醜聞

会社の同僚と飲みに行った。男女数人でだ。そもそも話がシモに行きやすいタチだ。白熱して帰る。

帰る時にベロンベロンになった同僚の石塚がキスをしようとしてきた。
「帰らないでよー。ホテル行こうよー」

いや。無理だ無理だ無理ゲーだ。
後で何を言われるか分かりやしない。

「あたしタクシー乗るから。じゃあ」
と言ったあとにそいつが

「ママー」と言ったのは黙っていてやる。
だけで済む筈だった。

次の日。周囲がおかしい。
なんかこちらをチラ見しひそひそされている。

最後まで一緒に居た、石塚を捕まえて言う。
「あんたなんか有る事無い事言っただろ?」

石塚は首を振る。ニヤニヤしながら。

すると同僚の佐藤が血相を変えて会議室に来いと言っているのだ。嫌な予感がした。

佐藤が言う。
「お前ヤッたな?」

イヤイヤイヤイヤ勘弁してくださいよ。

佐藤が続ける。
「酷いメールが回ってるぞ。」

どれだけ酷いのか想像もつかないが、最悪の気分になっていたが、この後は何度か飲み行く小島とのMTGだ。ヤツに言う。

「酷い目に遭いましたよ」

小島が目をキラキラさせていうのだ。

「でも、アレ?本当でしょ?みんな信じてるよ。石塚の顔にゴールデンシャワーをぶっ掛けてSMやったんだって?」

ナイ!!!!!!
そんな趣味は断じて無いのだ。むしろ虐められた、、おっと趣味の話は後にしよう。

全員信じたっていう私のイメージはさて置き、
あまりにも酷いじゃないか。

会う同僚、会う同僚が言う。仲の良い方は笑ってやがる。仲が大して良くなかった同僚の目は侮蔑だ。

私と話した事もロクに無いあいつらから受けた侮蔑の目は忘れようにも忘れられ無い。

四面楚歌という言葉を思い出す。
そうか、これが四面楚歌か。でも項羽の側には虞美人がいた。味方は居ないなあ誰も。
だが、私のチタン製のハートはこんな事じゃ折れないのだ。

その後に人事と社長の取った態度が酷い。

社長には何度も呼び出され、終いには
「お前とエッチした夢を見た。」
と言われる。

ココは流石にチタン製の心も折れそうになった。こいつもかと。そして人事から通達が来る。

「会議室に部門の奴ら集めてやるから、全員の前で謝罪しろ」

やってもいない事で謝るなんて嫌だ。
人事が囁く。
「これで一連の騒ぎは収まるんだよ」

大人ってきったねぇなあ。
チクショウ。チクショウ。言ってやらあ。

「噂になりすみません。事実無根ですが、日頃の態度が問題だと反省しております」

涙が溢れる。当然石塚は飛ばされた。
苦々しい思い出だ。

数年後、歯が一本しか生えてい無い部長がセクハラで訴えられた。何人もの派遣社員にセクハラをしたと言う累積でだ。

皆の前で謝罪するのかと思いきや、
彼の受けた処罰は、たった一枚の通達。

ー譴責とする。

!!!!酷い差別。
だが私のチタンが更に強い素材に変化した事だけは間違いないのだ。

そして、とうに会社を辞めた石塚からLineが届く。「イカさん、2人で飲みに行きましょう」と。新たなレジェンドは生まれないのだ。2度と。

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