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ひかりもの

他人が怖くて仕方がない。自意識過剰と分かっていても、他人の目が気になって仕方がない。大きな不安に押しつぶされそうだ。


エッセイの骨組みに、フィクションで肉付けしたような。

エッセイでもあり、フィクションでもある。

そんな話。


----------------------------------------------疲れきった身体でふらふら歩く家までの帰り道。パッと目に入ったコンビニ。暗い夜道に、どこか人工的で真昼のような明るさをもたらしていた。まるで誘蛾灯に引き寄せられる蛾のように吸い寄せられた。



自動ドアがすっと開く。あまりの明るさに目が眩む。


まず最初に飛び込んできたのは店員さんの顔。女性、そんなに年齢は変わらない気がする。でも怖い。人が怖い。睨まれたら、嘲笑われたらどうしたらいい。他人の目に、私はどう映る?

すぐ顔を逸らそうとする。


店員さんの下を向いていた顔がすっと上がりこちらを向く。ダメだ。間に合わずに目があってしまう。




店員さんはすっと微笑み

「いらっしゃいませ」

と言って業務に戻った。


当たり前のことだ。マニュアル通り。接客の基本。笑顔で「いらっしゃいませ」と言われただけ。


大袈裟かもしれない。

でも、その一瞬、私という存在が、認められたような気がして、泣きたくなった。



✴︎


結局何も買わずにコンビニを出た。雪こそ降っていないものの、刺すような冷気に身体を縮こませる。


ぼーっと空を見上げながらとぼとぼ歩く。高い建物に阻まれて窮屈そうだ。今日のこと、さっきのこと、遠い過去のこと、明日のこと。考えは巡る。堂々巡り。答えは見つかるようで見つからない。

視線を泳がせる。真っ暗な海の中。そして、見つけた。


ビルとビルの隙間に輝く星。


明るく、一点。ただそこで光る。


✴︎


なんとなく、生きていける、そんな気がした。

最後まで読んでいただけたこと、本当に嬉しいです。 ありがとうございます。