紗衣

大学生 昔のことや空想のことを書きます

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  • 昔のこと

    すべて著者のノンフィクションです。

最近の記事

煙草とオレンジ

これは先日のライブで、とある曲を聴いて思い出した話。  彼と初めて会った日、彼からは煙草の匂いがしなかった。 日頃から社会人1年目のストレスを抱え、飲酒と喫煙を繰り返していた彼は、私と初めて会う一週間前から禁酒と禁煙をしていたようで、未成年の恋人と会う日は健全でいたい、恋人を大切にしたいという彼の誠実さだと16の私は感じた。 そんな彼からは柑橘系の整髪料の爽やかな匂いがして、秋の淡い風は彼がまとう空気と混ざり合い、私の鼻の前を何食わぬ顔で吹いてゆく。  その日、私たちは

    • 今世紀最大に好きだった人が結婚しました

       はい、こんにちは〜 タイトルから察することが出来るように筆者は今、若干心が壊れているかもしれません。そんな人間の文章ですので、色々ぼろぼろです。注意しながら読み進めることをおすすめします。 では、ご覧ください。  11月某日、いつものようにSNSを確認していたら幸せそうな写真を見つけました。そこには、ウェディング姿の女性とタキシードを身に纏った男性が、海を背景に、幸せそうに、映っていました。逆光で顔ははっきり見えませんでした。 ですが、私にははっきりと鮮明に思い出される

      • 好きな人っていますか?

         11月は月の満ち欠けが早い、気がします。  幼少期からディズニー映画とジブリ映画ばかり観てきたわけですから、愛というものは目に見えて深い絆で繋がっており、高い水準のもと構築されてゆくものだと昔から信じて疑いませんでした。  しかし、最近は自分の愛に対しての見方を客観視すればするほど失望します。 18年積み上げてきたこの理想、というか私にとっての「あたりまえの愛の概念」を壊し、あわよくば世間に蔓延した普通の愛を私にとっての愛の概念として定着させ、己の身体ひとつで風を切る強

        • わたしのゆめ&お知らせ

           夢と現実が、違うようで同じように動いている気がする時がある。明日行く予定の場所が夢の中で舞台になっていたり、夢で見たオムライスを次の日偶然食べていたり。 さて、あなたは夢占いを信じますか? 私は信じます。歯が抜ける夢を見た日は、いつもに比べて見通しの悪い交差点を慎重に渡り、好きな人が夢の中でハグをしてくれた日には欲求不満と思われる自分の不純さに少々の虚しさを覚える。 「夢占いを信じます」と言ったが正直なところ、私は単純な部分があるから「信じる」というか、「信じてしまう」

        煙草とオレンジ

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          4本

        記事

          太陽の見えない昼

           窓では沢山の雨粒が当たっては弾け、当たっては弾けを繰り返していた。 低めのベットに寝っ転がり、そちらに目をやる。こんな日に六畳の部屋に1人で籠ると、本当にこの世界には自分1人しかいないという錯覚を引き起こしそうだ。もう既に引き起こしているから、このように感傷に浸っている様な気もするが。 雨の降られる日には誰かに会いたくなる。 誰かに何か話したくなるのだ。雨は嫌いだが、なんだかんだ雨の日は後々思い出すと大切な日だったことが多い。純粋に真っ直ぐな恋心をそのままにできなくなって

          太陽の見えない昼

          結露が垂れる頃に

           19歳にしては小さな手がいちまい紙をめくる。キメの整った柔らかい手指のしわと、短く切り揃えたつめが紙と擦れ音をたてる。 腕を組み直したらまたゆっくり瞬きをした。伏目に君は表紙を揺らし、疲れたのだろうか咳払いをしたり深く呼吸をしたり。 そんな今、私は君の文章を書いている ここに紙と鉛筆があればどれだけの言葉を紡ぐことができただろうか。むしろ、無くて良かったかもしれない。きっと君は、私の姿を見て笑うからね。  ところで、君の口癖が「大丈夫?」なことの良し悪しについて私は

          結露が垂れる頃に

          椎名林檎様のライナーノーツを書きました

           1200字でライナーノーツを書こうという最高の試験課題がありました。  ひとりのアーティストを選べ、とのことだったので、誰にしようかな〜あの人もいいし、あのバンドは個人的に最近アツいな…と色々考えた結果、1200字書いて時間を費やすならやはり林檎さんがいいな…となりましてライナーノーツを書きました。(烏滸がましいですね!!)  字数制限のある中で書いたものですので、もっと書きたいこと、書きたい曲がありましたが、なんとか収めました。ではどうぞ  1978年、この世に生を授

          椎名林檎様のライナーノーツを書きました

          今世紀最大の恋の終わり

           もうきっと本人はこれを見ないので、見ないと信じてこれを書きます。  高校時代、半年付き合った5歳年上の彼にふられて別れたもののずっと忘れられずに、今年の春に意を決して会った私のお話です。  私は彼のことがめっちゃめちゃに大好きでした。ガチきもいくらいに。彼の選ぶ言葉ひとつひとつ、全てに全力で惚れていて、もはや存在が好きでした。どんなふうに好きなの?と聞かれたら こうやって答えられるくらいには想っていました。彼のままの彼を守り通したかったんです。  別れた後も、付き合

          今世紀最大の恋の終わり

          恋人が帰ったあとの部屋

          ええと、何から書けばいいかな。とりあえず今さっきまでいた恋人が、私の部屋から帰るべきおうちに帰りました。いつもだったら2人で少し歩いてさよならをしますが、本日は既に空が暗いので玄関まで送りました、初めて。 あーん帰ったか…と思って、さっきまで2人きりの孤島だった私の部屋にひとり無心で戻ったら、そこは恋人がくる前の部屋ではなくなってしまっていました。 私の恋人はいい匂いがします。香水とかコロンじゃあなくてその人の匂い。私の好きな匂い。和のお香と少し洋風のLOEW

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          300

          恋人が帰ったあとの部屋

          甘い記憶

          香りに記憶を支配されていると思ったことはあるだろうか。例えば、特徴的な香りのする人と出会い、似たような香りを嗅ぐたびにその人を思い出したり、もう一度会いたくなったり。実際に巷では、五感の中で嗅覚が1番記憶に残りやすいと言われている。「記憶を支配している」と言うと、言い過ぎなようにも思えるが、私の「記憶を支配している」ものは「煙草」だと思う。  私がまだ幼すぎて、二本の足で歩くことすらできなかった時の話だ。私の父は喫煙者だった。長女の私が生まれても禁煙できなかった父は

          甘い記憶

          キーホルダー貰うのマジ困る話

          プレゼントとかお土産でキーホルダー貰ったことあります?私はあるんですけど、あれどう使っていいのか分からなくて困るんです。大切な人から貰ったものであればあるほど困るんですよね。 昔からお気に入りの可愛いぷにぷにのシールは絶対に使わなかったし、道端の隅に咲く雑草の可愛い小さいやつは絶対に摘めなかったし。きっと、自分の手を加えることによってそこにある良さは変わってしまうって、何処かで気づいてるから触れられないんですよ。でも、時が経ってしまったら? お気に入りの可愛

          キーホルダー貰うのマジ困る話

          美しい日本語の静けさ

          先日、国語の授業を受けた。その時に読んだひとつのエッセイは、小川洋子さんが書いた「人間の哀しさ」(深き心の底より)だった。 とある出来事から、人間の弱さを目の当たりにした時、可哀想でもない、自分自身の後悔でもない、もっと根本的なものが揺さぶられた。これこそが「あわれ」という意味で、深くしみじみといとおしく、儚い。 というようなことが綴られていた。 これを読んだ時、まず初めに思ったのは日本人の文章だなあ、ということだ(まあ当たり前ではあるのだが…)。著者の考え方が私

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