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第99話・2020年 『東京オリンピック延期、異常な1年』

伝来100年を1年1話で振り返る企画も残り10話を切りました。記憶に新しい身近な話題が続きます。引き続きご愛読ください。取材と執筆は本誌編集部。(文中敬称略。国名、機関・組織名、チーム名、会場名などは当時)

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待ちに待った「東京オリンピック・イヤー」。ハンドボールに親しんだ全世代すべての人の夢がかなえられる歴史的な年明けだった。

1月17日からクウェートで開かれた第19回アジア男子選手権で日本は3位、翌年の世界選手権(エジプト)への出場権を手にし、「東京」後の軌道も確保できた。幸先のいいスタートである。

平穏はそこまでだった。この大会期間中に世界と日本は新型コロナウイルス(Covid-19)の感染に襲われ覆われる。深刻さは日ごとに増し、日本協会は2月、春の3大イベント―第44回日本リーグ・プレーオフ(東京)、第43回全国高校選抜(埼玉/千葉)、第15回春の全国中学生選手権大会(富山)の中止を相次いで発表する事態となる。

「東京オリンピック」は揺れ動く。

3月11日、世界保健機関(WHO)が「パンデミック(=感染症の世界的大流行)」を発表した翌日、国際オリンピック委員会(IOC)と東京オリンピック組織委員会はギリシャで聖火(=オリンピックの火)の採火式を行なったが、観客の入場は認めていない。

内外メディアの「今夏の開催困難」とする報道は現実味を濃くし3月24日、安倍晋三首相とIOC、トーマス・バッハ会長(ドイツ)が電話で会談、「1年程度の延期」で一致、このあとIOC理事会でも承認される。

IOCは3月30日の臨時理事会で延期した「東京オリンピック」の日程を「2021年7月23日から17日間」と決めた。日本ハンドボール界は「東京」のたびに見舞われる悲運を避けられる。

日本の出場(アジア代表)が決まっていた9月の第8回女子ユース(クロアチア。当初は中国)、12月の第22回女子ジュニア(ルーマニア)の両世界選手権は中止。国内の主要選手権も第45回日本リーグ、第22回全日本ビーチ(愛知)、第72回日本選手権(男子・岡山、女子・石川)以外は開催を見送り、地方大会、各地学生リーグもほとんどが影響を受けた。

代表チームの強化合宿は男子2、女子1回にとどまり、秋に組まれていた第2回アジア女子選手権も延期。「東京」をめざす強化のリズムが崩れるのでは、と不安を抱かせた。

華やいだ1年となる期待は異常、異例のうちに暮れた――。

第100回は11月1日公開です。


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