中国

世界“危険地帯”街歩き 中国編  ~ウイグル大弾圧~ Part.1

全てが監視される街・カシュガル

 中国・新疆ウイグル自治区最西の街、カシュガル。今、この人口60万人ほどの小さな街に世界中の注目が集まっている。中国政府が、ここに暮らすウイグル族などの少数民族の信条や言論を弾圧し、逆らう者は強制収容所に収監するという、民族浄化政策を行っているというのだ。国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチの調査によると、既に100万人もの人々が捕えられている。
 11月下旬、成田空港から飛行機を乗り継ぐこと24時間。既に零度を下回る、この監獄の都に降り立った。

【ウイグル族市場前の膨大な監視カメラ】

 カシュガルの空港に到着した矢先、待ってましたとばかりに地元の警官に呼び止められる。事前にパスポート情報が共有され、顔も把握されているのだ。外国人の入国を警戒していることが分かる。目的は何か、いつ帰るのか、宿泊場所はどこか―。ただの観光目的だとしばらく説明すると、ようやく解放された。
 カシュガルの中心部までタクシーで向かうと、すぐに異様な雰囲気に気づく。街中のあらゆる場所で、警官による検問が行われている。市場、スーパーマーケット、地下道への入り口、そしてウイグル族の住居街の入り口。金属探知機のゲートを潜らされ、荷物をくまなくチェックされ、IDカードの提出を求められる。この検問を受けるのは、幼い子ども以外の全てのウイグル族だ。ウイグル族というだけで、この執拗な検査を毎日何度も、繰り返し受けることになる。道路では銃剣を手にした武装警官が歩き回り周囲をにらんでいる。頭上では、無数のカメラがあらゆる方向を向いて、人々の一挙一動を監視している。

【ウイグル族住居街に建てられた検問所。こうした場所が街中にある】

お互いを監視し合う社会

 ウイグル族を見張っているのは、警官だけではない。道路では「群防群治」(=「自己防衛」を意味する、中国政府が組織した活動を示す言葉だ)と書かれたゼッケンを身につけた人たちを大勢見かける。彼らはウイグル族の一般市民だ。治安の管理を名目に、ウイグル族同士でお互いを見張り合う状況を強いられている。

 正午、街中にサイレンが鳴り響くと、商店街の店先から、数名の男女がバラバラと駆け出してくるのが見えた。皆、長さ1mほどの棍棒を持っている。30名ほどが歩道に集まると、警官の号令のもと、威勢の良い掛け声と共に、棍棒で相手を攻撃するための「型」の練習が始まった。よく見ると、大通りを挟んだ反対側でも行われている。30分ほど練習が続いた後、急いで戻った女性の店に入ると、レジ後方のよく見える位置に、その棍棒と、先端に鋭い牙がついた鉄の棒が置かれていた。こうした市民同士の警備体制は徹底されており、高齢者がトボトボと歩きながら街を見回っている様子も目にする。ある時は見張り側に、ある時には見張られる側になる。こうした近しい間柄同士での監視を強要されることで、警官が把握しづらい日常生活の隅々まで監視の目が行き届くことになる。

【ウイグル族同士の男女が集められ、歩道で棍棒の使い方を練習している】

 こうした徹底的な監視体制を敷く、中国政府の狙いは何なのか。人民解放軍がウイグル自治区の最大都市、ウルムチに入城し、広大なウイグル自治区が中国に併合されたのが69年前。ウイグル自治区は、日本の国土の4倍以上もの面積を持ち、中国の6分の1を占める広大な土地だ。中国政府が進める、巨大経済圏「一帯一路」構想において、ヨーロッパと中国を繋ぐための要の土地となる。さらに最近では、大量の石油や天然ガスが地下に眠っているとも言われている。
 ここに古くから住むウイグル族は、中国の多数民族である漢族とは全く異なる文化を持っている。彼らの大多数はイスラム教徒だ。そのためかつて、中国から独立を求める運動も行われてきた。しかし、中国政府にとってこの広大な土地の独立は決して認められない。この独立を目指す人々(=中国政府曰く、危険な過激派)を取り締まるという名目が、こうした監視体制が敷かれる理由のひとつになっている。

【伝統的なウイグル族の住居街に掲げられた中国国旗】

 しかし今、さらに深刻な弾圧の状況が、次々に報告され始めている。既におよそ100万人ものウイグル人や少数民族が、強制収容所に連行されたというのだ。この施設を、中国政府は「過激主義の影響を受けた人の再教育施設」だと発表している。一体、中では何が行われているのか。


Part.2へ続きます
https://note.mu/spipugdogg0625/n/n458e98ddabc9


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