見出し画像

イマーシブとは?エンタメ業界だけじゃない!2024年のマーケティング注目キーワードに迫る

エンターテインメント業界を中心に注目を集めているキーワード「イマーシブ」。参加者がある世界観に深く入り込む「没入感」を意味します。

人の心を動かすイマーシブな体験をマーケティング活動に取り入れる企業も増えています。

イマーシブの概念やなぜ今イマーシブな体験が求められているのか、マーケティングにおける活用事例についてわかりやすく解説します。


イマーシブとは

トレンさん
IT企業のマーケター。物知りでトレンドにも敏感。
どんなちゃん
トレンさんの後輩。マイペースだが好奇心は旺盛。

どんな:最近よく聞く「イマーシブ」ってなんですか?

トレン:イマーシブ(immersive)というのは、日本語では「没入・没入感」という意味で、コンテンツの世界観に入り込む体験を「イマーシブ体験」という言い方をします。イマーシブ体験を提供するスポットは増えています。2024年の3月にお台場にイマーシブ・テーマパーク「イマーシブ・フォート東京」がオープンしたこともあり、注目キーワードになっています。

どんな:Googleトレンドでイマーシブを見ると、2022年の後半から検索数が徐々に伸びてきたみたいですね。エンターテインメント業界で流行っている言葉なのか~。

出典:Googleトレンド

トレン:その概念はエンタメ業界を中心に取り入れられてきましたが、昨今の購買行動は「体験」が重視されているため、消費者の心をつかむために企業が活用するケースも増えてきています。

イマーシブの起源と種類

トレン:イマーシブという言葉がエンタメ業界で用いられるようになったきっかけは、2000年代にロンドンで始まった「イマーシブシアター」からと言われています。

どんな:シアター…、劇場ですか?

トレン:はい。一般的な演劇と異なり、舞台と鑑賞席の境界がなく、観客も舞台を構成する一員となり物語世界に没入するというものです。イマーシブ・フォート東京にもイマーシブシアター型のアトラクション「ザ・シャーロック -ベイカー街連続殺人事件-」があります。19世紀のロンドンを模したセットの中を参加者は自由に移動でき、総勢48人のキャラクターが同時並行で展開しているストーリーのどれを追ってもいいというものです。

どんな:まさに物語の世界に入り込んだような経験ができるというわけですか!

トレン:2000年代に入り、イマーシブシアター以外にもさまざまな形でイマーシブな体験ができるコンテンツが増えていきました。例えば、「リアル脱出ゲーム」などの「謎解きコンテンツ」は、2015年には500億円の市場規模に成長しています。2016年には、お台場に「DMM.プラネッツ Art by teamLab」がオープンしました。作品と鑑賞者の境界をなくすというコンセプトの施設でした。

どんな:どっちも行ったことあります!

トレン:イマーシブという言葉が定着する前から、体験自体はしてきていたというわけですね。チームラボの体験型ミュージアムなどは技術の進化もあって実現できるようになりました。2016年にSONYがPlayStation VRを発売し、VRの普及が始まりました。2016年は「VR元年」とも呼ばれています。VRやARが発展したことで、それらを活用したイマーシブなコンテンツも増えてきています。

どんな:リアルばかりがイマーシブ体験ではないということですね。

トレン:ニッセイ基礎研究所では、イマーシブを「傍観型」と「非傍観型」の2つに分類しています。ミュージカルやVRのように自分から何かする必要がないものが「傍観型」、謎解きコンテンツのように自身もコンテンツを成立させる当事者となって能動的に動く必要があるものが「非傍観型」です。

消費潮流とイマーシブ

トレン:イマーシブな体験が求められるようになってきた背景には、消費潮流の変化とコロナ禍の影響もあります。

どんな:消費潮流の変化ってどういうことですか?

トレン:博報堂生活総合研究所では、消費の潮流は「モノ消費」「コト消費」「トキ消費」と変化してきたと分析しています。モノを持つこと自体に価値を見出したモノ消費。物質的に豊かになることで、コトの体験が価値となるコト消費が出てきました。さらに、コトの体験だけではなく、その場でしか味わえないトキを楽しむトキ消費が表れました。

どんな:トキ消費の流れの中でイマーシブ体験も求められるようになってきたということですね!

トレン:また、2019年末から始まったコロナ禍は、トキ消費のデジタル化を推し進めました。コロナ禍を通して多くの人は「体験の価値」を再認識したとも言えるでしょう。

どんな:人と会ったり、出かけたりする機会が減ると刺激が欲しくなるというか…。やっぱり情報だけあっても体感を伴わないとちょっと味気ないですもんね。

トレン:これらの流れを1枚にまとめてみましょう。

消費潮流と体験・参加型コンテンツの例(クリックで拡大)

どんな:時系列にするとわかりやすいですね!イマーシブ・フォート東京がオープンする前にも、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)や西武園ゆうえんちといったテーマパークでもイマーシブが取り入れられていたんですね?

トレン:ええ。これらにはある共通点があるんですよ。

刀とイマーシブ

トレン:西武園ゆうえんちのリニューアルもイマーシブ・フォート東京も、USJ復活の立役者として知られる森岡毅さんがCEOを務めるマーケティング支援会社「刀」が手がけているんです。2018年のハロウィン企画の一環でUSJにオープンした「ホテル・アルバート」は、高級ホテルをコンセプトとしたイマーシブ・シアターでした。

どんな:その頃からすでに没入型体験の取り組みが始まっていたんですね!

トレン:今や日本中で風物詩となったハロウィンも、きっかけは2011年に森岡さんがUSJで仕掛けた「ハロウィーン・ホラー・ナイト」だったと言われています。自由な仮装で非日常を楽しめる取り組みはUSJの大ヒット企画となりました。その当時から、森岡さんは体験・参加型コンテンツのインパクトに気づいていたんでしょうね。

どんな:西武園ゆうえんちは、あえて昭和の世界観にリニューアルしたって広告で見かけたような…。

トレン:「心あたたまる幸福感に包まれる世界」をコンセプトに、西武園ゆうえんちが持っていた懐かしいイメージを逆手にとって活かしたそうです。昭和の商店街が再現された空間では、商店街のさまざまな住人に扮したキャストが来場者も巻き込んだパフォーマンスを繰り広げています。リニューアルのタイミングは新型コロナの渦中にありましたが、それ以前に比べてチケットの売り上げは13倍になったそうです。

どんな:この流れに乗ってオープンしたのがイマーシブ・フォート東京なんですね!

西武園ゆうえんちの「夕日の丘商店街」(画像:アソビュー

企業の活用例

トレン:ブランド独自の価値の訴求や新たなファンづくりのためにイマーシブな体験を活用する企業も増えています。例えば、アサヒビールとかですね。

どんな:アサヒビールがイマーシブ?ちょっと想像つかないような…。

トレン:アサヒビール茨城工場にイマーシブな体験ができる「スーパードライ ミュージアム」があるんですよ。風や水しぶきなどによる演出も交えた体感型シアターでビールの充填工程を旅したり、立体的な映像で仕込釜の中で起きる工程を知ることができます。最後は本物のビールが飲める試飲室がゴールという、まさに五感でビールを楽しめる趣向になっているのです。

どんな:話を聞いただけでビールが飲みたくなってきました…。

スーパードライ ミュージアムの体験型コンテンツ(画像:アサヒビール公式サイト

トレン:イマーシブ体験の活用は何も大掛かりなものだけでなく、工夫次第ではスマホの中でも実現できます。最近、飲食店の厨房の様子を撮影したショート動画を見かけませんか?

どんな:TikTokやYouTubeでたまに流れてきます!なんかついつい見ちゃうんですよね~。

トレン:手際の良さもあってか、特に町中華を映したものが人気なようです。職人芸は人を魅了するものがあり、厨房のライブ感も相まって没入感のある動画にしやすいのでしょう。

どんな:スマホの縦型動画って、大画面で見るのとは別の臨場感があるんですよね~。これからどんなイマーシブ体験が生まれてくるか楽しみですし、私たちもビジネスのどこに活かせるか考えていかないとですね!

トレン:イマーシブをマーケティングに取り入れる上でポイントになる要素を解説した記事もあるのでチェックしてみてください。

どんな:イマーシブな体験を実感するためにいろんなテーマパークに行ってみるぞ~!あ、それって視察って名目で経費で落とせないですかね?

トレン:そこは自腹でお願いします…。


マーケティングを加速する新たな概念や注目キーワードに興味のある方は、ぜひ下のフォームからメルマガにご登録ください。