楽しむこととラクすること

楽器を練習したり、人前で演奏するのにあたって、ネットでの発信が容易にできるようになったこともあるのか、ひと昔前のスポ根的な意識のカウンターとして、楽しむことを中心に据える考え方が多くなっているように感じます。
「音楽は音を楽しむと書くんだから、楽しくないのは音楽じゃない」という意見もありますが、これについては聴く側の意識であって、演奏する側は「音を楽しませる」という意識も必要だと思います。
(そもそも英語の "music" なんかには楽しいという字は入っていないですが・・・)

楽器の演奏を、「楽しい」ということを中心に考えた場合の弊害としては、やっていて楽しくない練習をやらなくなってしまうという問題があります。
どんな練習でも楽しめる、という状況が作れるならそれは望ましいですが、やりたくない・・・面倒だな・・・と感じる種類の練習がある場合は、楽しむことよりラクすることを優先するのが良いと思います。

ラクするというのは具体的には、練習を効率的にする、意識のハードルを下げるというような考え方です。

絶対的な「効率的な練習」というのは探すのが困難ですから、それ以外に効率を上げるとしたら、練習時間を多めに確保しておくというのが意外に重要です。
これは必ずしも長時間練習するということではなく、たとえば1時間の空き時間に1時間みっちり練習しようと思うとしんどくなるので、2時間の時間を確保しておいて、1-2時間くらい練習しようという意識を持つ、ということです。
(前者の時間で練習しようと思うとラクではないし、間違いなく楽しくなくなります)

意識のハードルを下げるというのは、ただでさえやりたくない練習をするのですから、無理して長時間はやらなくてもいいやというような意識をもつことです。
これによって心理的にはかなりラクになると思います。
ただし、1日当たりの時間は短くなったとしても、必ず毎日続けるということが重要で、また定期的に上達を検証する必要もあります。

これらの意識はつまり、楽しいとまでは行かなくても、すごく楽しくない(つまらない・つらい)という状況は回避しようという考え方で、練習が楽しくないと感じた際に意識してみると良いと思います。

演奏を「楽しむ」という考え方は、プロミュージシャンからも発せられることが多いですが、半分はリップサービスであり、またこれは楽しくない練習を積み重ねた結果、本番では楽しんで演奏ができるということでもあると思います。
アマチュアの場合は(私もそうですが・・・)本番で楽しめればいいやという人も多いと思いますが、やはり冒頭で書いたように、人前で演奏する場合は聴いている人が楽しめるような演奏をすることで自分も楽しくなるという風に考えられた方が、より音楽らしいのではないかと思います。

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