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朝倉未来時代の終焉


2023年11月19日(日)
朝倉未来vsYA-MANの試合が行われた。



キックボクシングルールで行われたこの試合
朝倉未来が衝撃のKO負けとなった…


試合直後、彼はInstagramにて引退を宣言した。

格闘技ブーム再燃のきっかけとなり、ここまで日本格闘技界を牽引してきた
朝倉未来の引退…

率直な感想としては寂しい。

そして、この試合が最後というのはなんとも言えない。

もう朝倉未来の試合にワクワクドキドキできないのかと思うと悲しい。

そんな私にとって悲しい結末となった一戦について朝倉未来の敗因を考えてみる。



■敗因① 距離感(インファイト)

まず大前提として今回の試合は
キックボクシングルールであること、
朝倉未来の主戦場であるRIZINよりもリングが狭く、
YA-MAN有利の試合条件だった。

総合格闘技とキックボクシングは全く別物のスポーツである。

YA-MANも試合後インタビューでは
「野球とソフトボールぐらい違う」
と発言していた。

そのため、距離感が全く違ったことが敗因の一つだろう。

そして、インファイトに弱点があるというのは
敗北を喫した斎藤裕の1戦目から言われていたことだ。
(下記動画23分あたりで打ち合いになります。)


その弱点をついて、YA-MANは最初から距離を詰め、圧力をかけた。

YA-MANからすれば得意の打ち合いの距離を作ったわけだ。

朝倉未来はこれをかわす術がない。

MMAであれば組んでしまえばいいわけだが、
キックボクシングに組みと寝技はない。

序盤朝倉未来はクリンチで一旦難を逃れた。

しかし、この時の朝倉未来の表情から余裕がないことが読み取れた。

おそらく、YA-MANを舐めていたのだろう。

試合に対峙した瞬間の圧力の強さと殺気、
さらには打撃のスピードや威力に
面を食らってしまったように思えた。

余裕のなくなった朝倉未来は左ハイキックや右フックなどを振り回してしまう。

いや、YA-MANへの恐怖により、
「近づいてくるな、あっちに行け」
そう言わんばかりの動きだった。

MMAをやってきて、いきなり距離を詰めてくる選手というのは今までいなかったのだろう。

なぜなら朝倉未来の打撃を相手が警戒しているからだ。

朝倉未来はその中間距離で戦うことに慣れており、それがストロングポイントでもある。

不用意にとびかかってきた相手には前手である右フックで下がりながらカウンターを決める。
これがお得意のパターンだ。
斎藤選手との再戦ではそのカウンターが見事に炸裂した。
(下記動画12分33秒あたり)


だから序盤から相手が詰めてくるという展開はなかった。

だが、今回はキックボクシングだ。
しかも相手はYA-MAN

打ち合い上等
ダウンをとられても最後は殴り倒す

そんなタフファイターなYA-MAN

予想だにしていないYA-MANの攻めに
朝倉未来はゴング早々、我を見失った。

その結果、コーナーに押し込められ、
抜け出すために振り回した左フックに
カウンターの右ストレートを浴びせられ、
ダウンをとられた。

危険な倒れ方をした朝倉未来はなんとか立ち上がるもなすすべなく、

YA-MANの連打によりダウンし、
試合終了となった…



■敗因② 引き出しの少なさ

想定外の試合展開で早々と敗北してしまった朝倉未来。

想定外なことが起きた時に対応する引き出しを持っていなかったのが敗因の2つ目ではないかと私は考えている。

上述したように朝倉未来はインファイトに弱点があるのではないかと言われていた。

本人は打たれ強く、実は打ち合いは得意と
以前YouTubeで話していた。

本人はそこを弱点と認識していなかった。

そのため、インファイトに備えた練習をしてこなかったのではないかと考えられる。

インファイトに苦手意識があれば、ステップワークを磨いてコーナーに詰められないようにするとか対策が引き出しにあったはずだ。

でもその引き出しはない。

故に、なすすべなく瞬殺されてしまった。

ただ、スポーツというのは試合でしか弱点というものが見つからないものなのだろう。

いや、なんでもそうか。

実際にやってみて初めて課題が見つかり、その対策をとるのだ。

そういう意味ではコロナ禍により格上との試合がなかったことで、
弱点が浮き彫りにならず、課題が見つからなかったことは朝倉未来の不運だとは思う。

しかし、1回目の斎藤戦で自覚できていればとも思う。
それを指摘し、練習させてやれる人が近くにいなかったことが不運なのかもしれない。

ただ、これは他責思考だ。

本人が反省し、自覚することはできたはず。
斎藤戦の敗戦を真摯に受け止め、反省はしたのだろうか。

2回目の対戦までに全局面で勝てる
そこまでの練習は積んだのだろうか。

そこからさらに勝利を積み重ねるためにどのような行動をとったのだろうか。

引き出しの少なさ、つまり攻撃パターンの少なさについても以前から指摘する声があった。

メイウェザーとのボクシングマッチを経て、
ボクシングスキルを高め、引き出しを増やしたかに思われたわけだが、
実際に試合で使えるまでには昇華できなかった。

これは練習不足と言われても仕方がないのかもしれない、、、



■敗因③ メンタル面

8月のケラモフ戦の敗戦から朝倉未来のメンタルは建て直せていなかったように思う。

完敗を喫したことで彼の心は折れ、一時期練習もしていなかった。

しかし、朝倉未来は頭がよく、商売が上手い人だ。

朝倉未来と言えば、YouTubeの登録者数は300万人を超え、その他の事業でも成功を収めている。

そんな彼の商売の根本にあるのは
格闘家としての朝倉未来というブランド価値なのである。

少なくとも本人がそう捉えているのではないかと思う。

そのため、試合をして勝たなければ、自分の経営が上手くいかなくなるかもしれない。

という恐怖があったのではないかと考えられる。

また、格闘家として強いことが朝倉未来の商売を支えていると考えている場合、

引退するというのは難しい。

彼のブランド価値が落ちれば、経営は傾き、
社員たちにも影響を与えることになるからだ。

このような責任を負ったことで、彼には多大なプレッシャーがかかっていたと考えられる。

また、朝倉未来はプロデューサーとしての視点を持つ格闘家でもある。

そんな彼は来年の夏に格闘技のビッグイベントを開催することを画策している。

推測に過ぎないが、
そのビッグイベントで自分の引退試合を実施する計画だったのではないだろうか。

そのためには

朝倉未来はまだやれる、強いんだぞ
ということを世間にアピールし、

格闘家としてまだ終わっていないことを印象づけておきたかったのではないだろうか。

また、総合格闘家として上を目指すことに対するモチベーションはなくなったかもしれないが、

得意の打撃のみであれば、まだ通用するのではないかという自身への期待もあったのかもしれない。

YA-MANとは練習したこともあるので、そこそこ戦える自信もあったのだろう。


この試合の結果次第では、対戦要求してきている安保と試合をするなど、

今後楽しみな展開を作れるかもしれないと朝倉未来は考えていたかもしれない。

主催者視点を得たこと、
まだ自分には格闘家としての価値があることを世間に知らしめたい

このような考えが、焦りとなり彼の目を曇らせ、
何の対策もないまま、YA-MANと試合するに至ったのかもしれない。

対策不足だったのは対戦日ギリギリでのオファーだったからという理由もあると思うが…

一方で、対戦相手のYA-MANは朝倉未来と試合することのみに集中していたように思える。

雲の上の存在と朝倉未来を尊敬しており、そんな選手と試合をするのだからモチベーションは高かっただろう。

YA-MANも勝った後のことは考えていたかもしれないが、
朝倉未来に勝つことに集中できていたように思う。

目の前のことに一生懸命な人

今後の展望に頭がいっぱいな人

この試合の入場から両者の表情は明らかに違った。

集中し、戦闘モードに入っているYA-MAN

どこか覇気がない朝倉未来

そんな2人の対戦ともなれば、
77秒で試合が終わるのも不思議ではない。

2人の試合に対するモチベーションが勝敗を分けたといっても過言ではないだろう。

このような考えから勝敗を分けたポイントとして
メンタルを挙げた。


◾️最後に

ケラモフ戦に続き、何もできず敗戦となった今回のYA-MAN戦。

キックボクシングデビュー戦だったからと楽観的に捉えることはできないか…

そもそもこの試合は仲の良いYA-MANが主催するイベントということで、
朝倉未来が名前を貸してあげたというのが真意だろう。

後輩を助けてあげたら、
予想外の結末が待っていたわけだ。

一時代を築いたカリスマの最後は悲しいものであるが、受け入れる他ないのだろう。


格闘家としての朝倉未来は終わってしまうのかもしれないが、
朝倉未来という1人の男を引き続き応援しています。

とにかく心身ともに健康に過ごせるよう、
ゆっくりお休みしてほしい。



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