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大谷翔平選手の価値:5つの価値(定量・定性・マーケティング・メディア・社会的)

大谷翔平選手の価値を、「定量的価値(Quantitative)」・「定性的価値(Qualitative)」・「マーケティング価値(Marketing)」・「メディア価値(Media)」・「社会的価値(Social)」の5つの切り口で、分析します。

大谷翔平選手の先発登板試合を、現地、アナハイムでも観てきました。エンジェルスタジアムの雰囲気、マーチャンダイジング、スポンサープロモーション、コンセッション(飲食)も含めて、現地でもリサーチしてきました。併せて、大谷翔平選手に関して、「アスリートとしての価値・データ」と「iconとしての価値」を5つの切り口で、考えることにしました。選手のマーケティング価値・ビジネス価値を具現化する、エージェント・マネジメントについてもこの大谷選手のエージェントについても書きます。

定量的価値:データでみる、アスリートとしての数的価値。

大谷選手のデータ・記録がエンタメになる。

アスリートとして、大谷選手は、様々なデータが、その価値を表しています。打撃部門と投手部門で、高いレベルのパフォーマンス。(全て9月24日時点)
➡️近代MLB史上初の、「規定投球回数(162回)+規定打席」両方達成目前。
➡️ホームラン数(9月24日現在・34本・ア・リーグ4位)
➡️打点(RBI):92(ア・リーグ6位)
➡️OPS(出塁率+長打率):.888(ア・リーグ4位)
➡️勝利数:14勝(ア・リーグ3位)
➡️奪三振率(K/9):11.9(メジャー1位)
➡️防御率:2.47(ア・リーグ5位)
➡️奪三振数:203(ア・リーグ4位)

➡️163キロのシンカー(2シーム)
➡️WHIP(投球回あたり与四球・被安打数):1.07(ア・リーグ7位)

データに関しては、ESPN・MLBのSTATSを毎日参考に、チェックしています。特に、規定投球・規定打数に達していないと、防御率などはランキングに出ない。大谷選手の場合、打撃部門・投手部門も様々なデータが、高いレベルで、上位にランキングされている。奪三振率は、メジャー1位。その数字を見るだけで、ワクワクします。
現在、ヤンキース・アーロンジャッジ選手とのMVP争いも注目されているが、そこで話題なのが、WAR(Wins Above Replacement)。打撃、走塁、守備、投球を総合的に評価して選手の貢献度を表す指標。2種類あるらしいが、ESPNのSTATSも投手部門も打撃部門も右端に表記。大谷の場合は、投手と打撃の両方を足して見ています。この数字は、アーロンジャッジが突出している。DHの場合、点数が加算しにくいとも言われています。

ESPN MLB Stats奪三率・メジャー1位
ESPN MLB Statsホームラン・ア・リーグ4位
ESPN MLB Stats 防御率ア・リーグ5位
ESPN MLB Stats 奪三振数ア・リーグ3位
ESPN MLB勝利数ア・リーグ3位

シーズン200奪三振を達成した選手での歴代ホームラン数。34本と突出している。MLB公式ツイート。"There's only ONE".

定性的価値:大谷選手から発信される、イメージ価値

大谷翔平選手から発信される、様々なイメージ、定性的な価値。

二刀流(two-way):

大谷選手の最大の特徴であり、夢を与えている、投手とバッターの両方での出場。かつ、両方での高いパフォーマンス。これは、子供たちへも含めて、複数のことにチャレンジし続ける、希望や勇気を与えています。

歴史的・史上初(watching history):

”ベーブルース以来”、”史上初めて”、”今、歴史を見ている”、様々な賞賛の声や見出しやツイートが、連日大谷選手を表している。新しい歴史を開拓している姿。

ユニコーン(unicorn):

投手と打撃を両立させて、活躍したのは、ベーブルース以来。そして、その両面では、初めての領域へ。唯一無二の価値がある怪物だと、「ユニコーン(伝説の一角獣)」に喩えられています。唯一無二の存在。

チャレンジ(日本から世界へ):

岩手県から、甲子園、北海道日本ハム。そして、メジャーへ。日本から世界へチャレンジする姿。挑戦し続ける。

マーケティング価値・ビジネス価値:大谷翔平選手個人とチーム、MLBなどのマーケティング/ビジネス価値

大谷選手のマーケティング価値・ビジネス価値は、主に4つの要素に分かれる。
1)自身のスポンサー・アンバサダー契約
2)チームとの契約金
3)チームのビジネスへの貢献(チケット、マーチャンダイジング、チームのスポンサー・看板セールス・ローカル放映(権)・日本への放映(権)
4)MLB全体への価値向上・貢献・グローバル戦略

1)一流企業群とのスポンサー契約・アンバサダー契約:

スポンサー契約・アンバサダー契約企業は、
FTX、三菱UFJ、JAL、SEIKO、オークリー、バンテリン、ポルシェ、セールスフォース、デサント、ザバス、ヒューゴボスなど。2022年現在、契約を延長しているか不明の企業もある。現在1社あたり、契約料は億単位と言われ、大谷翔平選手は、全てのMLB・メジャー選手の中で、最大のスポンサー契約・マーケティング価値になっている。現実的には、スポンサー契約は、肖像権・広告契約によるスポンサー契約料が全てキャッシュの場合と、物品提供(Value in Kind)と併せたパターンがある。多くが、日本企業だが、シーズン終了後の日本帰国時に”まとめたタイミング”で、CM・広告撮影するパターンと、アナハイム現地で、撮影(これは超短時間)する場合がある。筆者も、クリスティアーノ・ロナウド選手、中村俊輔選手など、数多くのアスリートとスポンサーシップ・肖像権・CM契約とアクティベーション制作をおこなってきたが、このようなトップアスリートの場合は、カテゴリー毎に、複数社契約意向があるので、イメージや企業姿勢、そのサービス、プロダクトの質や相互にリスペクトできる関係かどうかで、契約が決定される。お金だけ積めば、パートナー契約できるわけではない。かつ、大谷翔平選手も、クリスティアーノ・ロナウドなどと同様で、マーケティング活動に時間を割くのが困難なので、CM撮影などは、分刻み、日程抑えも大変なこともある。

ブランドアンバサダー・”ポルシェドライビングアスリート”
三菱UFJ銀行と大谷翔平選手のアクティベーション
セールスフォースの理念と大谷翔平選手の共通点

セールスフォースは、大谷翔平選手のCM起用理由を、”セールスフォースは、「ビジネスと社会貢献の両立」を目指してきた。ずっと、大切なことは変えずに、打者と投手の二刀流にチャレンジする姿勢は、ビジネスと社会貢献の両立を目指す、セールスフォースと共通している”、と。
筆者が主宰している、MSBS(ミッションスポーツビジネススクール)でも、この題材は、取り上げて、アスリートのスポンサーシップ、または、大型スポンサーシップの企業の理念や戦略についても講義、ディスカッション、ケーススタディしている。

2)チームとの契約金


大谷選手は、エージェント/マネジメント契約をCAAスポーツと行なっている。CAAスポーツは、ワッサーマンなどとともに、選手エージェント/マネジメントの大手だが、その一番最初に紹介されている。

CAAスポーツのHPの一番最初に紹介されている

CAAスポーツの代理人(エージェント)のネズ・バレロ氏が、大谷翔平選手のチームとの契約・交渉を行なっている。

CAAスポーツ代理人・ネズバレロ氏(スポニチより)

大谷翔平選手のエンジェルスとの契約は23年末まで。契約を延長するか、エンジェルスのオーナーも替わり、注目されている。大谷選手の一義的な競技者としての価値は、まずは、この所属チームとの契約金になる。歴史上、投手と打者で、ここまで高いレベルの選手はいないので、その契約金もどうなるか。例えば、現在の大谷選手の投手での成績に近い、ヤンキースのゲリット・コールの年棒が3800万ドル。バッティング成績に近い、ドジャースのムーキー・ベッツ選手の年棒が2700万ドル。二人を足すと6500万ドル。現在のMLBの最高年棒が、メッツのシャーザー投手の4300万ドル。それを遥かに凌駕する。現在の日本円換算で、91億円。これが複数年契約だと、例えば3年で、約2億ドルの、史上最高契約となる。現在、NBAの最高年棒が、ジェームズ・ハーデン選手やステフィン・カリー選手の約4500万ドルほどなので、もしかすると、全てのアスリートの中での最高年棒となる可能性もある。成績と年棒価値を投手+打撃で、単純に足し上げるのか、それとも、その独自性で、もっと価値が評価されるのか。かなりの体力的負担を伴う成績なので、そのリスクを鑑み、金額を下げるのか。どのくらいの複数年契約をするのか。エンジェルスに残るのか、他の有力チーム、ワールドシリーズに参加できる可能性のチームに移籍するのか。大谷選手のビジョン・計画と、エージェントのネズバレロ氏の考えと、エンジェルスの新オーナーの意志が注目される。筆者が主宰しているミッションスポーツビジネススクール(MSBS)でも、「エージェントとマネジメントの違い」なども講義、ディスカッションしている。日本国内のプロ野球の代理人は、弁護士資格を持ち、かつ、代理人1人が選手一人しか、担当できない現状がある。MSBSでも14名の弁護士が参加して、代理人・エージェントについても考えており、MSBS・弁護士ゼミも存在している。

3)エンジェルスのビジネス(への貢献):

大谷選手は、DHとして、ほぼ毎試合出場し、かつ、中6日か5日で、投手としても先発。ずっとファンの前に、出場する。トラウトと共に、エンジェルスの看板・人気選手。チームの収益である、マーチャンダイジング(グッズ)、チケットセールスコンセッション(飲食)、(チームの)スポンサーシップ(看板、プロパティ使用、VIPルーム使用など含む)、ローカルの放映権に大きく貢献している。チームにとってのビジネス価値(収益)に最も貢献している選手。大谷のユニフォームやTシャツ、グッズは、圧倒的な人気で、ファンが観戦やお土産にたくさん購入する。大谷とトラウトを見に、チケットを買う。日本企業を中心に、チームのスポンサーも増えている。ホームラン位置やネット裏の看板も日本企業が並ぶ。

4)MLBの世界戦略としてのアイコン:

MLBは、グローバルにその展開を模索している。米国内と中南米では、人気コンテンツであるが、欧州、アジアなどにもビジネス展開を考えている。大谷翔平選手の存在は、日本、アジアへのアイコンとしての役割も期待しています。その証拠として、MLBの公式Twitterのカバーのフロントは、大谷翔平選手。大谷選手の所属チームの日本ツアー、開幕戦などのプランも、MLBとしては、検討しているであろう。

MLBのツイッターのカバー写真

メディア価値:とてつもない量の、シーズン中の大谷選手の試合中継、報道、SNS

報道ステーション・ほぼ毎日大谷報道

大谷翔平選手に関して、シーズン中を中心に毎日、メディアで取り上げられている。LIVE中継を、日本では、NHK BS、ABEMA、Jスポーツ、Huluなどで、ライブ放送・配信されている。その上、地上波のNHK・ニュースウオッチ9、テレビ朝日報道ステーション、TBSニュース23など地上波のニュース番組で毎日のように取り上げられる。さらに、ネットでは、試合前後からSNSで情報や映像が拡散する。スポーツ紙も連日報道し、1面の場合も多い。現地でもBALLY SPORTSなどでも、連日中継しており、時に大谷登板試合は、米国・全国中継される場合もある。

大谷選手の価値が高いのは、その投手と打撃のパフォーマンスに併せて、ほぼ毎試合出場するので、ライブ中継も毎試合、大谷選手が愉しめる。かつ、毎日のように、地上波、ネット、スポーツ紙、SNSなどで、報道、話題として取り上げられる。

社会的価値:日本中が元気に。他の選手・チームからもリスペクトされ、地元でも愛され。努力は実を結ぶという指南。

大谷選手の真面目な姿勢(真摯)や、努力する姿、ゴミを拾う行為や、審判から手のチェックを受ける際の態度(笑顔)、他のチームの選手たちも駆け寄って、話しかけてくる選手の間でもヒーロー。様々な社会的価値。子供たちなどに、与える影響も大きい。その真摯な態度、礼儀、マナー、発言なども、社会的な(いい)影響力がある。時に、スポーツが、ギスギスする話題にもなりえる中、大谷選手の態度や振る舞いは、社会にポジティブな影響を与える。

目標・努力・成果:

大谷翔平選手が、高校時代に書いた、目標達成シート。具体的に、多面的に書いており、現実にドラフト1位で、北海道日本ハムに入団した。160キロのボールも投げている。

日本の朝を元気に。

多くのエンジェルスの試合は、日本の朝・午前中。大谷のホームランや勝利投手は、日本中を元気にする。これだけ、一気に、多くの国民を元気にする瞬間は、スポーツ以外ないだろう。大谷は、シーズン中、それを、何度も。

ごみを拾う。審判に笑顔。

大谷翔平がごみを拾うエピソードは有名。幸運を拾うと考えていると。メジャーのスーパースターが、ゴミを拾うとかは、米国の選手からは考えられないだろう。また、審判による、投球後の手のひらチェックに対しても、審判に笑顔。審判とギスギスする選手もいる中で、態度・マナーがいい。

相手チーム・選手からもリスペクト、愛される。

大谷選手が進塁すると、皆、相手チームの選手が話しかけてくる。
練習中にも、挨拶に来る、話しかけてくる。
ツインズのコレア選手は、妹が大谷選手の大ファンで、誕生日のサプライズで、一緒に写真を撮る。

大谷翔平選手について、5つの切り口で、その価値を考えました。アスリートとしての価値と、そのシンボル・アイコンとしての価値。それは、定量的・定性的・マーケティング/ビジネス・メディア・社会的価値。岩手県で生まれ、そこから、北海道日本ハム、そして、メジャーへ。怪我がないことを願います。彼の、持続的活躍、成長は、多くの人のこころを掴み、幸せにします。スポーツビジネスは、選手たちの活躍を後押し、その価値を具現化して、ファンや地域や企業に価値提供をし、キャッシュをアスリートやチーム、スポーツのコンテンツホルダーにできるだけ多く収益になるように知恵を絞り、提案、実装します。昨今、スポーツビジネスに関して、違法な行為や社会的に価値を毀損する行為もあったり、誹謗中傷なども見受けられる場合もあります。しかし、スポーツビジネスは本来、アスリートたちの価値を具現化して、社会と選手たち両方にメリットを生み出せる素晴らしい仕事です。筆者自身も、MSBS(ミッションスポーツビジネススクール)を通じで、スポーツの価値を具現化して、社会にも選手にもメリットを醸成できる人たちを育成しています。すでに、第6期を終え、多くの方達が、スポーツマーケティング、スポーツビジネスの最前線で活躍しています。

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