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【枯れ葉】これぞ、男と女が恋する話だよ

恋愛映画(ドラマ)はみんないい部屋住みすぎ。
いい服着すぎ。
いい靴履きすぎ。
いいカバン持ちすぎ。
普通のOLが小型犬飼いすぎ。
普通のリーマンが毛先遊ばせすぎ。
そんなんじゃないんや、普通ってのは。
[普通]の見積もり甘すぎ。
手取り20万円前後で5,6年暮らしてみてくれ。

と思いませんか。
私は映画を観るとしょっちゅう思います。
ストーリー本線に集中できないこともあります。
先日も松本清張原作のスペシャルドラマを観ていてたら、波瑠がダサくて冴えない地味女を演じていました。
ですが、どうみても、頭のてっぺんから靴の先まで磨きあげられた美の塊でした。

話はそれましたが、『枯れ葉』です。
フィンランドの最低賃金で働く中年の男女が恋に落ち、クソみたいな生活を送りながらすれ違ったりケンカしたりして、また手を取り合う。そんな話です。

大きな事件は起こりません。
2人の少し暗くて湿っぽい生活がメインです。
楽しいことがないのだから、2人とも、いや登場人物のほとんどが、基本仏頂面です。
男はアル中でクビになり、女は廃棄食品をホームレスに譲ったことでクビになります。仏頂面で当たり前です。
それって超大事なことじゃないですか?
嘘ばっかりなんだもん。恋愛映画って。

そんな本作の中にもクスッと笑えるところや「イカしてる!!」と興奮するところは実はいくつもあります。
登場人物たちはあくまで淡々と眉間にしわ寄せて生活しているのに、です。
たとえばヒロインのアンザが職場のスーパーマーケットをクビにされたのを見て「あたしもこんな所ごめんだわ」「いや、君は正直に言ったから許してやろう」「お断りよ」と一緒に仕事辞めちゃう同僚たち。
職場を後にするとき、相変わらず無口だけど、手を握りあってブンブン振り回してるの、最高にイカしてた。
後先考えてないかもしれないけど、中年になっても後先考えず悪態つけるの、いいよ。

もう一つ。
アンザは次の職場として何かの作業場に就職するんだけど、そこへ野良犬が迷い込むんです。
同僚と、保健所に送るしかないけど、殺処分されちゃうだろうね…と話しているとアンザが「私が連れて帰る」と言って飼い始めるんです。
このシーンが好き。
アンザは無口で無愛想だけど、優しくて可愛いものが好きな女なんだってことがよくわかる。
このわんちゃん、明るい琥珀色の目をしていて、なんとも絶妙な雑種感で、でも誇り高い感じで、素晴らしい助演俳優なのです…!

無口で地味な作品だけど、2人は大事なことは言葉にしているんですね。
何が嫌だとか、会えない間どう思っていたかとか、ハッキリ言っている。だから史上最少言語でケンカもしている。
言葉ばっかり多くて肝心なことは言えない意気地無しな自分は、このかっこ悪いはずの2人をかっこいいなぁと思ったのです。

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