見出し画像

『冬の祭典NHLオールスター』20以上の企業が参加するユニークな取り組み

先日、NHLのオールスターゲームがカナダのトロントで行われていたことを皆さんはご存知でしょうか。今回は現地時間2月1日から4日にかけて行われたNHLの年に一度の祭典、オールスターについて取り上げていきます。
NHLのオールスターの歴史は1934年2月14日まで遡ります。メープルリーフという選手が、1933-34年シーズンにキャリアが絶たれる大怪我を負った、エース・ベイリー選手のための資金集めのためにオールスターゲームを開催したことがルーツと言われています。その13年後、トロントにて1947年10月13日に最初の公式NHLオールスターゲームが開催されました。


多種多様なオールスターでのイベント

国内スポーツのオールスターイベントでは、1〜2試合が行われるだけというケースがよく見られますが、NHLのオールスターは4日間に渡って行われ、いわゆるオールスターゲームと呼ばれる試合の他にも様々なイベントが連日行われています。有名人や他競技の選手も来場する、まさにお祭りと言えるような4日間です。競技にまつわるものから、一般の方向け、ファン向けなど、幅広いイベントの中からいくつかご紹介します。

Hockey for all Rink at NHL All-Star Weekend

2月1日から3日までの3日間、午前8時から午後10時までトロントの中心部にある屋外リンクが開放されるイベントです。スケートシューズのレンタルもあり、一般の方を対象とした大きなイベントで、異なる層をターゲットとした企画が組み込まれています。PWHLと呼ばれる女子アイスホッケーのプロリーグの主力選手が登場するものや、Instagram、TikTokで多数のフォロワーを抱えるアイスホッケーインフルエンサーが来場するものなど、この屋外リンクを舞台に一般の方からコアファン、若年層といった幅広い方々へ来場を促す仕掛けが施されています。

2024 NHL All-Star Future Goals™ Kids Day presented by SAP

こちらは教育的観点でのイベントです。
NHLはリーグとして学生たちへの教育支援を目的とした「Future Goals」という通年のプログラムを行っています。

ナショナル・ホッケー・リーグ(NHL)とナショナル・ホッケー・リーグ選手協会(NHLPA)は提携し、スポーツにおけるSTEM*に焦点を当て、幼稚園から高校までの生徒にSTEM教育を提供する北米での取り組み、Future Goalsプログラムを開始した。
*STEM Science,Technology,Engineering,Math

Future Goals (筆者訳)

NHLオフィシャルパートナーでもあるSAP社(ソフトウェア企業)はこの取り組みを長きに渡って支援しており、通年のプログラムに加え、オールスターというビッグイベントで豪華ゲストを招いたプログラムを行うことで、通常以上の学習体験を提供することを狙いとしています。


NHL All-Star Pride Cup presented by Scotiabank

2024年のオールスター期間中にLGBTQ+のホッケー協会の選手を招いて、第1回NHL All-Star Pride Cup presented by Scotiabankが行われました。
このPride Cupにおいて、参加選手のスティックには虹色のホッケーテープが巻かれ多様性社会を表現。NHL・アイスホッケーが、LGBTQ+を含むスポーツを愛する全ての人への理解を示すこの取り組みに対し、Scotiabank社(金融機関)が協賛することで、企業姿勢を示した事例とも言えるでしょう。

2024 NHL All-Star Skills presented by DraftKings Sports Book

オールスターでは有名選手や人気選手の選抜チームによる試合に注目が集まりますが、NHLのもう一つの目玉が、選手たちによる技術の競い合いです。「All Star Skills」と呼ばれるこのイベントは、12人の選手が8つの種目での獲得ポイントを競います。最多ポイントを獲得した1位の選手に賞金100万ドルが贈呈されるというシンプルでありながら大きなイベントです。
このイベントのタイトルパートナーはDraftKings社(スポーツベッティング企業)ですが、選手たちが争う各種目にもタイトルパートナーが付き、競技中のコートでの設置物や種目ごとのオリジナルロゴへ企業ロゴが掲出されるなどユニークなイベントとなっています。

ジャスティン・ビーバーの存在

少し余談になりますが、人気歌手のジャスティン・ビーバーが実はアイスホッケー経験者ということをご存じでしょうか。NHLではこの親和性をうまく活用し、今回のオールスターで盛り上がりをつくりました。

当日All Star Gameに参加する4チームのユニフォームデザインを手掛けたのが、ジャスティン・ビーバーのブランドで、さらに彼自身もチームキャプテンとしてオールスターに参加し多くのファンが盛り上がりました。
NFLのスーパーボウル開催の際には、人気歌手のテイラー・スイフトの来場が大きく取り上げられました。来場者を取り上げて、試合全体を盛り上げるというアメリカならではのスポーツ文化かもしれませんね。
ジャスティン・ビーバーの効果もあってか、ジャージを含めたグッズ販売が対前年比で66%の売上増になったというニュースも出ており、NHLの仕掛けとしては成功だったと言えるでしょう。


オールスターにおけるスポンサー活動

前回のNHLの記事では、NHLはカナダとアメリカの両国で試合が行われるため、それぞれの国でのスポンサーが存在するとお伝えしました。オールスターも例外ではありません。
今回のオールスターでは、Honda社(自動車メーカー)がアメリカ地域でのタイトルパートナー、Rogers Communications社(通信キャリア会社)がカナダ地域でのタイトルパートナーとなっています。デジタル技術を駆使して、各国での放送時にタイトルパートナーの露出を使い分けているとのことです。
少し歴史を遡ってみると、Hondaは2015年から2023年まで唯一のオールスターのタイトルパートナーでした。しかし2022年、NHLはカナダでの自動車関連のマーケティング権をHyundai社(自動車メーカー)に売却し、Hondaはアメリカでのリーグオフィシャルパートナーとなりました。
今年は2012年以来となるカナダでのオールスター開催であり、NHLはHondaのオールスターのタイトルパートナー権をアメリカだけに限定することで、カナダでのマーケティング権を持つHyundaiを保護しているという形を取っています。
アメリカとカナダ両国での活動が行われるNHLのユニークな事例と言えるでしょう。


Fan Fairにおけるスポンサー活動

2月1日から4日までの4日間、全ての日程において「Fan Fair」と呼ばれるファン向けの体験型イベントがトロント市街地のMetro Convention Centreで行われました。このイベントには20以上のNHLオフィシャルスポンサーが協賛や協力として名を連ねており、本記事では、その取り組み内容について簡単にまとめました。興味のある方は記事の最後にある表をご覧ください。

さまざまな業種の企業が名を連ねていることが分かると思います。また、日本ではほとんど見ることがないギャンブル、カジノ系の企業もFanfairではイベントブースのような形でファンへのアプローチを行っています。スポーツベッティングが盛んな海外特有のケースかもしれません。

最後に

NBAやMLBなどのオールスターに比べると日本国内での知名度、認知度が低いNHLのオールスター。オールスターの存在は知っていてもこれほどまでに多くのイベントやいわゆるオールスターゲーム以外の取り組みを行っていることを知っている人は更に少ないことでしょう。企業の特性をうまく活かしたアプローチとして、Fan Fairでの取り組みやAll Star Skillsでのスポンサー企業の関わり方は非常に参考になることが多いと思います。
本記事を機に、読者の皆さんもNHLの様々な取り組みにぜひ注目してみてください。

(参考)Fan Fairに協賛・協力をした企業一覧 筆者調べ


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?