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デレク・ジャーマンと私と大学生活 / 『BLUE』

皆さま、こんにちは。
いかがお過ごしでしょうか。

私はこう見えて(?)、現在、立教大学経済学部3年次に在籍しています。
そのため、年が明けて少し経ってから今日、そして来月頭までは期末試験の勉強に猛烈に追われる毎日です。

しかしながら今学期は、おおよそ半分の授業は映画関連のものを履修しており、そういった科目のレポート執筆に費やす時間は、非常に楽しく有意義です。

以下、現在私が取り組んでいるレポートです。
・『ソヴィエト映画とアトラクションのモンタージュ』
・『ブニュエルとダリとシュルレアリスム』
・『アルゼンチン文学と映画〜『蜘蛛女のキス』〜』
どうでしょうか。なんて魅力的な課題なんでしょう。




さて、今回はデレク・ジャーマンの1993年の作品『BLUE』について綴りたいと思います。

Filmarksのプロフィール欄に、
「Hartley, Carax, Godard, and Derek Jarman.」
と記載している(2023年1月現在)ように、私は世界中のあらゆる映画作家の中でも突出してジャーマンを愛しています。


話は変わりますが、私には大学生活の大きな部分を占めていたものがあります。
それは、1年時から所属していた服飾サークルの活動です。そしてこの団体を、昨年末、遂に引退しました。

当団体は、半期に1回ファッションショーを行い、毎週の部会でそのショーに向けて準備をするといった活動内容で、私は映画よりも寧ろファッションを先に好きなったという経緯もあり1年生当時、入部を決めました。

団体公式インスタグラムより

と、いうところまでは良かったのですが、なんと最終学年になってこの団体の代表を務めることになりました。部員数は約80人。これまで人をまとめる役割を一度も経験してこなかった私は、この1年間、苦悩とプレッシャーに苛まれることとなります。
本当に、本当に、民主主義とは大変なものですね…。


そんな中で迎えた、代表としての最初のショー。
運営側の私たち部員は、当日は全身真っ黒の服装をするという決まり事があり、この夏のショー成功の願掛けとして、私はジャーマンの力を借りることにしました。

2022年7月 ショー当日/ マチルダさんの装い

お分かりでしょうか。はい、そうです。
デレク・ジャーマンの言わずと知れた代表作『The Garden』(1990) のワンシーンがプリントされたTシャツです。

ショーを陰で見守りながら、ずっと胸の部分を握りしめていました。(ごめんね、ティルダ・スウィントン。)
お陰様で、ショーは無事成功を収めることができました。良かった良かった。



そして季節は巡り、遂に最後のショーがやってきました。私たちの代が引退するショーです。

私は非常に気が弱く、民主主義を意識するあまり、代表として強気で行くべきところも行けないという弱さがあります。それに、自身を悩ませ、周囲に迷惑をかけてしまうことも多々ありました。

しかし、最後のショーのテーマや会場が決定したときに、ひとつだけ、これだけは絶対にショーに組み込みたいと思ったことがありました。
それは、『BLUE』をランウェイに投影することです。

今回のショーは、『静寂さと無垢の希求』という「青」をテーマとしたショーで、天井の高い会場には大きなプロジェクターが設備されていました。
もうこれは、デレク・ジャーマンを映すしか無いではありませんか。ショーの哲学とジャーマンの『BLUE』は、風光明媚な融合を見せるという確信が私にはありました。



シネフィルの皆さんならご存知の方も多いと思いますが、この『BLUE』は、エイズによる合併症によってほぼ盲目にあるデレク・ジャーマンが晩年に製作した彼の遺作です。

徹頭徹尾、画面は青一色。そこに、ジャーマン本人の語りや、環境音、音楽などが重ねられた本作。彼自身とエイズで命を落とした友人への鎮魂歌とも言われていますね。

私は、大学図書館のAV資料視聴コーナーで初めてこの作品を鑑賞したとき、作品の力強さに途方もなく圧倒され、釘付けになってしまいました。画面の青色は微動だにしないのに。

ジャーマンには、愛の非論理性の上に生ずる美しさの哲学と、生命の息吹を捉える心があると思います。彼が見る世界とは、紡ぐ映像とは、到底私なんぞには及ぶことのできない領域だと思っています。しかし、それらに心を動かされ、言葉が涙に変わってこぼれ落ちるだけで私は幸せなのです。


そんな、大切な大切なこの作品と共に、私の大学生活の集大成を彩ることが出来ました。これまで経験してきたどのショーよりも素晴らしい、愛すべき時と共に引退することが出来ました。本当に幸せなことです。

2022年冬のショー / デレク・ジャーマン『BLUE』

ご覧ください。
どうでしょう、素敵ではありませんか?




ジャーマンがいたから、大きな舞台を無事乗り越えられた気がします。大切な作品が大切な経験へと導いてくれました。
映画の持つ力とは本当に驚くべきものです。だから、人は愛さずにはいられないのですね。これからも大切に、映画と共に日々を過ごしていきたいです。


そして最後に、こんなに頼りない代表を最後まで支えてくれた部員の皆さんに、こんなところで感謝を申し上げます。(きっと誰も読んでやいませんが。)


下記は、私がデザイナーとして製作したラストルックです。
タイトルは『深淵』で、私が経験してきた悲しみと怒りを表現しています。モデルは友人が務めてくれました。

2022年冬 / 『深淵』/ 制作マチルダ


これはおまけ。

私とモデルちゃんのオフショット



最後まで読んでくださった方がいらっしゃいましたら、部屋の壁紙をブルーに塗り替えてしまいたいぐらい嬉しいです。

ありがとうございました。

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