八月。じりじりと照り付けるような暑さの中、僕は石でできた階段を上がっていた。右手には吹き出る汗を何度も拭ったハンカチ。そして左手には赤い彼岸花を汗ばむ手で持っていた。 長い石段を登り切り、来た方向を振り返る。眺めた先には青く澄んだ海が広がっていた。太陽が水面を照らして、キラキラと光っている。 ――懐かしい。あの日もこんなだったかな。 なんて感傷に浸りながらつま先を半回転させ、前へ歩きだす。 なんだろう。もうずっと前の話なのに、ほんのちょっと前だと勘違いしてしまうような感覚。で