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フォースプレートによる床反力計測

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フォースプレートの計測原理,フォースプレートで計測される物理量の意味など
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フォースプレートによる床反力計測#7 〜ゴルフスイングにおける床反力の伝達#2〜

前章 で,床反力とゴルフクラブ間での,身体各部位間の相互作用(おしくらまんじゅう)によって,動力源としての床反力とその伝達を行っていることを述べ,その相互作用の観察の仕方として,筋電計を使用した計測の研究例を示した. ここでは,身体各部位の相互作用を間接的に観察することになるが,ゴルフスイング中のフォースプレートによって計測したCOPと重心位置,モーションキャプチャーによって計測した頭の位置などを観察した例を示していく. スイング中の身体重心と圧力中心の軌跡変化 身体

フォースプレートによる床反力計測#6 〜ゴルフスイングにおける床反力の伝達#1〜

復習 マガジン「身体運動におけるパターン形成」の第4章「ゴルフスイング」 にて,ゴルフスイングにおける主として腕とクラブの運動パターン形成について述べた.スイングの前半は,腕とクラブを一体化することで回転する.そしてスイング後半に,腕の回転を少し緩めることでクラブの遠心力による自然な回転を促すことで,腕に対して相対的にクラブが回転し始めることを述べた. このスイングの加速原理がゴルフスイングの運動を強く拘束しているが,この両腕の回転の動力源の確保が重要となる.エネルギー

フォースプレートによる床反力計測#5 〜リバウンドジャンプとRJ指数〜

フォースプレートを利用することで,様々な身体の能力を計測することができるが,ここからフォースプレートで計測することができる指標や解析方法などについて述べる. 1.身体の弾性特性 スポーツにおける身体能力を評するときに「バネ」として例える時がある.バレーボールのような高いジャンプを行うときに「バネのような」と例えることもあれば,陸上競技の走り高跳びでは身体を「硬いバネ」のように床面を蹴ることもある.競技に適したバネにもいろいろなタイプがある. そこで,実際にスポーツのパフ

フォースプレートによる床反力計測#4 〜身体側からみた床反力の物理的意味〜

前章までに,フォースプレートから見た床反力の物理的意味について述べた.ここから,身体側から見た床反力の物理的意味について述べていきたい. 1.フォースプレートで計測できること フォースプレートには4つの力覚センサが硬いプレートの下に埋め込まれ,その4つのセンサで 床反力$${\bm{F}}$$ を計測する.さらにセンサの位置などの情報から フォースプレート座標系$${\text{S}}$$まわりの力のモーメント$${\bm{M}_s}$$ を計算して出力する.力学

フォースプレートによる床反力計測#3 〜複数のフォースプレートによる計測〜

はじめに 前章で,フォースプレートの力学について概説したが,ここでは複数のフォースプレートを使用する場合に,別の基準座標系から見た合成の力のモーメントやCOPの計算などについて述べる. まずは,座標軸が平行移動した$${n}$$個のフォースプレートの計算例を取り上げる.なお,フォースプレートには$${i}$$番目のフォースプレートとして,下付きの記号で記述する.また図では便宜上二つのフォースプレートを図示する. ここで,全てのフォースプレートの高さは同じであるとし,基準

フォースプレートによる床反力計測#2 〜フォースプレートの力学〜

フォースプレートの力学はじめに 前章で,フォースプレートで計測可能な4つの物理量について概説したが,ここで,その物理的意味と数理について述べる. なお,本章ではバイオメカニクスの解析を意識し,「身体に作用する力(=床・地面に作用する反力)」として床反力(地面反力,ground reaction force)を記述し,座標系も解析用の$${z}$$軸が鉛直上向きの座標系を使用する.一方,多くのフォースプレートメーカーは,$${z}$$軸が鉛直下向きの座標系を採用し,「床に作

フォースプレートによる床反力計測#1 〜フォースプレートの概要〜

フォースプレートとは? フォースプレート上の人(または動物など)に作用する力,すなわち床反力(ground reaction force)を計測する目的のセンサである.フォースプレートの大きさも様々だが,400 x 600,600 x 900 mmなどのサイズが一般的である. そのフォースプレート(force platform,またはforce plate)によって物体の重さを測定することもできるが,人が動いて動的に変化する床反力を高いサンプリングレート(1kHz程度)で