酒どろぼう

友人達とピクニック、ジュークボックスのあるバーへとはしごをした土曜日。
散々ジュークボックスで懐かしの曲をかけては歌ったり踊ったりと遊んだ後に、シメにもう一軒行こうぜと行ったバーがある。

3人はUbar、残りの3人は徒歩で夜のブルックリンをバーまでと歩く。

1月としては珍しく暖かいその日。昼は18度と春のようでリスも冬眠から外へ出てくる、そんな日の夜道を歩くのはアルコールを覚ますのにも丁度いい。

ついた店は南米出身のニューヨーカーに人気の様で、店内はスペイン語が飛び交い、ラテンの曲が流れ、明るいムードで非常にごった返していた。

さて、先発隊は店のテラスでゆっくりと飲んでいるようなので、まるで東京の通勤ラッシュの電車のようなギュウギュウの人の隙間を抜け、合流。一息付きゆっくりと片手ビールに夜空を見上げていると、ある中年の男性が "ちょっといいかい?" と私に言う。

何だろうと訝しげな顔をしたせいだろうか、彼が慌てて言う。

"いや、俺はここのオーナーなんだ。うちの店安いし、混んでるだろう? でな、ちょうど君の横の、この窓。ここから厨房が見えるんだよ。見えるかい? どうやらこの頃うちの従業員にふてえ奴が居て、その混雑を利用して店の酒を勝手に販売して、金をがめてるってことまでは俺は掴んだんだけど、証拠がなかったからここで今見張ってんだ。ほらみてみて、あいつだ、やっぱりだ!"

笑っちゃうほどのサプライズ。だが目の前の窓の中には店の冷蔵庫を空け、酒を取り出し金を客からダイレクトで貰いズボンにしまう男の姿が。

ナニナニ?どうしたの?と友人等に聞かれ、事象を説明している間にオーナーは、消えていた。

ええー!?となり皆で窓を覗き込んだ目の前には、怒っているオーナーとたじろぐ従業員の姿。

些細な悩みなど吹き飛ぶようなその日。ずっと暖かければいいのだが来週末は2℃である。

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