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社労士的就業規則の作り方 11

鹿児島で社労士をしています原田です。
 信頼水準1%未満のアンケート調査で100%の好感度を上げている就業規則の作り方です。

ここでは厚労省モデルを使って、社労士が就業規則に対してどうアプローチするかを案内しています。


第4章 労働時間、休憩及び休日 第23条

年次有給休暇について

 表は転載できないので、表に関する部分だけ文章を変えてます。

(年次有給休暇)
第23条 採用日から6か月間継続勤務し、所定労働日の8割以上出勤した労働者に対 しては、10日の年次有給休暇を与える。その後1年間継続勤務するごとに、当該1 年間において所定労働日の8割以上出勤した労働者に対しては、下の表1のとおり勤続 期間に応じた日数の年次有給休暇を与える。
2 前項の規定にかかわらず、週所定労働時間30時間未満であり、かつ、週所定労働 日数が4日以下(週以外の期間によって所定労働日数を定める労働者については年間 所定労働日数が216日以下)の労働者に対しては、下の表2のとおり所定労働日数及 び勤続期間に応じた日数の年次有給休暇を与える。
3 第1項又は第2項の年次有給休暇は、労働者があらかじめ請求する時季に取得させ る。ただし、労働者が請求した時季に年次有給休暇を取得させることが事業の正常な 運営を妨げる場合は、他の時季に取得させることがある。
4 前項の規定にかかわらず、労働者代表との書面による協定により、各労働者の有す る年次有給休暇日数のうち5日を超える部分について、あらかじめ時季を指定して取得させることがある。
5 第1項又は第2項の年次有給休暇が 10 日以上与えられた労働者に対しては、第3項 の規定にかかわらず、付与日から1年以内に、当該労働者の有する年次有給休暇日数 のうち5日について、会社が労働者の意見を聴取し、その意見を尊重した上で、あら かじめ時季を指定して取得させる。ただし、労働者が第3項又は第4項の規定による 年次有給休暇を取得した場合においては、当該取得した日数分を5日から控除するも のとする。
6 第1項及び第2項の出勤率の算定に当たっては、下記の期間については出勤したも のとして取り扱う。
① 年次有給休暇を取得した期間
② 産前産後の休業期間
③ 育児・介護休業法に基づく育児休業及び介護休業した期間
④ 業務上の負傷又は疾病により療養のために休業した期間
7 付与日から1年以内に取得しなかった年次有給休暇は、付与日から2年以内に限り 繰り越して取得することができる。
8 前項について、繰り越された年次有給休暇とその後付与された年次有給休暇のいずれも取得できる場合には、繰り越された年次有給休暇から取得させる。
9 会社は、毎月の賃金計算締切日における年次有給休暇の残日数を、当該賃金の支払明細書に記載して各労働者に通知する。

モデル就業規則 令和5年7月版 厚生労働省労働基準局監督課
表1 週30時間以上勤務する労働者の付与日数
表2 週30時間未満で勤務する労働者の付与日数

 2019年4月から10日以上付与される労働者に5日以上の付与義務となって、誰でも使える有給休暇制度が多くの方に知れ渡った有給の部分です。

 過去には従業員に「読ませたい就業規則」と、従業員に「読ませたくない就業規則」がありました。しかも「読ませたくない」中小企業の方が多めでした。
 就業規則は賃金規定を除けば、ほとんどが従業員への禁止や義務事項であり、むしろ積極的に読ませるべきなのですが、この年次有給休暇を与えたくない一心から、「読ませたくない」という言葉が出ていた部分があります。

 有給義務化と様々な労働判例での就業規則の重要性も相まって、現在は就業規則が「読ませたい」派が主流です。


第1項・第2項ともに法令通りです。
大手企業、第三セクター、社会福祉法人、公営から民営化した法人、行政の外郭団体等では、入社日から有給付与も非常に多いです。

 最初の半年間に限り、入社時3~5日付与で半年目で合計10日になる付与制度を採用している企業もあります。その場合の多くは、特定の日に一斉付与する制度(斉一的付与)を採用していることが理由だったりします。
(4月1日一斉付与で、3月31日入社だと、入社翌日に10日有給が付与されることを防ぐため)

第3項は、いわゆる時季指定権と時季変更権の話です。これで裁判になっている事例も多数あるので、どちらも絶対の権利ではない程度は知っておきましょう。

第4項は、いわゆる計画的付与制度のことです。年末年始を有給にしてしまう企業があるので、不利益変更との整合性を考えながら調整しましょう。

第5項は、最初にお話しした有給義務化の話です。

第6項は、法令通り。育休中に有給が増える問題は、問い合わせが多いです。答えは増えます。労働日が無いので取得はできません。5日付与義務との関係性も問題が起こってますが、全休でない限り5日付与義務は発生します。

第7項は、2年の消滅時効との関係。個人的には民法改正による債権の時効延長に伴って、いずれ5年になるのではないかと予測しています。

第8項は、有給の先入れ先出しを明文化したもの。この文章が無くても、この文章の通りになります。発生した方から取得させる、いわゆる後入れ先出方式を採用している企業もあります。90%以上は社労士の入れ知恵です。
 私もその方式があることは、事業主に伝えますが、これを導入しても、これが有効になる場合のほとんどは退職時です。通常でも、トラブルが起こりやすい退職時に更に火をつけてしまうものだと考えています。
「退職者から『私の会社はあまりにセコいクソ会社』と言われる程度に非常に評判が悪いので、私はお勧めしていません」と必ず付け加えてお話しています。企業側就業規則と言われる諸規定の中で、一番評判が悪いのは事実です。

第9項は、給与明細の記載を義務化する条文。記載した方が分かりやすいので、取得促進効果があります。逆に記載しないことで、取得抑止を狙っていると思われないように書くという考え方もあります。この条文は、書いてもいいし、書かなくてもいいですが、書いたら通知しなければなりません。通知の法令上の義務はありません。


 この条文に限らずですが、ここに挙げている部分は、社労士目線で作る時の話であり、モデル規則の解説に書いてあることには、あまり触れていません。そちらもしっかり読んだ上で、現実をしっかり踏まえて制度に落とし、更に最新の法令を確認することが必要です。

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