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4期生ライブで行われた「私達が乃木坂46である」という宣言~9th YEAR BIRTHDAY LIVE期別ライブを経て~

書いている現在から見てついさっきである、5月8日に行われた『9th YEAR BIRTHDAY LIVE~4期生ライブ~』。結論から言って、もうめっちゃくちゃ良かったですね。16人揃っての単独ライブは約半年前に行われており、メンバー自身「またか」と言われてしまう不安とも戦っていたそうですが、そんな言葉全く出てこない、とても良いライブでした。

というのも、特にセットリストが非常に秀逸。表題曲だけに頼らない今回のセトリは、1から10まで、かなり明確なストーリーテリングが行われているなと個人的に感じる内容に仕上がっておりました。

乃木坂46の歴史を辿りつつも、新世代メンバーである彼女達によってそれらが更新されていくような。背景のドラマを取り払ってアーカイブ化していくような。まるで仮面ライダーディケイドのようだった。

何を言っているかわからないと思うので、何をどう感じたのかここからさらっていきます。まずはじめに、今回のライブのテーマを挙げるとしたら「対乃木坂46」であったと思う。それは厳密には「対1期生」。1期生の作り上げたもの、歩んできた道と正面から対峙したような内容のセットリストであった。

以下、メンバーの名前は基本的に敬称略。また「●●コーナー」「●●ブロック」という言い方はメンバーが発したものに加え、便宜上名付けたものも含みます。

1.夜明けまで強がらなくてもいい
2.逃げ水
3.バレッタ
4.ぐるぐるカーテン

まずは冒頭の表題曲ブロック。ぐるカー含め、1~4期それぞれのメンバーがセンターを務めたこれらの楽曲を逆順に辿る形で披露された。今回は意外にも数少なかった表題曲の披露だが、ここに配置されたこの楽曲群は非常に重要な意味を持つ。

これらは現在、かなり「期の曲」として印象強いのではないかと思う。昨10月に行われた『NOGIZAKA46 Mai Shiraishi Graduation Concert ~Always beside you~』や2月に行われた『9th YEAR BIRTHDAY LIVE』を経た故だ。それぞれ、卒業する白石を除き、センターを務めたメンバーがいる各期のみでの披露が行われた。

これらの曲を立て続けに披露することはつまり「乃木坂46の歴史を辿ること」である(各期の加入(結成)当時の曲であることも寄与している)。逆順であった今回の場合、タイムマシンで過去に向かうように、その歴史を遡っていく意味を持つ。

その先に何が待つかというと、1期生の存在だ。後の演出からもわかるように、グループから巣立ったメンバーも含め歴史の当事者である1期生の姿に、自分達を重ねる形で彼女達4期生はここから1期生の陰を追っていく。

まず始まるのは「縛られる」フェーズだ。1期生からの指令を受ける形も含め、4期生達は自分たちの意思を超えて、その姿を露骨に模倣させられる。

(『逃げ水』を終えたレイちゃんが涙を流した理由が素敵すぎましたね。)

5.水玉模様
6.ガールズルール
7.サイコキネシスの可能性
8.世界で一番孤独なLover
9.走れ!Bicycle

VTRにて登場した、秋元真夏先輩、齋藤飛鳥先輩、高山一実先輩によって提示されたのは過去ライブでの演出の「追体験」であった。

和傘、下駄ップ、UVと呼ばれていた手袋を用いたブラックライトの演出、漕げ!Bicycleといった、過去に1期生達が(ライブ本格始動の黎明期に)行ってきた演出の再現が今回実施された。

色々と物議を醸していた気がする本ブロック。とりわけ下駄ップは、今回にしても当時の映像にしてもなんじゃこりゃと思ってしまったところですが(文句付けるようなこの言い草、前向きに頑張ってる彼女達に対して失礼以外の何でもないですね。自戒。)、ただある意味それが一つの狙いでもあったのではとも思う。

上に「縛られる」「模倣させられる」と書いたが、まさしく狙いはそれであったのではないか。4期生達の個性、オリジナリティーを奪い、マネすることを強要されたブロックであった。それそのものが、ということだ。

その目的は、簡単に言えばフリだ。既にライブを観終えた者ならよく理解できることだが、これ以降行われる4期生自身のパフォーマンスによって「模倣の必要性はない」といとも簡単に覆される。

先に書いてしまえば、ユニットコーナー以降、4期生によって既存曲の解体が行われる。それもまた「覆す」行為であるが、そうした形で、過去と、1期生と対峙し立ち向かう様をより強く見せ、かつ異論を呼ばないギミックとして、この追体験ブロックがあったのではないか。要は、後の反動を産むためのものということだ。

それと同時に、4期生自身がオリジナリティーを獲得する以前の時期の再演とも言える。先輩の姿を借りざるを得なかった頃のことである。それもまた、後に覆すための伏線だ。

ただ、純粋な意味での「追体験」もまた狙いの一つではあったことだろう。特に、これらのパフォーマンスを行っていた2013年頃の1期生達はライブ自体に慣れていなかった時期である(真夏の全国ツアーが始まったばかりの時期だ)。パフォーマンスのレベルにしても、少なくとも今と比べれば一歩も二歩も及ばないのは事実だろう。2013年と考えれば、現在の4期生と比較してもそうである可能性は高い。

要は、当時の彼女達はまだ模索の時期にいたということだ。4期生達は1期生をはじめとした先輩達に対して、強すぎるくらいの憧れ、尊敬を抱いている。それを冷静にいさめるように「こういう時期もあったんだよ」と伝える意図もあったのかもしれない。

更に言えば、その中でも、ビジュアル的にも残る印象的にも威力のあるものが選ばれたように思う。無論わかりやすく伝える為である。このブロックのインパクトはどう考えても強い。それに対する「純然たる"良い"パフォーマンスも出来ますよ」という保険的なメッセージのように、ダンスアンセム『世界で一番孤独なLover』が組み込まれてたりもする。SEを用いたロックダンスも過去に行われていたが、この曲の役割はおそらく追体験のそれだけではなかったのだ。

余談だが、公式天の声こと早出さんまでちゃんとキャスティングしている辺りもまた追体験の基盤作りである。のぎ天プリーズカムバック。

(あと和衣装に身を包んだ賀喜ちゃんはカッコ良すぎでしかなかった)

10.転がった鐘を鳴らせ!
11.狼に口笛を
12.ダンケシェーン

なんだかんだ多分に楽しんだ追体験ブロックを経て、混乱させられたテンションをぐいと引き戻すかのようなライブ曲ブロックである。

ここはシンプルに「楽しむ」「盛り上げる」をまず目的にしたブロックだ。全体ライブでもメンバー全員が登場して披露することの多い曲が並び、また終盤に配置される印象が強くあるが、今回は中盤のここに置かれた意味は、やはり「引き戻す為」が第一にあると思って良いだろう。

実際の披露では花道やセンターステージに広がり、あの客席で見られていたら楽しかったであろう事は間違いない。『転がった鐘を鳴らせ!』は貴重なオリジナル振り付けの披露(超好き)。

また『ダンケシェーン』での賀喜が務めた冒頭ソロ(生歌!)や矢久保の「やっぱ乃木坂だな!」からは、"引き継いでいく"意志を感じる。単なる模倣ではなく、自分のものにしていく気概。説得力は十分だ。だがそうでなくても、否応にもテンションが上がるものだった。

そして個人的には『狼に口笛を』が特に印象的だった。日村さんも大好きなこの曲が、ここに配置されることには全く違和感がないが、だからこそだ。4期生達が4期生ライブで披露することで「どれがアンダー曲でどれが表題曲で」という命題からこの曲を解放したように感じたのだ。これもまた、彼女達が行った一つの更新だ。

(美佑ちゃんの声に出さない「ありがとうございました」は健やかで超良かったですね)

13.2度目のキスから
14.ごめんねスムージー
15.流星ディスコティック
16.偶然を言い訳にして
17.雲になればいい
18.悲しみの忘れ方

これまでの歴史を遡ったり追体験することを終え、ここからはライブ定番のユニットコーナーに入る。このブロックの役割こそ、上述した「更新」「アーカイブ化」の意味が特に強いように思う。その目的は、既存のカタチを解体することだ。

そもそも4期生はまだユニット曲を持たない。だから、そりゃユニットコーナーやるなら先輩の曲になるでしょ、ある程度は卒業メンバーの曲になるでしょ、と思うだろうが、それはとても正しい。

昨11月に行われた4期生ライブでもそれは同様だった。当時披露されたのは『孤独兄弟』『渋谷ブルース』『白米様』『Threefold choice』『心のモノローグ』『自分のこと』である。並べてみると、卒業メンバーがオリジナルポジションを担っていた曲が少なからず含まれていることがわかる。

その事実から、2つの事が言える。まず一つは、当時から「更新」「アーカイブ化」は行われていたということだ。もっと言えば、2019年・Sing Out!発売記念4期生ライブでの表題曲全員センター企画などもそれに含まれるだろう。特に『ハルジオンが咲く頃』『サヨナラの意味』等を無邪気に披露するには、その背景の物語を一旦脇に置いておかざるを得ない。

もう一つは、2021年現在だからこそ、「更新」「アーカイブ化」の意味がより強まっている、濃くなっているという事だ。具体的には白石麻衣の卒業、敢えて楽曲で語るとしたら『しあわせの保護色』以降であるためだ。

詳しくは以下を参照していただきたいが、彼女の卒業を以て乃木坂46は第2部を終えた(と個人的に見ている)。

グループは、この時期に二度目の総括のタームに入っており、1期生による結成~成熟以降のストーリーが一段落したことを感じさせた。また続くシングルが、センターを山下が務める『僕は僕を好きになる』であることがまた新世代の時代に突入したことを物語る。

つまりは、白石の卒業は結成以降続いてきた1期生時代の終焉に重なっており、これまでの楽曲もいよいよ彼女達の手を離れ始めたということだ。

軍団曲である『2度目のキスから』にしても、卒業メンバーの陰を色濃く見出してしまうそのほかの曲にしても、ユニット披露しうる曲の中でも特に「個人」に寄った選曲ばかりだ。後のMCで北川さんが『ないものねだり』の名前を出して語ったことからも、それが意識されていたことがわかる。その陰に立ち向かい、更新していくことが今回行われた4期生達の挑戦だった。

もちろんその結果は観た通りである。「この曲を誰々がやるなんて」なんて評価が全くふさわしくない、今の彼女達だからこそのパフォーマンスで間違いなかった。

(特に『ごめんねスムージー』が、能力高いメンバーが揃っていたことも相まってPerfumeばりの完成度だったように思います。)

(あと、柚菜ちゃんの歌声フリークなので『雲になればいい』で召されかけた。歌が上手い3人の中でもちゃんと中心を担ってましたね)

そして続けて披露された『悲しみの忘れ方』もまたそうだ。同題のドキュメンタリー映画が公開されたのは、先述の考え方を引用するなら、一度目の総括のターム・乃木坂46第1部(~2015年)を終えた時期である。その主題歌であったこの曲。

極端に言えば、4期生はこの曲の当事者ではない。表題曲同様に乃木坂メンバーへの当て書きの色が強いこの曲(歌詞)は、彼女達が元から持つ言葉ではないのだ。

しかしこの曲も、ドキュメンタリー映画『悲しみの忘れ方』から切り離す形で、彼女達自身の曲にしていかねばならない。故にこの曲は今回披露する必要があった。今回のような形で楽曲を更新し、自分達の手元に引き寄せなければならなかったのだ。

個人的には、まるで『4番目の光』とも『夜明けまで強がらなくてもいい』とも同質の想いがあるように聞こえてしまった。ユニット衣装のまま(弓木ちゃん曰く「四季折々の」)披露したこともそうだが、先達への確かなリスペクトと憧憬、そして渇望をそこに携えており、それを4期生達だけで歌うことで新たな意味を思わず感じ取ってしまったのだ。

19.日常
20.今、話したい誰かがいる

VTRにて4期生と新4期生の絆が既に深まっていることを示し、また自身らのパフォーマンス力の向上とその自信を語った幕間を経て披露された2曲。ある意味これらが最もストーリーテリングしている。この2曲が並べられたことで生まれた"意味"はかなり明確であるし、秀逸な形で次のブロックへの橋渡しを行っている。

北野日奈子の固有結界でしかない『日常』の披露は、ユニットコーナー同様の「更新」「アーカイブ化」に近いものがある……とも言える、が、それだけではない。むしろそれは前後のブロックをシームレスに繋ぐ為の表層的なイメージだ。

この曲がそもそも持っているメッセージは「現状からの脱却」である。対となる『帰り道は遠回りしたくなる』と限りなく近いが、沸き立つ衝動と旅立ちを歌ったあちらに対し、フラストレーションを以て、とにかく壁を突き破りたいという強い感情を『日常』は歌っている。

今回4期生が放ったのは、彼女達の内にあったその感情であることはおそらく間違いない。しかしその一方で、『日常』を通して、こちらにもそれを求めていたように感じた。具体的には「いつまで1期生だけ見てんだよ」というメッセージだ。

こないだの1期生ライブでは、生田が「(自分達の乃木坂/アイドル人生は)もう折り返し始めている」という旨のことを語っていた。直後に松村が卒業発表したこともそうだが、彼女達は既に「いずれ去りゆく者」であるのだ。

だからこその「こっちを見ろよ」という勇気ある姿勢。彼女達はこちらに(敢えてこう表現するが)懐古主義からの脱却を求めている。無論そうさせる実力に確信あっての姿勢である。それは何より、筒井が牽引したパフォーマンスによってリアルタイムで証明された。(あの子は凄すぎますねホントに。)

続く楽曲もそうだ。「今話したい誰か……それってウチらのことでしょ?」という懐広いメッセージを含んだ選曲なのである。それは、勝ち気なようで強引ではない。Akira Sunset氏作曲の土っぽい暖かなサウンドで、乃木坂楽曲ならではの包容力を以て発信している。なんなら、「ウチらのことでしょ?」というよりも「大丈夫、ウチらがいるじゃん」といったスタンスである。

若く熱いエネルギーと同時に、"乃木坂46らしさ"をパフォーマンスに載せることが、彼女達は既に出来るのだ。

(シーソーのところの矢久保ちゃんの目いっぱい背伸びが超可愛かったですね)

21. I see…
22.キスの手裏剣
23.図書室の君へ
24.Out of the blue
25.4番目の光

『日常』『今、話したい誰かがいる』の2曲によって、自分たち4期生に聴衆の視線を向けさせたところで、満を持しての4期生曲ブロック。賀喜による「4期生のこと愛してますか!?」という煽りは、間違いなくこの流れを汲んだものだ。

「こっちを見ろよ」「ウチらがいるじゃん」そのメッセージを単に発するだけでなく、向けられた期待に存分に応えることが出来る。それを見せつけるのはやはりオリジナルの楽曲群でやってこそ。だからこそ、ここまで4期生曲を温存してきたのだ。

『I see…』はもう何を言うまでもないだろう。単独でミュージックステーションに出演するくらいに楽曲が育ち、しかし独り歩きしていない。披露時の楽しそうな笑顔も、カメラへのファンサービスも、それをする余裕があるからだ。今回のライブは確かにそれを証明するパフォーマンスであった。前日のMステ出演はもはや予告ネタバレのようなものだ。

続く『キスの手裏剣』『図書室の君へ』『Out of the blue』。目まぐるしくセンターが入れ替わるこれらの曲の構成は、誰か1人だけの力に頼らない、4期生皆が持つ地力を見せ付ける結果になったように思う。賀喜の『I see…』を掴んで離さない覚悟と自信、遠藤の絶えないフレッシュさと照れ笑い、掛橋の爽やかなモノローグと表情の豊かさ、早川の満天の笑顔と強まる存在感、どれを取っても他に換えがたい。もちろんセンターでないメンバー達だってそうだ。

また改めて並べてみると、『I see…』から『Out of the blue』までの4曲は、歌詞で言っていることがほぼ同じである事に気付く。いずれも「恋心の芽生え、自覚」とか「恋のはじまりのワクワク」とか、そういったものを謳っている。抜き出して示してみよう。

Isee どうでもいい WOW WOW WOW
突然思ったんだ Yeah Yeah Yeah

君のことが好きだ

僕はこの胸に何かを感じたんだ

夏色のワンピースを着た君にハート盗まれそうだよ

いつだったか君が手にしていたのを見て
どんなことが書いてあるか気になってページめくり始めた

恋ってOut of the blue

どうでしょう。当然これらは4期生達に投影されている。新しいメンバーである彼女達のことが気付いたら好きになっている/好きになってしまいそう……描かれているのは、そんな"こちら"の心情だ。『そんなバカな…』が、初のメンバー加入を受けて、仲間が増えた期待感とワクワクを謳ったことと同質の意味合いである。

そういった点も踏まえた『日常』からの『Out of the blue』までの流れは、なるほどこれは、4期生達が全身全霊でこちらを振り向かせようとしていることがわかった。それは自分(達)のファンにさせる、ということもそうだし、「乃木坂46は任せろ」という頼もしい宣言でもある。

貴方達の愛した乃木坂46は私達が背負っていく、守っていく。そんな宣言は、彼女達もまた"こちら側"の想いを理解していることを示した『4番目の光』によって果たされる。これならば安心して彼女達に委ねてしまえると、『4番目の光』のパフォーマンス、そして今回のライブを観たことで強く感じた。

『4番目の光』披露前に語られた、遠藤の「私達にとっては宝物みたいな、それくらい大切で大事で強い想いの詰まってる曲です」という言葉がその想いを後押ししてくれる。

(曲を終えた後の照れたように肩をキュッとすくませる姿にもまたやられてしまいました)

<光は何処にある?>と藻掻く様子から始まった今回のライブ、ここまでの流れを順に追ってみると、締めくくりとなった<光は愛>という言葉が今まで以上の厚みを持ったように思う。

あまりにも頼もしい新世代の姿。それを10年目というグループにとっても大事なタイミングで大々的に示す為に、今回のライブは行われたはずだ。セットリストから見出してしまった明確なストーリーテリングは、そうした彼女達の姿をこちらに見せ付ける為のものだった。

9thバスラ期別ライブとして行われた理由はそれだ。完成されたグループの中で立ち上がった彼女達に、これからの未来を任せてしまいたい。

26.猫舌カモミールティー
27.おいでシャンプー
28.涙がまだ悲しみだった頃
29.シャキイズム

うっかり締めかけてしまいましたが、アンコール&アフター配信で披露された楽曲もストーリーテリングの内にあるのでまだ語りますね。

まずは田村真佑センターによる新曲。まず気付くのは、これまでの4期生楽曲の歌詞の流れから脱却していることだ。『4番目の光』は除くとして、既存4曲の共通性は上述の通りである。そして『猫舌カモミールティー』は以下。

せっかちだよねってあなたからいつも言われたけど
本当の意味を理解してないと今になって気付いた
すぐに答えを出せないこと世の中にあると
ようやくわかったあの夜の出来事

右か左か選ぶなら自分で決められたら
相手がいるのはそう簡単にいかない

猫舌カモミールティー
冷めちゃうそうその前に
ふ~ふ~しながら飲んでほしいのまだ熱いうちに
始まった恋も

観ながらばたばた書き写したので多少の誤りには目を瞑っていただくとして、これまでに見られたハッピーな高揚感というより、どこか迷いや行き詰まり感がある印象を受ける。

大サビでは<終わっちゃった恋も>と締められることも含め、少なくとも恋の始まりをピュアに描いたものではない。『I see…』でも駆け引きめいた場面が存在するが、それを突き抜けた感情が中心なので、こちらと近いとは言えないだろう。

恋が始まってから少し成熟し始めた頃の、その時期に生まれ始める葛藤を『猫舌カモミールティー』では謳っているのではないか。

4期生楽曲で描くテーマが変化しつつある事実だけ取っても、実際描かれた情景を鑑みても、今回のライブを以て4期生が次のフェーズに進むであろうことが予測される。それは遠藤が次表題曲のセンターを務めることも同様だ。

グループ加入から、活動の幅が徐々に広がり、新4期生合流があり、グループも緩やかに変化し、さあこれからどうするか…というタイミングなのだ。なんなら『猫舌カモミールティー』の歌詞には彼女達の現在のフェーズそのものが投影されているようにさえ見えてしまう。

(あとシンプルにメロディがめっちゃ好みのやつだった。爽やかだけど切なさ成分があって。)

しかし彼女達はまだまだピュアでフレッシュな魂も持ち合わせたままだ。むしろ乃木坂46というグループ自体が依然としてそうである、あるいは、他でもない彼女達がそうさせる。

ということを示すように、初期の表題曲にして、恋の始まりと予感を描いた『おいでシャンプー』を披露したのだ。

君の香りにときめくよ

誰より君のこと一番近くに感じたいんだいつも

これが恋なら夢で会いたい

『おいでシャンプー』におけるこれらの歌詞はまるで4期生楽曲のようだ。最も若いメンバーである4期生だからこそ、この楽曲を正面から語り直すことが出来る。しかし間奏で矢久保が「ナカダカナシカ」と唱えたことで、連綿と続いた歴史を循環させることも行われた。彼女達は1期生が積み上げてきた歴史を忘れていない。忘れないまま、楽曲を徐々に自分達のものにしていっている。

そう、4期生達は先輩達の陰を背負い続けている。「憧れを持つ者」であり続けた彼女達だが、それを負担に感じるでもなく、抵抗するでもなく、真っ直ぐ全部受け止めてそのまま走っている。

そして、いなくなってしまった悲しみを肌で感じているのもまた彼女達だ。だからこそ、癒えない痛みを『涙がまだ悲しみだった頃』に乗せてしまう。同時にこの曲もこちらの想いの代弁であるのだ。

悲しみを分かち合うことが出来るから、そしてそれを取り払うのが自分達のやるべきことだとわかっているから、最後の最後には<シャキッとしてちょうだい>とこちらを一喝するのだ。私達だってシャキッとするから。見ててくれよ。着いてきてくれよ。って、ことなんだと思う。

「新メンバーで後輩達」だった彼女達は、いよいよ「乃木坂46の中心人物」にこれからなっていく。それは今回のライブで見せた、着実に進化しているパフォーマンスにおいても、セットリストで語ったストーリーにおいても、覚悟を以て示された。

正直なところ、グループを好きになった頃にいたメンバーが卒業していくにつれちょっとずつ冷めていってしまうのかな、なんて考えていたりもしたんですが、どうやらまだまだその心配は無さそうです。

以上。



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