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【Z世代とスポーツ】 スポーツって”タイパ”と共存できる?

「タイムパフォーマンス」
コンテンツが溢れる世の中でデジタルネイティブとして生きてきたZ世代にとって、投資した時間に対してどの程度のものを得られるのか、つまり「タイムパフォーマンス」は常識ともいえる判断軸です。
ただでさえ試合開始から終了まで数時間かかるスポーツにおいて、タイムパフォーマンスを求められるとかなり苦しいですよね。タイパを求められたら勝てない・・・と言いたくなってしまうかもしれません。
でも、Z世代って実際どのくらいタイパを求めているのでしょうか?
Z世代におけるタイパを求める動向をチェックしつつ、スポーツがZ世代を取り込むために、スポーツとタイパは共存できるのか否かを考えてみたいと思います。

「タイムパフォーマンス」はZ世代の日常

今年の新語2022(三省堂)」で大賞に選出され話題になったワード、「タイパ」。
「タイパ(タイムパフォーマンス)」とは、「コスパ」から派生した和製英語であり、「時間対効果」のことを指します。物事に費やした時間に対して、得られた経験値や満足感を測るものさしともいえます。
Z世代が映画やドラマといった動画コンテンツを早送りして見る、という話は耳にしたこともあるのではないでしょうか。
ここで注目したいのは、Z世代にとって「どれほどタイムパフォーマンスの重要性が高いのか」についてです。
デジタルネイティブであるZ世代は、もはやタイムパフォーマンスを常に意識しているわけではなく、若干無意識にタイムパフォーマンスが意識された行動をしていると考えます。

少しスポーツから離れますが、Z世代にとってのタイムパフォーマンスの重要度がわかる事例をご紹介します。

①若者のお酒離れはタイパが影響?

Z世代(若者)は他の世代と比較してお酒を飲む量と人が着実に減っています。

国税庁及び総務省資料より筆者作成

単純に、コロナ渦により飲み会が減ったことでお酒を飲む習慣が薄れただけとも考えられますが、Z世代のタイパ(及びコスパ)への意識が影響しているとも考えられます。
飲み会以外にも多くの娯楽がある現代において、健康的にも社会的にもリスクがある飲酒を、あえて娯楽として選択する若者は減っているのではないでしょうか。

Z世代がお酒を断固拒否しているわけではなく、Z世代がデジタルネイティブであることや、無意識にタイパを重要視しているがゆえに、必然的にお酒から離れていると考えます。

②性格診断で時短!人間関係もタイパ重視

皆さんは「MBTI診断」という性格診断をご存じでしょうか?
MBTI性格診断がZ世代であまりにも流行したことで、近頃はこれが他者とのコミュニケーションにおける時短ツール(=タイムパフォーマンス向上につながるツール)としても使われています。

「相性が悪いMBTIタイプの人とのデートに時間を投資する必要性を感じない」

Record China

MBTIとは「Myers–Briggs Type Indicator」の略語であり、要は性格診断テストのこと。
韓国で人気アイドルによる自身のMBTIの公表をきっかけに、今や韓国では、国民のの半数以上がテストを受けたほどの流行ぶりです。(2021年12月Hankook Researchによる調査より)

下記、記事内にもある通り、当時の大統領候補ユン・ソクヨルは、2022年大統領選挙期間中、MBTI性格タイプのうちENFJタイプであると自己紹介ました。


前回の記事にて、「Z世代を表すワードとして、「共感」「尊重」「個人」「意味」といったワードがあげられます。」とご紹介しました。
個人を尊重するZ世代にとって、相手がどんな人間なのかをたったの4文字で簡単に知ることが出来るMBTIはぴったりなツールであったため、ここまで流行っているのだと推測します。

Z世代は本当にタイパを極めているのか?

ここまで熱弁しておいて何をいまさら・・と思われるかもしれませんが、Z世代がタイパを重視していることは事実である一方、そこには矛盾があることも感じます。


上記の引用から分かる通り、Z世代のうち半分以上が、1日に1時間以上Tiktokを見ているのです。
3,4時間以上見ている割合も少なくありません。
Tiktokはひとつのコンテンツ(動画)が大体数秒~1分という特徴がありますが、それを1時間以上見るという行為は、「タイパを意識している」という特徴とは矛盾しているのではないでしょうか。

この矛盾から考察するに、Z世代は何に対してもタイパを意識して無駄な情報を排除しているのではなく、単純に同じものを継続して視聴・体験することへのハードルが高いのではないかと考えます。
ここまで長くなりましたが、タイトルに戻って結論を出すと、スポーツはタイパと競争するのではなく、スポーツはタイパと共存できると考察します。

スポーツはタイパと共存できる!

筆者は、スポーツはタイパと共存できる、むしろタイパを上手く理解し取り入れることでZ世代を取り込めると考えます。

スポーツビジネスの先進国、アメリカ合衆国ではまさにZ世代を中心として需要の高い「タイパ」を上手く活用した動きが活発になっています。

タイパ対策① スタジアムは「過ごす」場所

皆さんもきっとご存じの通り、アメリカのスタジアム・アリーナといえば、とっても豪華でなんでもある!そんなイメージを持たれているのではないでしょうか。
まさにその通り、アメリカのスタジアム・アリーナでは、遠近感を失いかけるほどの巨大なビジョンや何階にも広がった座席以外に、ラウンジやレストラン、バー等といった付帯施設が存在しています。
試合中においても、試合を見ずとも色々なコンテンツを楽しめる、そんな施設がたくさん建設されています。
これはもちろん色々な戦略や目的があってのことではありますが、その一つがZ世代を中心に需要が高まっている「タイムパフォーマンス」への対策であると考えます。
これまでの内容からお分かりの通り、Z世代にとっては、試合を見るためだけにスタジアム・アリーナへ行き、試合を見て帰る、という行為はハードルが高いと考えられます。
しかし、スタジアム・アリーナでは試合はもちろん、ラウンジで遊ぶこともできて、レストランやバーで美味しいものを飲食することもできるとしたらどうでしょう?

アメリカでは、こんな考え方もあるといいます。

「アメリカの場合は、来場者にいくつかのペルソナを設定しており、そのうち1/3は競技やチームに興味がないけれどスタジアムやアリーナに来るのが好きな人」

Business Insider

近年はスポーツ庁によるスタジアム・アリーナ改革によって、様々な機能をもったスタジアム・アリーナが誕生していますが、「スタジアム・アリーナで何を出来るのか?」を考えることはZ世代を取り込むためにも必須な検討項目なのかもしれません。

タイパ対策② タイムアウトは休憩時間じゃない!

皆さんはNBAの試合におけるタイムアウトの使い方がどれだけ「短尺」を意識されているかご存じでしょうか。
正直、私は初めてNBAの試合を見たときに「タイムアウトなのに全然休ませてくれない・・汗」とびっくりしました。
日本では「試合中のタイムアウト=休憩」という認識が通常かと思いますが、NBAでは多くの試合にて、数十秒のタイムアウトで1つのイベントを成立させてしまいます。

@miamiheat

Tell me you’re at a Miami HEAT game without telling me 😂🔥 #beachball #miamiheat #nbaplayoffs

♬ Pep Step - Chris Alan Lee

タイムアウトになるとスタンド席にビーチボールのネットが登場!たった数分、たった数十秒も飽きさせない、まさにエンターテインメントです。

日本での試合観戦に慣れていると、アメリカでは試合が中断するたびに「今度はこっちよ!」「次はあっち!」と振り回されるような勢いでコンテンツが降ってくる感覚に陥ります。
振り回される、というと言い方が良くないですが、Z世代にとってはそのくらいのスピードでコンテンツが降ってくることが通常であり、そうでもなければ飽きてしまうのです。

最後に

一見マッチしなさそうな「タイパを重視するZ世代」と「スポーツ観戦」ですが、確かに単純に考えるとマッチしないからこそ、Z世代の動向について少し深堀してみると逆にワクワクする可能性がみえてきたかと思います。
世の中では、「若者の○○離れ」といった言葉がニュースの見出し等でよく見られますが、「ピンチはチャンス」というように、意外と若者が興味を持つチャンスなのかもしれないですね。
日々速いスピードで変わりゆくZ世代の動向に、今後もアンテナを張りながら注視していきたいと思います。

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