだなと思います。すごい!美味しいもの食べるとこんなことまで考えられちゃう!DHAも豊富なんだね!

 でもこれ本当すごいですよね、冷凍で、しかも解凍も自然解凍でいいなら、全国どこでも美味しい鮨が食べられるじゃないですか。
 ハレの日とかもそうなんですけど、例えば施設に入った祖父祖母に、たまには美味しい鮨を…という時とかに、これはすごく便利な気がします。

 もちろん、今はなかなか手の出る値段ではないのですが(言っておくと、美味しい寿司食べてるという意味でこれはもちろん納得の価格です)、これが安定してたくさん作れるような時代がこれから訪れたら、もう少し手軽に手に入るようにも、バリエーションも増えていくのではないでしょうか。

 こんな素敵なプレゼントに当選させてくださった料理通信さん、そして鮨心さん、本当に素敵な体験をありがとうございました…!

 ちなみに今月27日まで料理通信さん今度はチョコのプレゼント企画を行ってるみたいなんで、美味しいチョコが食べたい人は是非応募してみてはいかがでしょう。私も応募します!(鼻息荒く) 

サポートでより凝った料理記事などが書けます。よろしくお願いします!