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826首相「解散、今は考えず」

≪岸田首相(自民党総裁)は(4月)24日の党役員五回で、自民党が衆参5補欠選挙を「4勝1敗で勝ち越したことを受け、「国民の声をしっかり受け止め、政府・与党が連携して、力強く国政を前進させていきたい」と述べた。衆院解散に関しては、同日午前、首相官邸で「今、解散・総選挙は考えてない」と記者団に語った。≫
≪岸田内閣の「中間評価」となった衆参5補欠選挙は、自民党が接戦に苦しみながらも4勝1敗で勝ち越した。次期衆院選への課題を残したものの、今後も内閣支持率の回復が続けば、衆院解散・総選挙を求める党内の声は大きくなりそうだ。≫

いずれも読売新聞4月25日の記事。政治部の記者が書いたようだがどうもしっくりこない。野党が揚げ足取りに終始して議会の体をなしていないとの国民のいら立ちはたしかにある。しかしなぜいきなり衆院解散の是非なのか。当の総理が「今、解散・総選挙は考えてない」と否定しているのに。
 衆議院が解散になれば国を挙げての選挙運動になる。総理大臣は自分を応援する者に勝ってもらうべく応援演説に走り回る。自身の選挙もある。その間の非常事態への対処は大丈夫か。国際関係はあちらもこちらも一触即発状態。総理大臣の頭が選挙にかかりきりで大丈夫か。身の危険もある。先日も和歌山での爆発物テロで危うく難を逃れたばかり。職務を離脱する重傷にでもなれば辞任することになり、次の総理大臣選任で国内の政治決定機構は機能しなくなる。
 そうしたことを考えれば衆院解散・総選挙は滅多にやるべきものではない。どのみち衆院には4年の任期があり、そのときは総選挙になるのだ。
 とは言いつつも「文句ばかりで建設的でない議員どもにお灸をすえてやりたい。批判するだけが議員の職務だと思っていたら大まちがい。選挙に落ちればただの人だぞ。そう思い知らせたくなる」心情も分かる。昨今の国会論議を聞いていると国民だって総理に同情する。

でもいきなり解散はどうか。現実的な方法はないのか。
 憲法69条はこうなっている。①衆議院で不信任の決議案を可決し、又は②信任の決議案を否決したときに、内閣には対抗手段としての解散権が与えられる。憲法解釈上はこのほかに③総理の一存による任意の解散権があるとされている。 
 新聞はこのうち③について書いている。つまり議会とのっぴきならなくなっているわけでもないのに、衆議院の総選挙をやってはどうかと煽っているわけだ。違和感を抱くのはこの点だ。
国民に信を問うのであれば、②の方法で議会(衆議院)に信任を問えばいいのではないか。そして信任票が過半に届かなかった時点で解散権を行使して、国民に直接問いかけることだ。不信任決議を受けても総辞職せずに衆院を解散することで対抗できる。信任決議が否決された場合も同じだ。「国民の民意は衆議院とは違うぞ」として衆院を解散することができる。総理がその決意を示せば、衆議院の各会派も考え直して、揚げ足取りではなく、国政をまじめに考えるようになる公算は低くないと思う。そうすれば総選挙は回避できる。任期期間中の解散総選挙は非常手段なのだ。
 予告なしのいきなり解散の方が選挙で戦術的に有利という姑息な手段はよろしくない。与党は横綱で野党は前頭力士。そう位置付けて堂々受けて立つ。大国の総理大臣にはそういう風格が望ましい。こういう考えは少数なのだろうか。

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