小匙の書室95 本格ミステリ大賞候補作
ミステリのランキングって、たくさんありますよね。
数を把握しておかないと発表の時期に何が何だかわからなくなっててんやわんやするのがオチです。
正直なところ私も正確にランキングの数を把握しているわけでもないので、「あっ、そうだ、この賞もあるんだった!」となることがあるのです。
それが今回の『本格ミステリ大賞』ってわけです。
本格ミステリ大賞といえば──。
『葉桜の季節に君を想うということ』(歌野晶午)
『容疑者Xの献身』(東野圭吾)
『シャドウ』(道尾秀介)
『隻眼の少女』(麻耶雄嵩)
『屍人荘の殺人』(今村昌弘)
『medium 霊媒探偵城塚翡翠』(相沢沙呼)
『蝉かえる』(櫻田智也)
『大鞠家殺人事件』(芦辺拓)
『黒牢城』(米澤穂信)
『名探偵のいけにえ 人民教会殺人事件』(白井智之)
などと、ミステリ界隈に衝撃をもたらした作品がズラッと並ぶのです。
そして今回!
第24回目となる賞の候補作が発表されました!!
いや〜SNSで一度は目にしたタイトルばかりで、【小説部門】に至っては『涜神館殺人事件』(手代木正太郎)を除いて全て読了済みという次第。
さて。今回は小説部門に絞って、お話ししていこうかなと思います。
青崎有吾 著
地雷グリコ
繰り広げられるのはあくまでも頭脳戦。しかし手法は本格ミステリ。ならば候補に挙がるのも当然。
まず一言申し上げるなら、
めっっっちゃ面白いよ。
ということ。
第一話から本格頭脳戦が始まり、強大な敵と、それを飄々と相手にする射守矢の攻防が楽しいのです。
ピンチはチャンス。
射守矢の仕掛けた罠や策が遺憾無く発動されるとき、読書は思わず仰け反ると共に「最高だ」と感嘆することでしょう。
続編を期待している作品です。
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白井智之 著
エレファントヘッド
発売前から、「ネタバレ厳禁」はまだしも「事前情報なしに読んでください」とアナウンスされる作品って滅多にありません。
読了済みの中には「あらすじすら読まない方がいいかも」なんて声が出てくるくらい、本作で展開される謎はえげつない衝撃をもたらすのです。
前回2023年に大賞を受賞した『名探偵のいけにえ 人民教会殺人事件』が遊園地の白井ならば、『エレファントヘッド』はロッククライミングの白井といえるかもしれません。
確かに人は選ぶかもしれないが、「何を食ったらそんな発想が出てくるのか」を味わえる至高のミステリです。
2連覇、なるか。
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手代木正太郎 著
涜神館殺人事件
まずそのタイトルに圧倒された。
トクシンとは、神聖なものの汚すことを示しています。
『殺人と超常現象の組み合わさったゴシックホラーミステリ』という触れ込みは気になっていたものの、「難しそうだなあ……」という印象が拭えずに現在まで手に取るに至っていませんでした。
でもこの表紙はかっこいい。
昨年末、SNSで本作をベストミステリに挙げている声もちらほら見かけていたので、機会があれば読んでみたいなとは思います。
そもそも館が舞台ってだけで心躍りますよね。
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方丈貴恵 著
アミュレット・ホテル
鮎川哲也賞受賞作である『時空旅行者の砂時計』を皮切りに、特殊設定ミステリの女王(と私が勝手に読んでいる)方丈先生。
その単著最新作は、“犯罪者が宿泊するホテル”が舞台。“敷地内で殺人を犯さなければなんでもあり”はある意味で特殊設定ではあるものの、どちらかといえば現実的なスタイル。
収録された謎はどれも精緻なロジックがあり、中でも『タイタンの殺人』は頭が煮詰まるかと思うほどでした。読後、疲れを癒すスイーツが必要です。
果たして、結果はどうなるのでしょうか……。
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米澤穂信 著
可燃物
米澤先生はやはり強い。
SFや日常の謎、異国や歴史と様々なジャンルがある著者が初めて挑む『警察ミステリ』。とはいえ、著者と刑事が絡む作品には『夜警(『満願』収録)』があるので、本作は私にとってそれ以来の警察小説となりました。
『可燃物』は各話ごとに考えるべき謎が明確に提示されるので、著者対読者の構図でもあるかもしれません。
また読み味もサッパリしているので鋭いロジックを心ゆくまで堪能することができるのです。
『黒牢城』から2年ぶりの受賞なるか。そちらも注目したい作品です。
小説部門、どれが獲ってもおかしくはありません。
秋口の各種ミステリランキングに併せて刊行された作品が選ばれるのか、その時期を外して刊行された『地雷グリコ』が横から掻っ攫っていくのか。楽しみです。
ここまでお読みくださりありがとうございました📚
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