シストレに入門

シストレとは株や先物などの有価証券の値動きを計算で予測して売買する取引のことで、個人投資家を除く大口の投資家のほとんどはシストレを使って市場の値動きを追従してリスクを分散させています。

もちろん、株や先物の値動きを正確に予測することはできません。もしそんなことが可能な技術があれば、市場は成り立たなくなってしまいます。

しかし、「ある程度」の制約の中での値動きは予測する余地があり、これをうまく拾い上げていくのがシストレです。

例えば、ある日の 13時の時点での日経平均株価が 20,000円だったとします。これが、14時に 20,500円になっていたとして、15時時点での日経平均株価はどのように予測されるでしょうか。まず、過去と同じように上がり続けて 21,000円になる。反発して下がり、20,000円になる。と言った具合です。30,000円になることや、10,000円になることは考えづらいのです。

つまり、ある程度の確度で 15時時点での日経平均株価は 20,000円~21,000円になる確率が高い、ということが予測できます。

これを指標の値動きだけを使って予測するのがテクニカル分析、指標の値動き以外の変数を取り入れることをファンダメンタルズ分析と言います。

個人投資家は「わかりやすい」という点においてテクニカル分析を好みますが結論から言えばテクニカル分析でシストレはできません。さきほどの日経平均株価の予想の例はテクニカル分析ですが、値上がりか値下がりかを予測するのは困難で(理論的にはほぼ不可能)、「儲ける」という目的が投資だとしたら投資にならないのです。個人投資家とは縁のない世界ですが、いまの投資市場の売買の多くは超高速取引(ハイフリクエンシー)と呼ばれる業者によって行われています。超高速取引では、10msec(1/100秒)や 100msec(1/10秒)といった超近未来の価格を予測して売買します。これはテクニカル分析が可能な唯一といって良い分野なのですが、個人投資家は超高速取引には参入できません。

なぜこんなことが可能になるかというと、個人投資家をはじめとした非高速取引では市場価格の値動きを見てから取引に移ります。人間の知覚に頼るので、どうしても取引までに数秒のロスが発生します。この数秒のロスを初動で検知することで超高速取引を行います。市中の証券会社が使っている半自動の取引システムでも同じです。計算するために必要な msec(ミリセック、1/1000秒)単位でのロスが生じるため、この時間差を突いて取引に介入してきます。なぜそんなことが可能か?超高速取引業者は物理的に証券取引市場の近くにいるからです。証券取引市場のシステムが置かれているビルのすぐ隣のビルを買い占めて取引のためのサーバを設置します。通信とて物理法則に乗っ取って動いているので、物理的に近いものには敵いません。SF の世界ですがニュートリノ通信(光ファイバを使わない無線通信の一種)が可能になったとしても、やはり物理的な距離に比例することにかわりがありません。

一方のファンダメンタルズ分析というのは、例えば企業の株価をターゲットにしている場合、為替の値動き、決算発表より先にわかる売上データ、取引先の決算情報などを変数として計算することで「現在の市場での株価」が「高すぎる」か「安すぎる」かを予測できます。この予測に基づいて売買するのがファンダメンタルズ分析で、シストレの場合はこの手法がメインになります。

ファンダメンタルズ分析では、各種の変数を設定し、これをある方程式に入れて計算することで値動きを予測していきます。キモは使う「変数の選択」と、「方程式」です。組み合わせは無限にあるのでこの中で成績の良いものを探し当てていくのがシストレになります。

方程式とはどのようなものでしょうか。例えば、ある企業の株価について、天気と値動きに連動があることを発見したとします。ある鉄道会社の株価が、雨の日には値下がりしやすい、という法則をあなたが発見したとします。これは「天気」が変数で、「雨の日に値下がりする」が方程式です。これをシストレに実装するには「天気予報の内容を見て降水確率が高ければ売る」というプログラムを実行します。これを毎日繰り返すことでリターンが得られれば、シストレは成功したと言えます。

世の中にはこういう、「変数」と「方程式」で値動きが予測できる要素がいくつかあって世界中の投資家が血眼になって成績の良い組み合わせを探しています。

今回、私はシストレに入門ということで、まずは成績は追わず、少なくともプラスになる組み合わせを見つけようと考えました。目標としては年利6% です。これは月に 0.5% の利益を上げる必要があります。

月に 0.5% くらいカンタンじゃないの、と思われるかもしれませんが個人投資家がコンスタントに毎月0.5% の利益を出すのは容易ではないと思います。このくらいの利益率なら、市場連動型インデックスの ETF なりを買った方がよいと思います。

自分のシストレには一つのルールを設定します。やみくもに売買を繰り返すと「タイミング」という変数が多くなりすぎるので売買は「寄付」(よりつき)と「引け」、指値は「成行」(なりゆき)だけとします。寄付とは市場が取引を開始する瞬間だけ行われる取り引き、引けは市場が取引を終了する瞬間だけ行われる取り引きです。トリッキーな値動きがあるので理想的とは言えませんが、まずはここは変数を減らすために固定してしまいます。

指値は本来、買いたい価格、売りたい価格を指定するのですがこれも予測値を外すと取引が失敗する恐れがあるのでトータルで損になることは理解したうえで成行で注文します。成行とはこちらから指値を指定せず、相手方の言い値で売買する取引です。大急ぎで決済したいときなどに、損を覚悟で行う取引の一種ですが、今回は「タイミング」という変数を減らしたかったのでこれも固定しています。

ある程度、シストレの成績が見えてきたらこれらのタイミングや指値も変数に入れていくことで、改善する余地を残しています。

まずは 2ヶ月、取引を行ってみました。6回の買いと、5回の売りで、トータルの成績は -11,312円でした。(手数料含む)

突然のマイナスからスタートです。投資の軍資金は 100万円を想定しています。(シストレ以外の取引もあるので、軍資金100万円を超える取引が入っているが、目安としてはこの数字の中で行った)

1月目が -408円(-0.04%)、2月目が -10,904円(-1.09%)。

試行回数が少ないのでまだ失敗かは評価できません。もう少し、同じパラメータで取引を続けてみます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?